タイムパラドックスとゴリラの神
「手に入れた物はダンジョンに残る訳ですから当然元の場所には何も無くなりますよ。この場合だと時間が戻ると店舗の棚は空になりますね」
「ほー」
元の場所にも物が残るんなら巻き戻りが起こる度に物が増殖していくもんな。増殖ありなら貴重品を増やせるかなと少し思ったけどダメか
しかし、お店の人からすると突然品物が消える訳か。軽いホラーじゃね？ タイムパトロールとか大丈夫なんだろうか？
「今の所この世界でも〇ラえもんの目撃例は無いので大丈夫かと」
ま、まあそういうのがマズイのなら既になんらかの制裁があってもおかしくないもんな。高位生命体とやらもその辺は寛容なのかな
「真面目に答えますとトシさんが買い物の際に払ったお金は時間が巻き戻ってもお店の方に残るので問題ないと思います」
いやいや、問題あるだろ。もし俺が店員なら絶対パニックになるわ！
「いえ、この現象自体は神隠しと呼ばれよくあるとは言いませんが、この世界では認知されている現象なんですよ
ですので、神隠しがあってもお店の方がパニックになったり責任を負わされるといった事はありません
高位の方の中には人間では認識出来ない方も居て、そういう方が店を訪れて買い物を行った際にこういった現象が起こる事があります
認識されないので品物をもらってお金だけ置いて行くという訳ですね」
「なんかすげーな、異世界・・・」
「ふふ、むしろ神隠しがあった店は繁盛するんですよ。高位の方を神と崇める人も少なく無いですからね
中にはゴリラの神様も居ますけど、って！ 冗談です！ 痛たた！ 冗談です！ ゴリさん！ 痛いですって！」
なんか久しぶりにこの漫才見た気がするな。平和っていいよね
気になってたタイムパラドックス問題も起きない様だし、この件はこれ以上深く考えるのはやめよう。あまり考えてると頭痛くなってくるしな・・・
◇
「てな訳で物資搬入は遠慮なく行ってもらって構わん。ただ、気になるのはダンジョンから出て行く時の事だよな。転移魔法が使えるって話だけど、それでダンジョンから出る事は出来んの？」
なんか話が脱線したので戻し、物資搬入の話の続きをする
物資搬入の際、どうしても気になるのは人目だ。あまりダンジョンへ出入りしてるのを見られてはまずいだろう。なんとかごまかす方法があればいいのだが
「転移魔法では出られませんね。外から中へ入るのも無理みたいです。まあ帰りは転移ルームで帰れるんですよね？」
「ああ、転移ルームが外からでも使えるのは実証済みだ。でもあれって物の持ち運びをする時どういうルールが働くんかね？」
手に持ってる物ならなんでも転移出来ちゃうんだろうか？でもそれだと人手が必要な意味分からんよな。一人で何でも持って来れそうだし
「転移魔法と同じだと考えるとその人が持てる物と同等の質量までなら運べると思います」
「ああ、なるほど。つまり一人じゃ運べない重い荷物を運びたいなら複数人で転移魔法を使う必要がある訳か？」
「そうですね、地面から浮かせる物なら大抵は運べると思います。転移出来ない様に細工されている物は無理ですが・・・
注意点としては建物や地面に触れた状態で転移を行うとそれらも荷物と判定されてしまうので荷物の転移に失敗してしまう場合が多いです
ですので転移で物を運ぶ際には浮遊能力を使う必要もあり、一般の職業としては若干敷居の高い仕事と言えますね」
荷物の判定は自分の体に近い物から優先して判定されるので身に付けている物や小さい荷物は地面や建物に触れていても問題なく運べる様だが大きい物となると難しくなるという話だ。よくわからん・・・
「それで考えている段取りとしてはまずコアルームでカメラをチェックし、人が居ないのを確認してから外へ出ます。勿論森側の入り口からです」
「ふむ」
「そしてパーキングエリアまで転移魔法で飛び、そこから森の都まで馬車へ乗っていきます
森の都へ着いたら買い物、済ませた後は現地で荷車をレンタルし、ダンジョン近くまで荷物を運んで降ろします
流石に直接ダンジョンまで持って行く訳に行きませんからね」
「ふむふむ」
「荷物を降ろす場所はダンジョンから転移で飛べる距離ならどこでもいいですが、出来れば野ざらしでは無く建物を建てた方が人目にも付きませんし、荷の保存も出来て地上での拠点にも使えると思うのでいいと思います」
なるほど、一度そこへ運んでから転移魔法と転移ルームで往復して物資を搬入する訳ね
地上での拠点っていうのも魅力的だし、なかなかいいアイデアではないだろうか
