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めっ! ですよ!

「そんな訳でこやつも眷属に加えてくれるとありがたいんじゃが」

「お、お願いします!」


 仕事を終えてもう寝ようかと思っていた矢先、土天が白雪を連れて果樹園にある転移門から現れた。

 土天に事情を聞いた所、最大の危機は脱したが眷属化しないと過去に戻った際に白雪の記憶は受け継がれない為またややこしい事になるので眷属化をお願いしたいとの事だ。


「俺としては白雪さんが良ければ反対する理由は無いよ。でもほんとにいいの? 土天からこっちの事情は聞いてるんだよね?」


 特に敵が攻めて来るって辺りをちゃんと聞いてるのかが心配だ。


「は、はい! ちゃんと聞いています! 大丈夫です!」


 う~ん、じゃあいいかな? 正直戦力は幾らでも欲しいし錬金術関連でして欲しい事もある。最悪決戦時には逃げてもらえばいいし・・・えい! 送ってしまえ!

 俺は白雪の手を取り眷属化の申請を送った。


 それにしても幽霊だって話だが普通に手を握れたし姿もはっきり見えてるし実体はあるんだな。

 俺の勝手なイメージだが幽霊ってもっと透明でフワフワしたモノだと思ってた。


「やったー! ありがとうございます! これでドラゴンさんとずっと一緒に居られますね!」


「そうじゃの。マスターよ、この件に関しておぬしには言葉では言い尽くせぬ程に感謝しておる。

 この恩に報いる為、この土天、来るべき決戦の際には命を懸けておぬしらの為に戦う事をここに誓おう」


 土天はそう言って頭を下げて来る。

 いや、俺あんまり大した事した覚え無いんだけどな・・・スライム倒しただけだし。


「と、とりあえず頭を上げてくれ。それで、えーと、眷属化はしたけどもう大丈夫なのかな? 成仏の方は」


 再度白雪が成仏するなんて事になれば土天も悲しむだろうし、俺も事情を知ってしまった以上そうなる事は避けたい。もう他人では無いのだ。


「それはもう大丈夫です! 今はこの世との強烈な『結び付き』が出来たのでもう成仏する事はありません!」

「結び付き?」


「はい! それはちょっと恥ずかしいのでこの場では言えませんが・・・えへへ! 大丈夫なのは確かです!」


 白雪は何故か土天の方を見てニヤニヤモジモジしている。なんだろう? ちょっとウザい。

 土天もイラっと来たのか反撃に転じる。


「余計な事を言うとこの置手紙を朗読するからの」

「ギャ―! それはやめてくださいー! 悪かったです! 悪かったですからー!」


 ? 何だか分からんけど大丈夫ならいいか。



 土天と白雪はしばらくギャーギャー騒いでいて俺もその様子を見ていたが、俺の眠気がそろそろ限界近いのもあり2人に今後の事を話しておく事にした。

 2人とも貴重な戦力であり今後も得難い人材だ。きっちり仕事はしてもらう。遊ばせておく気は無い。


「まず土天はノームの住処を作ってあげて欲しい。どんな風にするのかはノームと相談して決めてくれ。

 それが終わったらしばらくはまた俺と一緒にトンネル掘りな」


「了解した」


 ダーに会いに行ったり、搬入班の為の地上のダンジョン化等、俺には地上でする仕事もあるが人間たちの住居作りの事もあってみんなが帰って来るまではなかなかダンジョンを出て行けないのだ。


 なのでしばらくの間はスポナーを作ったりトンネルを掘ったりといった仕事がメインとなるだろう。


「白雪さんはうちのダンジョンの錬金術師たちに技術指導して欲しい。特に ̄部分の段差上でゴーレムを作ってる奴は苦戦してるから助けてやってほしい。

 あと、白雪さんの研究所で使われてたあのホログラムの壁だけど、あれを設置して欲しい場所が何か所かあるからそれもお願いしたい」


「分かりました・・・あの、出来ればそれ以外にもですね、モンスターの研究も続けて行きたいんですが構わないでしょうか?」


「え、それは構わないけど・・・」


 いや、待てよ? モンスターの研究だと? 迂闊な返事はしない方がいいか?


「えーと、構わないけど何をするのかは事前に俺に言ってね?」

「分かりました! ではまずはスラちゃんこと無限スライムをもう一度作りますね!」


「え? いや、いいけど・・・繁殖は抑えられるんだよね?」


 あれが味方になると考えれば頼もしいが、流石にまた何万とかに増えられると処分しないといけなくなるぞ。


「それは大丈夫です! 私が許可しなければ繁殖はしませんから! 実際私が成仏するまでは1体・・・」

「あの! ちょっといいですか?」


 白雪が話している途中でルーが割り込んで来る。

 しかし「だったでしょ?」と白雪が小さい声で言ってるのが聞こえる。途中で止められても言い切らないと気持ちが悪かった様だ。


「無限スライムさんってさっき戦ったあのスライムさんの事ですよね? あのスライムさんならまだ生きてますよ!」


「え? マジで?」

「本当ですか!」


 ルーの言葉に対し驚きの声を上げる俺と白雪。俺のと違い白雪の声は喜びの感情が大半の様だ。やはり無限スライムの事を大切に思っていたのだろう。

 しかし無限スライムが生きてる? ちゃんと生き残りが居ないかはチェックしたと思うんだが。


「はい。キマイラちゃん! 出て来てください!」


 説明を求めるとルーはキマイラを呼び出した。羊と獅子の頭に蛇の尻尾を持つモンスターだ。


「キマイラちゃん! スライムさんまだ生きてますよね? 持ち主さんに返してあげて下さい!」


 しかしキマイラは首を横に振り否定する。なんだ? どういう事だ?


「キマイラちゃん! ウソつきはダメなんですよ! ルーは知ってるんですよ! キマイラちゃんが石にしたスライムさんを土に埋めてたのを! ルーはちゃんと見てるんですからね! めっ! ですよ! めっ! です!」


「くぅ~ん・・・」


「な、泣いてもダメなんですよ! あの、ごめんなさい。キマイラちゃんは石にした子をおせんべいみたいにバリバリ食べるのが大好きなんです。

 だから後で食べようとして埋めたんだと思うんです。戦闘中は我慢してたんだけど、悪い子なんです」


 な、なんか可愛い感じに言ってるけど普通に恐ろしいなキマイラちゃん・・・


「ま、まあそれはいいんだけどそれって生きてるの?」

「石化してるだけだから大丈夫です! さあ、行きますよ! キマイラちゃん!」

「くーん・・・」



 その後ルーと共に迷宮区へ足を運び、埋めてあった無限スライムを掘り起こしキマイラが石化を解いた。

 これでまた戦闘になったらルーに頑張って貰う所だったがそんな事は無かった。

 無限スライムは白雪を見るとその足元にすり寄っていき甘える様な仕草を見せる。

 こうしてみると単なるモンスターとは思えない。土天が家族同然というのも分かる気がする。


 この後、白雪の頼みもあり無限スライムを眷属化する事になる。

 今後は無限スライムのランクを上げ、成長させてダンジョンに貢献させるとの事だ。


 こうして土天魔王、白雪、無限スライムが仲間になった。

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