帰って来たノエルと不思議なポッケ
前回のあらすじ
ノエルが帰って来た。そんなナレーションが聞こえるのは気のせいだろう
「お、おかえり~・・・」
「えへへっ、ただいまです!」
突然の邂逅に頭が回らずおかえりと言うのが精一杯の俺に対し、ノエルは可愛らしい笑顔で対応する
相変わらず可愛いし、久しぶりに会えて嬉しいのだがこれだけは言わせてもらいたい
「いや、ただいまです! じゃねェよ! 遅いんだよ帰って来るの! 心配したろうが!」
ホント何日ぶりだ? 次の休日には来るって言ってたくせに、まったく・・・会いたかったとはあえて口にはしない
「それは悪かったですが、こっちも色々大変でして・・・でも、また会えたからいいじゃないですか。無事で何よりです」
「それはまあ・・・そうなんだけどね。・・・よかったよ、また会えて」
俺はノエルに依存しているというか、心の支えにしている部分があると思う。こうして久しぶりに話をしているとそんな風に感じる。やっぱりノエルが居るとホッとするのだ
「ふふ、何だか照れますね~! あ、そうだ! 頼まれてた物も頼まれてない物も色々仕入れて来ましたよ! 見たいですか? 見たいですよね?」
ノエルは俺の返事を待つでも無く、肩から下げているカバンに手を入れゴソゴソし始めた。この止められない感、相変わらずだね
「あれでもないこれでもない、あれでもないこれでもない・・・あった~! 金属鍛造プレス機~!」
そして小芝居の後、どう見てもカバンに入りそうにない巨大なプレス機を取り出した。なんだあのカバン? あれが噂のアイテムボックスって奴か?
「これは金属の塑性加工に使うプレス機で熱と圧力を加える事で金属を任意の形に加工する事が出来る機械です。ですが熱源は今の所炎エレメント頼みですのでそっちが成長しないと宝の持ち腐れですけどね」
ノエルの解説が続くがアイテムボックスのインパクトのせいでいまいち頭に入ってこない
しかしドワーフ連中は興味深いのか聞き入っている様だ
「な、なんか思ったより本格的なの持って来たな」
「へへ~! そうやって驚いてもらえるとこっちも頑張った甲斐があるってもんです! では次行きますね~! あれでもないこれでもない、あれでもないこれでもない・・・あった~! オリハルコン鋳型×5~!」
その小芝居は毎回入れないといけないんだろうか? 〇ンター〇ンターで言う所の制約と誓約みたいな?
「ちょ、ちょっと! ノエルさん! オリハルコンって! どこから持って来たんですか!」
なんかユズが慌てている。さらっと流しそうになったけどやはり貴重品なんだろうか?
『そんなレベルじゃないですよ! あれ一つでも売れば国家予算レベルです!』
マジで? 気を利かしてくれたのか念話でそう伝えて来るユズ。まあ売らないけどね
「謹慎中にいっぱい小言言われて頭に来たので頂戴してきました」
「いやいやまずいですよ! 返しに行きましょうよ!」
「嫌ですー、絶対嫌ですー」
ユズが説得しているがノエルは言う事を聞く気はない様だ。プンプンしている
「どうせ返しても倉庫で眠るだけですし、ここで使った方が道具も喜びますよ! 道具は飾る物じゃなくて使う為の物です!」
屁理屈の様だがそれはその通りだなと思う。男なら分かってもらえると思うが俺も大工道具なんかの工具は衝動買いしてしまう事が前世ではよくあった
しかし、買ったはいいがあまり使わないまま倉庫に眠ってしまっていた覚えがある。だからノエルの言う事は少し耳が痛かったりする
「これの使い方は金属を融点より高い温度で熱して液体にして流し込んで冷やして固める。つまり型を取る為の物ですね。オリハルコン製なので壊れる事はまずないですし、形状記憶機能もあるので色々な物をこれ一つで作る事が可能です!」
「形状記憶?」
「はい、これとセットにして使います。あっと!」
「おい、今・・・」
「あれでもないこれでもない・・・」
いや、今普通に出しかけたよね・・・やっぱそれ言わなくてもいいんじゃん。まあいいけどね、可愛いし
「あれでもないこれでもない、あった~! ノートパソコン~!」
俺のツッコミを無視して不思議なポッケから取り出されたそれは前世でよく目にした物だった。まさかこの世界で見る事になるとは・・・
・ノートパソコン
神通電気が開発した最新モデル
バッテリーが劣化する事は無く永遠に使用することが出来る
容量は100YB。今までのシリーズに比べ液晶の見やすさが向上しているのが魅力
思わず鑑定してしまった。神通電気ってなんぞ? あと、ヨタバイト? よく分からない単位だがギガバイトより上なんだよね? ちょっとオーバーテクノロジーじゃありませんかね?




