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◆土天と白い少女

 日天が訪ねて来なくなり一年は経っただろうか? 土天は今日も一人寂しく佇んでいた。


 昔と違い大地から栄養を吸える様になった今は獲物も狩らなくていい。大地から吸った栄養だけで事足りるからだ。

 吸い過ぎると大地の栄養が枯渇してしまうが、時間が経てば復活するので数日ごとに吸う場所を変えるだけでいい。便利な体になった物だと思う。

 今なら群れを作る事も可能なのではないか? もし同種を見つければ共に過ごしてみるのも悪くないかもしれないな、などと空想を膨らませるがすぐに頭を振りその考えを否定する。


 いやいや! 孤独が寂しいなどとそんな事は無い! 今までずっと一人で生きて来たのだ。

 日天が来なくなって寂しい? ふざけるな! そんな事は認めん!


 くっ! 日天め! 大体あいつのせいであいつが悪いのだ! 毎日毎日やって来て「フーハハハハハ!」 などと馬鹿笑いを聞くのが日常になってしまっていたからワシのペースが乱されたのだ。


 うるさいのが来なくなったのだ。静かでいいではないか、この方が落ち着くわ! あんな奴訪ねて来てももう会ってやらんからな!


 などと悪態をつきながらも日々の鍛錬は欠かさない。また再び喧嘩をする時の為・・・とは認めたくないが今日も土天は有り余る時間を潰す為、寂しさを紛らわせる為に鍛錬を続ける。


「む?」


 そうやっていつもと変わらぬ日常が過ぎていくと思った矢先、こちらへ近付いて来る気配を感じた。

 久方ぶりに感じる人種のな気配。しかし、どうも様子がおかしい・・・

 土天はすぐに気配を感じる方へと向かった。



 気配のする先に到着するとそこには一人の少女が立っていた。

 真っ白な髪の可愛らしい少女で歳は10代後半くらいだろうか? 鍛えている様には見えない華奢な体にあどけなさの残るその顔は土天が今まで会って来た歴戦の戦士たちのそれとは一線を画す物であった。

 歩き方ひとつ見てみても大した使い手で無い事は明らかだ。


 感じた違和感はそれである。

 今まで一人で自分に挑んで来た人種は居るには居たが、どいつも自分一人の力で生き抜くという気概と自信に溢れた者であった。そうした者達は当然実力も高かった。


 だがこいつはどうだ? おおよそ戦う者の体では無いし実力を隠しておるようにも見えん。

 何故そのような者がここに一人でいる? わしを討伐に来た? バカな! わしどころかその辺に居るモンスターにもやられそうではないか。


 そもそもこいつはどうやってここまで来た? ここは国道から50キロも南下した森の深部で道中には襲って来るモンスターも居た筈だ。戦う力も無い者がここまで来られるのはおかしい、どれ・・・


 

ステータス

名前:白雪しらゆき

種族:???

ランク4 レベル4

HP4400/4400 MP12500/12500 状態???

攻撃力:1244

防御力:744

魔法力:6044

素早さ:3204


スキル:錬金術:LV??? 回復魔法:LV5 浮遊術:LV1 テイマー:LV7 隠蔽:LV??? ???:LV1 ???:LV8 


 そこまで見た所で鑑定を切る。ランク4とは思ったよりずっと強いな。わしもまだまだ未熟か、見た目で実力を判断するなど。

 

 となるとこいつはやはり討伐隊か? 一人でここへ来た意味は分からんが恐らくは後続が転移してくる為のマーキングポイントでも設置しに来たか?

 ふむ、放置するのも面白いが舐めプは相手にも失礼だろう。戦いとはお互いが全力だからこそ面白いのだ。


「・・・おい」


 気配を殺し奇襲攻撃する事も考えたが久しぶりの客人だ。少し言葉を交わす事にする。

 決して人恋しかったからではない。


「はい、何でしょう? って! ええ! ドラゴン! すごい! 大きい! 初めて見ました!」


・・・ここがわしの縄張りと知っての反応ではない。本気で驚いている。演技ではない、わしには分かる

 日天がたまに連れて来ていたノエルという子供の様に心を読むまでは出来んが、地面から伝わって来る鼓動である程度の心情は読めるのだ。

 

「おぬしは何者だ? 何しにここへ来た?」


「な、何者と言われましても錬金術の研究をしている学者としか答えようが無いですが・・・

あ! 専攻はモンスター学や薬学などです。ここへは錬金術の研究に来たんですが、どうも前後の記憶が曖昧で・・・」


「・・・」


 これも嘘ではない。なんだ、討伐隊では無いのか。何だか気が抜けてしまった。






 






 

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