決着
「すいません、遅くなりました」
そう言ってノエルは謝ってくる。
いや、そんなのはいい! 何故この状況で出てきた! お前が強いのは分かっているが、この数を相手にするのは無理だろ!
「ノエル、に、逃げろ!」
「嫌です」
ぐっ! お前もか!
「今回は無理でも次回か、最悪でもあと2回もあれば倒せるんだ! 次は最初からランク2を召喚出来る。次回でランク3にはなるだろう。そうなれば戦力でも上回る筈だ!」
「それは分かってますけど逃げるのは嫌です」
「お、お前な~」
な、なんか普段と様子が違うな。こんな刺々しいノエルは初めて見る
そう思った瞬間・・・
「私だって・・・」
「う・・・」
強烈な殺気がノエルから発せられた。思わず後ずさってしまう
そして聞いた事の無い程の大声で叫ぶ!
「私だって! 頭に来てるんですよ!」
「うおお!」
「ひっ!」
ゴウッ! と風が吹いた様な気がした! その殺気に当てられツンツン頭どころか味方の俺までビビッてしまう!
だがツンツン頭以外はビビッていない様だ
危機察知能力が低いのか? こいつら・・・
そしてツンツン頭以外の冒険者達はノエルに向かって歩み寄って行く
「なんか文句あるのかい? お嬢ちゃん」
「ありますよ!」
「ははっ! 元気いいねえ!」
「あなたたち! そのモンスター達を弱いって言ってましたよね? 取り消してください!」
「はあ? なんで取り消さないといけないんだ? 弱いものは弱いだろ!」
「そうそう! 弱い弱い! ぎゃははっ!」
ぎっという歯を噛む音が聞こえた
「取り消せと言ってるんですよ!」
ノエルは叫び、睨むが男たちはむしろ喜んでいる様だ
ツンツン頭はもう何かを察しているのかオドオドしている
「へへっ! 言うじゃないの? お嬢ちゃん」
「でもね、こんな所へ1人で来たら危ないっすよ!」
「そうそう! 俺たちみたいなチンピラに何をされるか分からないぜ~?」
冒険者達はそう言ってノエルの手足を押さえ込み、さらに前後から複数の男が下卑た笑いを浮かべ近づいて行く・・・しかし
「ふんっ!」
「なあっ!」
「ぎゃああっ!」
ノエルは腕を押さえていた男を振り回し、そのまま武器として使った。人間ヌンチャクだ!
ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ! っと10人ほどぶっ飛ばした所でヌンチャクの男は息絶え消えた。コンティニューする様だ
「なななな・・・」
足を押さえていた男たちはその足を離し距離を取ろうとしたが離した瞬間蹴り飛ばされ、目玉が飛び出し、首がおかしな方向へ曲がった
腕を押さえていた男は離れる事も出来ない! ガッチリ掴まれ振り回される! 人間ヌンチャク2号だ!
また10人ほどぶっ飛ばされた所でヌンチャク2号も息絶え消えた・・・
冒険者達はその時点で既にパニック状態に陥り、その中の何人かはノエルに向かって武器を抜き斬りかかる!
だがノエルは向かってくる刃物を素手で掴み受け止める。
素肌で受けている筈だが傷1つ付いていない
何発か当たっている筈だが服すら破けていない
そしてまた1人を掴み人間ヌンチャクだ
今度は武器を抜いている者もいるので大惨事だ
辺りは一瞬で血まみれの地獄と化した
「ば、化け物・・・」
あまりの惨状にある者は膝が震え、またある者は腰を抜かす。許しを請う者も居る。もう戦意を持っている者は居ないだろう・・・
「どうしました? もう向かっては来ないんですか?」
「ひっ!」
もう全員ビビッてしまっている
そりゃビビるわ。こんな強かったのか、こいつ・・・
ノエルは戦意を持つ者が居ないのを確認するとゴブ太とハイピクシーを指さしこう言った
「そこで倒れているモンスター達も、あなたたちに勝てるとは思ってはいなかったでしょう・・・」
「・・・」
俺も、ツンツン頭も、冒険者達も、ゴブ太達もノエルの言葉をただ黙って聞いていた・・・
ノエルは冒険者達を見て続ける
「ですが、己の誇りの為! 何より! 大切に想う者の為に! 勇気を振り絞りあなたたちに立ち向かったんです!」
ゴブ太とハイピクシーはうつむき震えている・・・
ぐっ、やめろバカ
こんな時だと言うのに俺は嬉しいのだ
ノエルがゴブ太達の事を認めてくれてるのが嬉しくてたまらないのだ
その上ゴブ太達の反応を見るともう涙をこらえるので精いっぱいだ・・・
ノエルはまっすぐに立って続ける
「それが本物の『強さ』というものです。力の大小など関係ありません! 自分より力の無い者しか相手に出来ないあなたたちに! 彼らを馬鹿にする権利があると思っているんですか!」
普通ならこんな小娘が何を言ってるんだと一笑されて終わりかもしれない
だが、ノエルの声は不思議と聞く者の心を打つ。そんな力があるように思う
冒険者たちは力無くうなだれ、あるいは何か思うところがあったのか涙を流し出て行く者も居る
ツンツン頭も俺の顔を見て
「不快な思いさせてすまなかったな・・・」
と頭を下げて出て行った。戦いは終わった!




