◆無限スライムvs鬼熊 その2
今回はグロ注意です(;一_一)
3つの進化先の中で最も大器晩成と呼べるのは生物のキメラを生み出すタイプだろう。
低ランクの今は微妙かもしれないが高ランクモンスターの能力を引き継げるようになればどれだけ強力なスライムが生み出せるのかは想像もつかない。利便性も高い。
これを選んだ場合の問題は自分たちの消化力が低すぎて硬い敵を消化するのが難しい所か。
強酸などの消化力を増すスキルを将来得られなかった場合、宝の持ち腐れになり兼ねない。
そういう意味では賭けの要素も強い進化先ともいえる。
物質とのキメラを生み出すタイプは現時点では最強の進化先だろう。この場を生き残る事だけを考えれば迷わずこれを選ぶべきである。
こちらも将来的には消化力の低さがネックとなって来るが生物タイプと違い素体となる物質は(例えば石や土など)その辺に大量に存在するので入手が安易であり生産性はこちらの方が上だろう。
反面、キメラタイプに比べ正統派を選ぶ理由は薄い。
利便性や強さ、将来性など繁殖力以外のあらゆる面で正統派はキメラタイプに劣っていると思えるからだ。
利益や効率、この場の生存確率で選ぶならばここはキメラタイプにするべきだろう。
・・・だが、ここでもやはり正統派を選びたいと思う。
正統派とは大好きだった主が我々に対しそう在って欲しいと願っていた形だからだ。
今を生き抜けなければ全ては無意味だと笑う者も居るだろう。
何故最善を尽くさないのかと呆れる者も居るかもしれない。
だが、主の気持ちに応える為にも我々はこの道を行こうと思う。我々もまた、そうありたいとそう生きて行きたいと思っているからだ!
◇
無限スライムⅢへと進化したスライム達であったが、状況はあまり好転しなかった。
理由としてはスライム達の攻撃が鬼熊には通じにくいというのが大きいだろう。
スライム達の主な攻撃手段は体当たりと体内に取り込んでの消化液だ。
大した事ないなと思うかもしれないが生物の消化液と言うのは本来強力な武器である。
例えば人間の胃酸も胃の粘膜のガードが無ければ自分の体を溶かすほど強力な物であり、スライム達の消化液もそれと同等かそれ以上の威力を持っている。
しかし鬼熊の分厚い毛皮と皮膚の表面を覆っている油が消化液を皮膚まで浸透させずに弾いてしまう。
時間を掛ければ毛を溶かし、油を排除し、皮膚まで届かせる事が可能かもしれないがとてもそんな余裕は無い。
別の手段を考える必要がある。
「グオオオ!」
スライム達は鬼熊の攻撃を喰らいながらも次々と体に取り付き、上に圧し掛かり押さえつける作戦に出る。
ミツバチがスズメバチを倒す時の様に自らの体で敵を封じ込め、このまま押し潰すか熱死、あるいは窒息死させるのが狙いだ。
しかし、そうは上手くいかない。
鬼熊の力はスライム達に比べあまりにも強く、簡単に振り払われ切り裂かれ踏みつぶされ死んでいくスライム達。
人が蟻に押さえつけられる事が無い様にスライム達では鬼熊を押さえつけるのは難しい様だ。
ならばと『合体』をここで試してみる。
しかしこの合体能力だが単純に100体集まれば100倍パワーとはいかないらしく合体する者達の平均パワー×3倍程度が今のパワーアップの限界の様だ。
なので現時点では3体以上で合体する意味は無い。スキルレベルが上がってくればまた違って来ると思うので要練習だ。
後衛に位置する者は出来るだけ合体した後に前線に加わっていく。
合体したスライムでも鬼熊に対しては役不足であり、一見すると的が大きくなっただけで逆効果の様にも思える。
しかしこれを続ける事に意味があるのだ。
『スキル:合体のレベルが1から2に上がりました。合体による強化限界が3倍から5倍に上がりました。合体可能時間が2分から5分に伸びました。』
『スキル:合体のレベルが2から3に上がりました。合体による強化限界が5倍から7倍に上がりました。合体可能時間が5分から7分に伸びました。合体時のみ跳躍が可能になりました』
『スキル:合体のレベルが3から4に上がりました。合体による強化限界が7倍から10倍に上がりました。合体可能時間が7分から10分に伸びました。合体時のみ超自然回復が使用可能になりました』
スキル:超自然回復
効果・体内の栄養を消費して傷を塞ぐ。時間経過で回復する類のステータス異常も瞬時に回復する。
『スキル:合体のレベルが4から5に上がりました。合体による強化限界が10倍から12倍に上がりました。合体可能時間が10分から12分に伸びました。合体時のみ形状変化が使用可能になりました』
スキル:形状変化
効果・体を変形させる事が出来る。ラースウェポンスライムの持つ変身能力と違い形だけの変形であり、中身の性能は変わらない。(例えば翼を生やしても飛んだりは出来ない)
『スキル:超自然回復のレベルが1から2に上がりました。回復に必要な消費エネルギーが減少しました』
『スキル:超自然回復のレベルが2から3に上がりました。回復に必要な消費エネルギーが減少しました』
◇
・・・一気にスキルレベルが上昇していく。
これは経験値共有による成果だ。数をこなして上がる内は幾らでもスキルレベルを上げる事が可能だろう。これが我々の強みでもある。
こうしてみると正統派を選んだのもそれ程悪くなかった様に思える。
合体による強化は筋力や消化力といった攻撃能力のみで防御力は上昇しない。
それどころか体積が増え的が大きくなる分、防御に関してはむしろマイナスになるだろう。
だが、12倍の攻撃能力強化は防御のマイナス面を補って余りある物であり、鬼熊に対してもその力は存分に発揮されていた。
次第にスライム達を振り払う事が難しくなって来ている鬼熊。元が非力とは言えやはり12倍の筋力強化は大きい様だ。
体中をスライム達に取り付かれ殆ど動けなくなってきている鬼熊。
しかし押し潰すまでには至らないし、その装甲はやはり厚く効果的なダメージは与えられていない。
このままではマズい・・・
合体には制限時間がある。このまま時が過ぎれば合体は解けこいつは自由を取り戻してしまう。
それだけではない、合体が解けた後はしばらく動けなくなってしまうのだ・・・
早めに決着を着ける必要がある。
スライム達は鬼熊の体中を攻撃して回り弱点を探す。
その間も爪や牙による反撃で犠牲は出る。
しかしヘルフラワーとの戦いを得て、怯むという事が無くなったスライム達はやられてもやられても次々と新手が飛び掛かり鬼熊に攻撃を加えていく!
「ギャウッ!」
そして、その中の一撃がついに鬼熊にダメージを与える。
それは軽い火傷程度のダメージであったが目を焼かれた鬼熊は酷く動揺し暴れまわる。
だが片方の腕で目を庇いながらのそれはさらに防御に穴を開ける形となってしまう。
「ギャッ! グゥアア!」
今度は形状変化のスキルを使い耳や鼻の穴に侵入を試みるスライム達。しかし間一髪の所で防御されてしまう。
「グオオオオ!」
防御こそ成功したがこれには流石の鬼熊も恐怖を感じた様だ。
最後の力を振り絞り広場から脱出する為に辺りを見渡す。
すると・・・そこには鬼熊にとって絶望の光景が広がっていた。
そこには圧倒的な数で鬼熊を包囲するスライム達の姿があった。もはや広場の中はスライムで埋め尽くされている。
スライム達は鬼熊と戦いつつも繁殖を繰り返していたのだ。
そしてその数は今5万にまで増えていた。なんと戦いが始まった当初よりも増えていたのだ。
「グオオ・・・」
鬼熊は絶望のあまり動きを止めてしまう。それはあまりにも致命的な隙だった。
「ギャアア! ウッ・・・」
肛門から鬼熊の内部へ侵入し内臓を喰い破るスライム達。苦痛にのたうち回る鬼熊。
さらに耳や鼻から侵入され、脳を喰われる事で鬼熊は絶命する。
それと同時に東西南北の道を塞いでいた鬼熊たちは逃走した様だ。広場の鬼熊が討たれた事が伝わったのだろう。
◇
無限スライム達はこうして幾多の強敵を退け、その後も北上を続け今現在ダンジョンの目前まで迫っていた。
その旅路は決して楽な物では無かったし、その終わりはまだ見えない。
だがその歩みは遅くとも止まる事は無い。
彼らが主の願いを叶えるその時まで




