図書館と物資搬入
しかし眷属が増えるとこういう話し合いも長引くね
部隊分けしたりして中間管理職(部隊長)に管理してもらった方がいいかもだな
新たに加わった人間の眷属との話し合いを前にそんな事を考える
こいつら全員に仕事を割り振るってなかなか大変じゃね?
う~ん、何から話すべきかね? やっぱ人間にしか頼めない事の方がいいよな
「とりあえず何人かは外部の情報を集めて来て欲しい。例えば株価を調べれば次週以降労せずお金は稼げるだろうし、事件が起こるのを事前に知っていれば防ぐ事も可能だろう
本なんかもまだまだ不足している
正直俺も含めダンジョン内部の者は無知だからな
これはと思う本があればダンジョンへ持ち帰って来て欲しい
地味な仕事だが重要な事だと考えている。誰か志願者は居るか?」
見渡すと何人かが自主的に手を上げる
なかなかやる気があるようで何よりだ。やっぱさっきの誓いが効いてるのかね?
「俺ら冒険者は元々情報を集めるのも仕事の内だ。ここは任せてもらいたい」
「集めた情報は掲示板に書いたり、紙に写してある程度貯まったら倉庫に入れておきますね!」
「ああ、頼りにしてるよ。経費が必要なら出来る限り出すから申告してくれ」
「それは大丈夫、食事と家を用意してもらえるならそんなに経費は掛かりませんよ」
「そうそう! そこが一番お金かかるからね~! 逆にここへ住むようになったらお金は貯まるんじゃないかな?」
「そうか? ならいいんだが」
どうやら冒険者連中は普通に仕事を続ける気らしいね
元々あちこちへ移動する仕事だし、帰りは転移ルームで帰れる事を考えれば彼らにはダンジョン暮らしはそんなに苦じゃないのかもしれんね
「わ、私は下っ端ですが図書館で働いていますので本については詳しいつもりです! 出来るだけ持って来ますね!」
冒険者達との会話が途切れるのを待っていたのか元気に手を上げてそう言うのは見た感じ10代後半くらいのメガネっ娘だ
なかなか可愛い上にノースリーブなので手を上げると脇がモロ見えで目のやり場に困る
実際人間の男連中はチラ見しているがメガネっ娘本人はまるで気にしていない様子だ。天然小悪魔さんか?
でもこのウブな感じはいいな。ダンジョンに来る人間て大体戦闘民族で擦れてるのばっかだからな
なんか癒されるわ
「そうだな、持って来てくれればコピーは簡単に出来るからな。娯楽も必要だろうし実用書だけじゃなく漫画や小説など何でもいいから持って来てくれるとありがたいよ」
「そういう事なら俺も漫画本は大量に持ってるから持って来るぜ!」
「わ、私も持って来ます! やっぱり好きな作品って定期的に読み返したくなりますからね! 手元に置いておきたいです!」
それはすごいよく分かる。実際は持ってても読み返す事は稀なんだけど手放すと猛烈に読みたくなるんだよね、不思議
「持って来てくれた本は居住区地下2階に図書館を作りそこに保管する予定だから興味がある者はそこで読んでほしい。あと、これは今すぐって話じゃないが本の種類が増えてくれば図書館を管理する司書も必要だろう。誰か希望者はいるか?」
そう言ってわざとらしくメガネっ娘を見る、すると・・・
「あの! あの! 私やりたいです! 司書! 子供の頃から夢だったんです! 司書になるの! でも募集自体少なくて・・・でも諦めきれなくて、図書館でアルバイトやってるんです・・・」
メガネっ娘は最初は元気よく飛び跳ねて主張していたが段々元気が無くなっていき、最後は泣きそうな顔でうつむいてしまった。何か嫌な事を思い出したのだろう
人間社会では善人程そういう席の奪い合いを制するのは難しい
他人をグイグイ押しのけて上に媚びを売りまくり、それを平気と思える人間じゃないとな
逆に言うと席の奪い合いに負けても腐らず諦めずに頑張っているこのメガネっ娘が善良で真面目な人間なんだろうなと思ってしまうのは俺が捻くれてるからだろうか?
「そうか、じゃあ今すぐとは行かないけど図書館がちゃんとした図書館になったら君に管理を任せる事にするよ」
「ほ、本当ですか!」
「ああ、そのかわりちゃんとやってね」
「もちろんです! わあい! 私頑張りますね! 本も頑張って揃えて立派な図書館にしてみせます!」
満面の笑顔を見せるメガネっ娘。喜んでもらえて何よりだ
「まあ一人じゃ寂しいだろうし、書物の整理って意外と力仕事だからな、男手もいるだろう。誰か希望者は・・・」
そう言い終わる前に何人もの男たちが素早く手を上げる
はえーな男子! 気持ちは分かるが落ち着け! 下心ありすぎだろ!
だが残念だったな、図書館の管理にこんな大人数はいらん。って事でジャンケンで決めてもらう事にした
「ぐお~~~!」
「む、無念・・・」
「マスター殿~! もう一度、もう一度チャンスを~!」
結果、死屍累々である
負けた奴らはこの世の終わりのような顔をしている
大袈裟な奴らだ。とは思うが流石に少し哀れなので助け舟を出してやることにする
「え、え~と、図書館が大きくなれば管理する人員も増やさないといけないだろうし、その際は希望者の中から評価の高い者を優先して部署移動させるようにするから希望は捨てないでほしい」
なんて助け舟を出すと負け組の目にメラメラとやる気の炎が宿るのが見える
こ、こいつら・・・
ま、まあ動機はともかくやる気になってくれたならまあいいか・・・
「他に頼みたい事は物資の搬入。特に武器や防具なんかはダンジョン産よりも人間の使っている物の方が性能がいいのが現状だ。ある程度みんなに行き渡るまでは優先してお願いしたい」
武具は消耗品だ。その為人間の場合は強力でも高価な物はここ一番の為に取っておく傾向が強い様だ
RPGで言えば雑魚戦は弱い武器で戦い、ボス戦だけ強い武器に持ち替えて戦う感じだ
しかしダンジョンにはリサイクルームがあるので例え壊れたとしても修復する事は容易である。そこは人間側より遥かに有利な点と言えるだろう
なのでガンガン強い武器を手に入れて普段から思い切り使っていきたい所だ。やはり使い慣れた武器で戦うのが一番だろうからな
「物資の搬入に関しては物流で働いている自分に任せてもらえれば大丈夫です。自分は大型空間収納魔法も使えますので! ただ、モノによっては一人では持ち運びが困難な物もありますので出来れば助手を2~3人付けて頂ければ有難いです」
空間収納魔法はその容量が許す限り重さを気にせず物の持ち運びが可能だが、前にゴリ達が言っていた様に中には収納できない物もあるのでそういう物資を運ぶのには人手が必要という事だろう
「俺は中型収納魔法までしか使えないが連れて行ってくれるか? 引っ越しの経験もあるし少しは役に立てると思う」
「私はリキャスト4時間は掛かるけど転移魔法で数キロ程度なら飛ぶ事が出来るわ! 力仕事の方が性に合ってるし連れてってくれると助かるわ!」
「お、おでは重機ならある程度乗れるから連れてって欲しい・・・」
物資搬入班もトントン拍子に席は埋まり、仕事の段取りについて話し合いを始める。なんかみんな自主的に動いてくれるし、段取りもやってくれるし優秀だね
「底辺作業員は面倒な仕事を押し付けられるのが普通でそれを何年もやって来てるからな。現場での作業って事に関してはみんな優秀だよ。ただコミュ力低いから出世できないだけで」
と言うのは俺の横にやって来て助言するトシの談
なるほどね、理不尽な目に遭って来てるからこそ腕は確かって訳か皮肉な話だな
「コミュ力低くねェ! 話しても不快な思いするだけだから話さねえだけだ!」
「そうよ! 人を見下す様な奴らと話しても楽しくないし、そんな奴らと仲良くしてまで出世なんかしたくないわよ!」
「じょ、冗談だろうが! マジになるなよ・・・」
「「そうは聞こえなかった!!」」
「ま、まあまあ・・・」
「お、落ち着け・・・」
搬入班4人の内、2人はトシに対してキレるが2人はそれを止める
なかなかバランスが取れてるねと思う、性格的に
話題を変えようとしたのか止めている内の一人が質問をしてくる
「そういえば手に入れた物資は次周以降もダンジョンの倉庫に残ると聞きました。その際、元の場所にあった物はどうなるのですか?」
んん?
「と言うと?」
よく分からん
「例えば今回俺が買って来た物なんかが時間が戻った際にどうなるのかって事だろ? 店の棚から品物が消えるのか。あるいは残ったままなのか」
「ああ、なるほど・・・」
それはどうなるんだろ?俺はユズの方を見た




