モチベーション
「じゃあこれからの事について話していこうか」
誓いの後しばらくみんなで談笑していたがキリがない感じだったので一旦切り上げ今後の方針を話す事にした
しかしみんな残ってくれて嬉しい反面、醜態を晒してしまったので照れくさいな
「まずモンスター達だが特に今までとする事は変わらない。基本的にはダンジョンの清掃や伐採など整備をしながら心身を鍛え、レベルやランクを上げて行って欲しい」
ずっと鍛えてればよくね?なんて思う人もいるかもしれないが流石に一日中ずっとトレーニングするのは無理である。どう考えてもオーバーワークだ
これが卓球やビリヤード等の様に実戦練習の負荷が少なく、技術が最重要で体の力は最小限でいい種目ならずっと実戦トレーニングに費やするのもアリだと思う
しかし戦闘訓練の実戦は負荷が大きくそれ自体が全身の筋トレのような物だ
長時間行うのは不可能でせいぜい週に1~2回、一回の練習時間は1~2時間程度が適量だろう
実戦以外の日は筋トレというメニューにしていきたいが、こっちも一日2~3時間程度が適量だ
どう考えてもトレーニングだけしてろとなると時間が余る
かと言ってトレーニング以外の時間は自由に遊んでろと言われてもそれはそれでしんどいんだよな
例えば仕事が休みの日に20時からトレーニングあるからジムへ来いよと言われても今いち体が起きてこない物だ
それなら仕事帰りに軽くご飯食べてそのままジムへ直行した方が心身共に温まっているのでまだ疲れが無いモノである
物事を続けるというのは簡単ではない
今はやる気に満ちているからいいだろうが、それだけで長くは続かない
よく転生モノの小説なんかで幼児の頃から必死で鍛えて続けて10年も経つ頃には世界でも上位の強さになりましたなんて話があるが、あれは実はすごい事で普通なら99.9パーセントの人間はその途中で挫折すると思う
と言うのも人間のやる気というのは三日坊主なんて言葉がある様に2日程度しか持続しないのだ
ぶっちゃけ同じ分野を10年も鍛錬し続ければ凡人でも全国区の実力者になれるだろう
だが実際は世の中にそれだけ実力者が溢れている訳では無い
殆どの者は途中で挫折しているか惰性で続けているだけになってしまっているからだ
10年間必死で努力して強くなりました!なんて文に書くのは簡単だが現実にはそれだけ努力を継続するというのは難しい訳だ
だからこそ物事を続けたいのならばモチベーションを持続させる方法を考えなければならない
例えば仕事が終わった後に家で寛いでしまうと眠くなってしまいそのまま寝てしまう
まだ一時間ほど時間あるからゲームでもして時間潰すかなんてゲームしてたらなんか行くのしんどくなってもう今日はやめとくかなんてサボってしまう
ちょっと風邪ひいて一週間ほど寝込んでしまいそのままフェードアウト
壁にぶつかり嫌になる
仕事が忙しくなり行く暇が無くなる。そして間が空いてしまいやる気も失われてしまう
とまあ、やる気が失われる原因は色々ある
まず寝てしまうやゲームの話はバカみたいと思うかもだが人間と言うのがどれだけ怠惰な生き物かをよく表わしていると思う
ちょっと雑念が入ったり楽な道が近くにあるとすぐにやる気は萎んでしまうのだ
対策としてはトレーニングの直前には雑念を入れない
横になるのもダメ。時間を潰すにしてもストレッチをしたり筋トレ関連の本を読んだり動画を見たりあるいは音楽を聞いたりした方がいいだろう
間が空いてしまうのは事情によっては仕方ないが基本的には間を空けないように心掛けていきたい
古今東西の指導者が毎日少しずつでもいいから続けなさいと必ず口にするのは只の根性論ではなく、そうする事で毎日やる気がチャージされるからだ
たまには休息も必要だが、毎日続けるというのは基本である
他にもモチベーションを保つ有効な方法として記録を取る事や目的を持つというのがある
記録はトレーニングの場合は筋トレで上げられるキロ数を記録していくのが一般的だ
バーベルカールで50キロ。ベンチプレスで100キロと言った具合に書いていき慣れてきたらカール52キロベンチ102キロという感じに少しずつ増やしていく
そうする事で目に見える形で成長の軌跡を見る事が出来るのでやる気の足しになるという訳だ
目的。これについてはあの3人を倒すという共通の目的があるので問題無いと思っている
まああれは最終目標だから他に小さい目標もあった方がいいんだけどな
これは「俺は強くなりたい」なんて形の無い抽象的な目標よりも形のある物の方がいいだろう
定期的にダンジョン内でランキング戦でもやるか?
う~ん、でもそれだと後衛が不利になるか・・・
いや、個人戦だけじゃなくチーム戦もあれば後衛も活躍できるか
攻撃は魔法しか使っちゃダメとか縛りを入れるのもいいかもしれないな
賞品は何がいいかな?DPとダンジョン内貨幣って交換可能だったけか?
いや、これもランキング戦じゃないと手に入りにくい物の方がいいか
となると装備品とかかな?
う~ん、これについては後日考えるか・・・
こんな感じでただ鍛えると言っても単純バカでは居られない。モチベーションを維持する為に色々考えていく必要があるのだ
仕事をするというのもその一端だ
トレーニング以外の時間をダラダラ過ごすより多少しんどくても仕事をして過ごした方が心身のギアが上がりやる気が維持しやすいという訳だ
ダンジョンの場合はダンジョン内貨幣との絡みもあるしな
とは言え人間社会の様に仕事で疲れて他の事やる余裕がねェ!なんていうのは避けたいので勤務時間は短めにしてやりたい所だ
トレーニングメニューの組み方も考えていく必要がある
今までは実戦練習は夜のみだったが、警備員の様に夜する仕事も増えて来ると昼の部も作った方がいいだろう
筋トレのメニューの組み方も慣れるまではちょっと難しい
俺も自分がやる分には経験があるが人に教えるとなると自信無い
よく部活なんかでみんな仲良く走ったり筋トレしたりとした覚えがある
あれは楽しいけど間違ってるんだよな
筋トレは自分の体との対話だからな。そして自分の体の調子は自分にしか分からない
だから筋トレはみんな同じメニューなんてのはあり得ない。個人で個別に行うべきだというのが俺の持論だ
実際俺が柔道をやってた時は受け身など基本的な事を習う初期を除けば実戦練習をしたい時だけ部活に顔出してそれ以外の日はずっと自宅やジムで筋トレしてたからな
自画自賛みたいになってしまうがその結果名門と言われる柔道部で高校から始めた俺が2年目夏からレギュラーで全国ベスト8だ(1年目は始めたばかりで危ないって事で出られなかった)
練習は量も大事だが質はもっと大事というのがよく分かるだろう
でもその辺りの機微は人に教えるのはすごい難しい
そもそも教えられるモノなのか?って話だ
なんて話を眷属たちとして盛り上がっているとそこへユズが割り込んで来る
「トレーニングについてはゴリさんに任せておけば大丈夫ですよ。あれでもその道のプロですからね」
「ほー」
そういやゴリは元々貧弱だったのが鍛えてムキムキになったみたいな話してたな
こういうのは元から強い奴や感覚派の人間は教えるのに向いていない
クロなんかがいい例だ
ガッ!とやってビュッ!とやってバシ!って感じだみたいな事を言われても訳が分からんからな
その点ゴリは履歴的にもその顔に似合わない理論派な考え方からも人に教えるのには向いている様に思える
「ああ、これでも一応インストラクターの資格持ってるんだ。若い頃は冒険者稼業だけでは食ってけなかったからな」
「あ~なんかそんな事言ってたな」
「うむ、むしろインストラクターが本業みたいになってたからな一時期・・・」
遠い目でそう語るゴリ
なんか色々苦労があったんだろうな
「まあそんな訳で筋トレの方は任せてもらって構わん。だが実戦の方は俺らじゃ無理だぞ。こう言っちゃなんだが力が違いすぎるしな」
「う~ん、そうなんだよな・・・」
格上と実戦練習はちょっとの差ならまだいいが、あまり差があり過ぎるといい影響出ないからな
スポナーでのレベリングも実戦とは言い難いレベルを上げる為の作業的な物だ
仲間内での練習もどこか遠慮があり緊張感に欠けるとアリスが言っていた
敵を探すってのは変な話だが大切な課題だな
「まあ実戦については後々考えるよ、今はいい」
大きな事を成す為には大きな準備が必要だ
今回はその準備の周回だ。基礎を養う事に費やする
実戦だなんだはその後の話でいいだろう
こんな感じでモンスター達の予定について話し合いは終わり、次は人間たちの今後について話をする事にする




