リザードマンと人魚とツンデレと
鉱脈については今は侵入者も連れているので後で配置する事を約束し女ドワーフとは別れた
女ドワーフもまだ引っ越し作業が終わっていないので特に急がなくてもいいとの事だ
ノエルと共に「何も無い部屋」にある階段で地下二階へ下りていく
地下2階へ近付くに従ってその先から大勢の人で賑わう喧噪が伝わって来る
「初見で驚く所を見たかったんだけどな~」
「だから悪かったって言ってるでしょ!」
階段を下りた先は平面約40×40メートル高さ5メートルの大部屋になっているが、その中はぎゅうぎゅう詰めと言っていい程人型モンスター達で詰まっていた
このモンスター達は数日前にアリスが勧誘して来た者達だ
あの時は予想外の人数が一気に押し寄せて来た為、全員を迎え入れる事は出来ず今ダンジョン内に滞在しているのは人型モンスターのみである
その人型モンスターにしてもこのざまで大部屋はぎゅうぎゅう詰めにしても入りきらず残りは果樹園北東の通路で雑魚寝させている始末だ
「主殿! 先程のお話全て聞こえておりましたぞ! 私も長い事生きておりますがこれほど血がたぎった事は記憶に御座いません! いや~、私もあの場に同席したかった物です!」
そう言って豪快に笑い話しかけて来たのはリザードマン族の頭領だ
他のリザードマンに比べ一回り以上でかい体格に全身の細かい傷は歴戦の勇士を思わせる物である
当初は20体程度だったリザードマンもこの頭領の呼びかけにより森の各地に散った同族は集まり今では200体近くがダンジョンに滞在している
元々少数で偵察して条件が良さそうなら同族を集めるという計画だったのかもしれんね。最初に来た20体は他に比べランクが高くなかなかの精鋭だったしな
その上でこうして同族を集めてくれたという事はここを気に入ってくれた証だろう
そう思うとこちらとしても悪い気はしない。誠意を持って対応させてもらうとしよう
「そう言ってもらえると嬉しい限りだよ。それで前から話していた住処だが場所は果樹園の北側でいいんだな?」
「おお! ついに作ってくださいますか! そうですな、森が近くにあればどこでも構いませぬ。我らは森育ち故やはり森の傍が一番落ち着くのです」
「そうか、分かった」
別に意地悪で今まで住処を作らなかった訳では無い
正直言うと当初の予定ではここまでの数が残るとは思っていなかったからだ
眷属化もまだ大部分は済ませておらず、しばらく滞在し、かつ今日の話を聞いてから進退を決めてくれと伝えてある
そういった事情もありぎゅうぎゅう詰めの現状となっているのだ
悪いとは思っていたが、今は無駄にDPを使う余裕は無いので滞在する事が確定するまではここに居る者達の住処づくりは渋っていたという訳だ
果樹園の北側に300×300メートル程の空き地を作り、U字型にくり抜いて湖の型を作って行く
そして水エレメントを召喚し、U字の中を水で満たして簡易だが深さ2~3メートルの湖の完成だ
後々は魚などを召喚してある程度自給出来る様にしてやりたいが、そっち方面の知識は無いので細かい調整はアリスが一緒の時に行うとしよう
通路平面300×300×高さ7.5メートル(内2.5メートルはU字にくり抜いた部分)で45000DP 水エレメント召喚1000DP
合計46000DP消費。残り92660DP
「水が溜まるまでは少し時間が掛かると思うがとりあえず作ってみた。問題が無いか後で見に行ってみてくれ。問題がある場合は言ってくれればすぐに対応しようと思う」
「おお、ありがたや! では早速・・・」
「ちょっと待ってもらえる?」
俺の言葉を聞きすぐに湖へ向かおうとしたリザードマンに対し待ったが掛かる。それを見て俺は「はあ、またか」っとため息をついてしまう
「んん? なんじゃ、人魚どもか。どうした? また難癖付けに来よったか?」
「いちいち突っかかって来てんのはそっちでしょうが! このトカゲジジイ! 果樹園の北は私らが予約してたのよ! あんたらは他へ行きな!」
「なんでおぬしらの為に我らが退かねばならん? お断りじゃ」
「なんですって~! あんたさっきはどこでもいいって言ってたでしょうが!」
「言ったが今のを聞いて意地でも北から動きたくなくなったわ! ガハハハッ!」
「なんですって~!」
リザードマンの頭領と仲良く喧嘩を始めたのは人魚族の代表だ
人魚族は女だけの種族であり、上半身は人間の美しい女の姿で下半身は魚のあれである。一応下半身は人間のそれにも変身可能で陸上ではその恰好で活動している様だ
女だけだと繁殖はどうするんだろうと気にはなるが聞くのはマナー違反なのだろうね
人魚族はリザードマンと同じく森の水辺を住処としていた
だが、見た目が美女なだけに人間による密漁は近年増加し、その結果ダンジョンへ身を寄せる事となった
リザードマンと違い、魚部分を隠せば人間に溶け込む事も可能な為それ程切羽詰まっているという事はないのかもしれない
しかし人間社会に溶け込むのを良しとせず、人魚として生きていきたいと思う者は多い様でダンジョンを訪れる者は後を絶たない
こちらも人魚族の代表からの呼びかけにより、各地に散っている者達が続々と集結中。現時点で100体を超えている
同じ水辺に住む者同士仲良くすればいいのにと思うのだが、周りのリザードマンや人魚たちの反応を見ると「また頭領たちが痴話喧嘩始めたぜ。ニヤニヤ」としたもんだ
あれはいわゆる喧嘩する程仲がいい。あるいはツンデレという奴なのだろうが恐くて口には出来ないのであった




