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ノームとドライアド

「さて、我らの住処を見に行くかのう」


「あ、こら! 待ちなさい! まだ話は終わってないわよ!」


 大部屋に集まって来る(呼んでもらった)リザードマンや人魚達を眷属化しつつ、その頭領たちが仲良く退室していくのを見届ける。す、末永くお幸せに~・・・なんて言ったらぶっ飛ばされるんだろうか?


 それにしてもこの眷属化は一人一人に触れなきゃならんのでこうして何百という数を眷属化するのはなかなかの手間であり、これだけでも何十分という時間が掛かってしまう。何か効率のいい方法は無いもんだろうか?


 ノエルも最初は見ていたがもう飽きたのかその辺でおしゃべりを開始してしまった。裏切者め~!


 リザードマンや人魚達は眷属化が終わった者から順に礼を言って頭領たちの後を追っていく。

 その追っていく背中はノリノリで眷属化されて喜んでいるのが伝わって来る。それを見てやる気を出してしまう俺はチョロイよなと思って我ながら苦笑してしまう。


 そして数十分後、ようやくリザードマンと人魚たちの眷属化が終わり一息ついているとちょんちょんと背後から肩をつつかれる。

 

 背後を振り返るとそこには緑色の髪をした少女が立っていた。

 確かドライアドだったか? 樹木の精霊だ。本体は木らしくまだダンジョンの外に居て目の前の少女はその分身体という奴らしい。


「あの、お疲れの所申し訳ないのですが私たちドライアド一族も眷属化してもらえないでしょうか? 私たちもここへ残る事に決めましたので」


 そう言って手を伸ばしてくるドライアド。その手を取り眷属化する。


「ありがとうございます。

 あの、それで住処の件ですが良ければ果樹園付近に本体を住まわせてもらえないでしょうか?

 あの辺りはモンスターも強く、良質な魔力が吸えますので私たちも強く成長する事が出来ると思います。

 防衛の役にも立てると思いますし、私たちは植物の成長を促進する力も持っています。畑や果樹園の収穫量も上がると思いますし・・・」


「あ、ああ。分かった。でも本体って自力でここへ来れるの?」


 な、なんか大人しい感じの喋り方だがグイグイ来るね・・・

 普段は大人しいが喋り出すと止まらなくなるタイプか? ノエルと気が合うかもしれんね。


「本体は実はもう例の場所まで移動していますので後は「門」を設置してもらえれば移動は可能です。ただ歩いて入って来るのは、その、無理かも・・・その、大きいので・・・」


 モジモジし始めるドライアド。なかなかの破壊力である。

 しかし歩けるのね、精霊って話だがカテゴリ的には植物モンスターに近いのかね。


「まあ歩けるなら問題ないな。転移門はすぐに設置するからそのまま待機しててくれ」


「分かりました。ありがとうございます」


「ああ、そういう事ならわしらも果樹園に住ませてもらえるかの? わしらの力はドライアドと相性がいいでな」


 そう言って会話に入って来たのは大地の精霊ノームだ。老人の様な容貌をした小人である。


「それはいいんだけどいいのか? 望むなら居住区に住む事も出来るんだぞ?」


 ドライアドはまだ植物なので分からなくも無いが人型であるノームは進んで果樹園に住む事は無いだろうと思う。

 なんせモンスターが闊歩しているのだ。人型に対してはノンアクティブとはいえ、日々ダンジョン内バトルが行われているその環境は落ち着ける住処とは言い難いだろう。


 しかしノームは首を横に振る。


「いえ、わしらは住処を得る為だけにここへ来た訳では御座いませぬ。理由の半分は人と戦う為ですじゃ。

 わしらが元住んでいた土地は人間に毒を流され住めない物となりました。

 仕方なく住んでいた土地を捨て逃げ、また逃げた先でも人間に追われる。

 抵抗した者も居ましたがわしらだけでは抗い様も無く・・・」


「私たちも同じです。人間はどこへ逃げても追って来ます。

 逃亡生活を続ける内に私たちの一族もここ20年で半数にまで数を減らされました。

 私の姉さんも目の前で八つ裂きにされました・・・もう逃げるのはうんざりです」


 語気を強めていく二人に少し気圧される。

 そういやリザードマンや人魚も似たような事を言ってたな。俺が思っているよりどの部族も人間に対する恨みは根強いのかもしれない。


「わしらノームは大地に栄養を与え肥えさせる事が出来る。

 だからドライアドや植物モンスターを成長させる助けになれると思う。それにわしら精霊はその土地に長居し定着すればする程力が増すでな」


「そ、そういう事です! 果樹園で力を付けて来たるべき決戦の際には一人でも多く人間を八つ裂きにして見せます! ノームさん! 一緒に頑張りましょう!」


「おうよ!」


 いい笑顔でハイタッチするノームとドライアド。言ってることは物騒だが微笑ましい絵面である。

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