ツッコミどころ満載
眷属化作業を終え、俺とノエルは地下2階大部屋を出て北にある果樹園へと向かう
大部屋を出てすぐ左手に地下2階からの移動用の転移魔法陣
そこから少し北へ行くと左手に居住区入り口2号(入り口にしてない時はただの行き止まり。現在はメインの入り口はここ)
居住区入り口2号からさらに北へ行くと左右に地下1階スポナー部屋へ上がるエレベーターがあり、エレベーター前を北へ抜けると果樹園となっている
果樹園は平面1㎞×1㎞高さ20mの敷地内に約1500本の木が生えている
妖精樹が頑張ってくれているおかげで初期と比べるとかなり木は増えたが前世の森林を見慣れた身としてはまだまだ敷地に対して木の本数は少なく感じてしまう
「ん~、でもここへの移住を希望してた人も多かったですし、あまり密度は上げ過ぎない方がいいんじゃないですか?」
そう、森に住んでた奴らは居住区より森の中の方が落ち着くという事で果樹園を住居として希望する者が多かったのだ
一か所に人口が集まり過ぎると息苦しくなるのである意味助かるのだが、この果樹園を人が住める様に整備するのはなかなか大変そうである
「いや、将来的には木の上に人が住める様にしたいんだよね。なんかそういう職人もいるらしいじゃん、この世界」
これはさっきの眷属化作業の時に聞いた話でただのしったかである
だが実現できるのなら土地の節約にもなるし、何より男のロマンをくすぐるので俺が見てみたいのだ
樹上を見上げながらどんな風になるんだろうと想像力を働かせると幻想的な光景が浮かんで来てそれだけでワクワクするのだ
「ああ、それなら確かに密度は必要かもですね。木と木の間を繋ぐようにして床や壁を作って行くのである程度密度があった方が作りやすい筈です。でもダンジョンなら床も壁も壊れないし設置も自由自在だからやっぱり必要ないのかな? あるいは妖精樹ちゃんに作ってもらうのもありかも・・・」
「見本があれば模倣出来るかもだけど何もない状態から俺や妖精樹が作るのは無理だぞ。どうしても最初は職人頼りになる」
「まあそうなりますよね」
妖精樹の一軒家作りも進んでいるが、あれも最初にクロたちが作った見本があるからこそスムーズに作る事が出来たといえる。何事も先人って偉大だよなと思う
『住処作りはみんなが来たら私がお手伝いしておくよ! パパはパパのお仕事してて~!』
「住居作りも俺の仕事なんだけどな。まあ今は他にもする事あるし、お言葉に甘えさせてもらうよ。ありがとな」
『えへへ~! いいよ~!』
妖精樹にお礼を言って果樹園を後にする。まあ果樹園とか畑に関しては特に語る事は無いんだよね、殆ど俺ノータッチだし・・・
「果樹園北東の道はどこへ繋がっているんですか?」
「ああ、あれは山のダンジョンへ繋げる予定だったけど今は保留しててただの行き止まりだ」
「なるほど、って事はこれでダンジョン見学ツアーは終了ですか?」
「いや、実はあと一か所あるんだけどその前に・・・」
「?」
俺はノエルの不思議なポッケを凝視する
「ああ、そう言えばまだ出す物出してなかったですね! 忘れてました! あれでもないこれでもない、あれでもないこれでもない、あった~! 溶解炉~! 」
「お、おお・・・」
巨大な溶解炉がポッケから出て来る。まじで不思議なポッケだな・・・
「これはその名の通り金属を溶かすのに使用する機械です。説明するまでも無く危険な物なので取り扱い注意で技術者以外は使用しない様にして下さい。あと、置き場所も考えた方がいいと思います」
う~ん、そうか。実は居住区に置くつもりだったのだがよく考えたら危ないよな
こういう危険物を扱う場所は隔離して他に作った方がいいのかね
「まあそんな感じですね~! では次行きます~! あれでもないこれでもない、以下略! あった~! 重機色々~!」
だからなんでポッケからそれが出て来るねん! というか普通に手で持って出してるけどどういう腕力してんだよ! ツッコミが追い付かんわ!
ノエルのポッケから出て来たそれはショベルカーやレッカー等の重機に加え大型トラックやダンプ、軽ホロにバスなどまさに色々だった
「う、う~ん。ありがたいんだけど乗り物関係はちょっと危なくて使えないかも・・・ほら、子供も居るし」
それを言うと重機も危ないんだけどね。まあ重機は高ランクモンスターだけに使わせるよう徹底すれば最悪事故っても死ぬ事はないと思うが車関係は危ないよな。交通ルールを作っても事故を完全に無くす事は不可能だと思うし
「ふふ、それが大丈夫なんですよね~! っと、その説明をする前に最後の出しときますね! あった~! 新幹線~!」
「ぶっ!」
もう何でもありか! お前!
・新幹線
最大時速3000キロで走る事が可能な新幹線。永久機関搭載済みで永遠に動き続ける事が可能である
レールさえ通っていれば水中や空中も通行可能な高次元新幹線であるがダンジョンの壁や床は抜ける事が出来ない
コースを設定しておけば目的地までのレールは自動で生成される
「いや、だから危ないってば・・・」
思わず鑑定してみると色々ツッコミどころ満載なのだがあえて黙殺しそこだけ告げる
時速3000キロってなんぞ? モンスターでもバラバラになるわ! そんなん!
「いえ、だから大丈夫なんですってば。論より証拠、まずは触れてみてください」
なんか分からんが言われるがままに新幹線に触れようとする。しかし・・・あれ? なんだこれ?
「なんか触れないな。どうなってんだこれ?」
「ふふ、高次元物質で出来ていますからね。高位生命体以外は触ろうとしても触れません、透き通ります。トラックなんかにも同様のコーティングはしてあるので事故の心配はいりませんよ」
「な、なるほど・・・でも触れないんじゃ乗れないよな?」
「乗る時は出入り口から普通に出入り可能です。ですので閉じこもれば無敵! とはいきませんね」
「なるほど・・・」
逆に走行中は中から出られなくなるので袋のネズミになるらしい
とはいえ時速3000キロで走れて出入り口から入らない限り手出しできない乗り物だ。十分に有用な防衛機関と言えるだろう
「ダンジョンでは転移系の施設があるので長距離の移動はそっちの方がいいと思いますが、広くなってくると中距離や近距離の移動が面倒になってきます。バスや新幹線はそれを補う為の物です。遠慮なく受け取っておいて下さい」
「ありがたいけど新幹線は大袈裟じゃないかな・・・」
「まあ新幹線は私の趣味というか、娯楽の要素が大きいですね。速度も3000だと速すぎるのでもっと落とした方が景観を楽しむにはいいと思います。その辺は好きに設定してみてください」
「ああ、なるほど。まあ確かにそういう娯楽もいいかもな」
想像してみると空中を自在に走る新幹線というのは楽しそうではある
でも今の所は必要ないので倉庫に入れて保管しておくとしよう




