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ゴリラの獣人と上級ゴリラ

「わあー! 神父様見ましたか? 見ましたか? ダンジョンがグワーッって広がっていってすごかったです! すごかったですねー!」


 ルーは段差上の塀に体を預けダンジョンを拡張する様子を見物していた。

 その大はしゃぎする姿は普通の子供のそれであり、先程迷宮区で無双した少女と同一人物とは思えない。

 神父さんの話だとかなり精神的に危うい状態の時があったという話だが、とてもそんな風には見えないよな。よく笑う明るい子だ。


「あー! 見てください神父様! あそこ! 見てください!」


 ルーはダンジョンで目にする物全てが珍しい様で先程からはしゃぎっぱなしだ。そんなルーはまた何かを見つけたのか入り口方向を指さした。


「ゴリラ! ゴリラの獣人さんですよ! はえー! 流石ダンジョンです! ルーは獣人さんは初めて見たんですよ!」


 ・・・確認するまでも無いが、ルーの指さす先にはやはりゴリが居た。

 ゴリは俺たちの事を確認すると手を振り、俺たちの元へやって来る。


「よっ! 無事だったか?」

「ああ、なんか面倒掛けて悪かったな。ヒミカたちは?」


 そういや騒がしいのが居ねーなと思って聞いてみる。


「ああ、今日はレベリング禁止って言ったらふてくされて出て行ったよ。

 草原の町へ遊びに行くついでに買い物もしてくるらしい。

 あんなでも女の子だしな、買い物し出すと長いんだよ。多分巻き添え喰ったトラ蔵はへとへとになって帰って来るぞあれ・・・」


 何か嫌な事を思い出したのかウゲ―という声が聞こえてきそうな表情でそう語るゴリは「何か必要な物があるなら頼んでおこうか?」と言って来るが搬入班に頼むからいいよ。と断っておく。


 以前トシに色々頼んだのだがあの時は外出していたのはトシ一人だったし個人で運べる小物を中心に持って来てもらった。

 今度はもっと本格的に大きな物も運び込んでいきたい。

 例えばソファーやベッド、布団に加え、冷蔵庫や電子レンジ、扇風機にテレビなど家電製品などだ。(実はダンジョン内ではコンセントを設置できるし普通に使える。ショップ産の物に関してはコンセントすら必要ないという理屈不明のご都合主義である)


 特に寝具は今の所寝袋しか無いから布団は早く仕入れないとな~とか、その為に地上のダンジョン化も進めないとな~とかゴリとの会話から色々仕事を思い出す。はあ~・・・


 そんなため息を隠せない俺を他所にゴリは神父さんの元へ歩いて行き手を上げて挨拶をしている。

 その軽い態度はどうも初対面に対するそれでは無い。もしかして知り合いな感じか?

 ルーはそんなゴリラが近づいて来るのが恐いのか神父さんを盾にして隠れ「神父様! ゴリラの獣人さんが近づいて来ますよ!」とか言ってる。超可愛い。


「こらこら、失礼ですよルー。彼はゴリラの獣人ではありません。ただのゴリラです」

「はえー! でも喋ってますよ! ゴリラって喋れるんですか? 上級ゴリラなんですか?」

「違うから! っていうかあんたが一番失礼だから!」


 ゴリは神父の言葉に「ウガー!」となっていたがその横でノエルが笑っているのを見て機嫌が直ったのかゴホン! と咳ばらいをして仕切り直す。


「はあ、というか久しぶりだなロビンさん。あの時一緒に戦って以来か? あんたも変わったよな。最初誰だか分かんなかったぜ」


「・・・色々あったんですよ。ですが・・・その話はここでは聞かないで貰えると助かります。特に私が過去何をしていたのかは子供たちに知られたく無いですからね」


「はは、分かってるよ! とにかく会えてよかった!」


 グッと握手し再会を喜び合うゴリと神父さん。

 久しぶりに会って話したい事もあるだろうし、今はノエルも一緒に居るので護衛はいらないよと話をし、2人を残しその場を後にする。

 ルーは神父さんと一緒に居たかったのか離れるのを渋っていたが神父さんの意をんで離れてくれた。ホントにいい子だなと思う。



 2人と離れた後、搬入班と会い地上のどこをダンジョン化すればいいか相談する。

 その結果国道のパーキングエリアの近くに使用者のいない貸倉庫があるらしいのでそこをダンジョン化する事に決定。

 勿論地上のダンジョン化の為には俺がその場所へ行かなくてはならないのでその為の手段も考えなければならない。

 理想では土地を買いそれ専用の基地を用意するのがいいんだろうが、維持費も掛かるし現実的な事も考え妥協した結果こうなった。


 そんなこんなを相談した後、搬入班と別れた。次に帰って来る時は色々持ち帰って来てくれるらしい。

 それまでに地上のダンジョン化も何とかしないとな。


 搬入班と別れた後、俺たちは果樹園に向かう。お次は果樹園の拡張だ。


 

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