誓い
「全員注目~!」
待ち時間が暇なので人間たちを眷属にしていると相変わらずよく通る声でアリスから号令が掛かった
それと同時にいつの間にか綺麗に整列していた人型モンスターたちが手に持った武器や盾で地面を叩く
ガシャン!っと心地よい音がコアルームに響き渡る
「今から例のアレをやりたいと思う。古参の者は今までの事を思い出しながら、あるいはこれからの事に思いを馳せながら叫んで欲しい。新規の者も何だか分かんないだろうがとりあえず復唱してくれると助かる。気力を充実させるのが目的なので元気よく行こう」
「「「応!!」」」
またガシャン!と地面を叩く音が聞こえる
ありきたりな演出だが一糸乱れぬその音は見る者の意識を自然と惹きつけていく
そのままガシャン!ガシャン!と10回ほど続いた後、音は止み代わりに眷属たちの叫びが始まる
「「「我ら眷属は今ここに誓わん!!」」」
ガシャン!という武器の音と共に同じ言葉が復唱される
なんだ?桃園の誓いか?それなら俺も聞く側では無く混ぜて欲しかった
俺アレ好きなんだよな三国志は男のロマンだと思う
俺の眷属だからなのか、ただの偶然かその辺りの好みは似ている様だ
「「「我ら生まれ落ちし場所も、時間も、種族も違えど!
共に生き!共に笑い!そして共に戦う事をここに誓わん!!」」」
ガシャン!という音が響き言葉が復唱される
つい身震いして聞き入ってしまっている自分に気付く
共に生き、共に笑い、共に戦うか・・・俺は人間として生きてたであろう前世でそう言えるだけの関係と出会えた事はあっただろうか?
見れば人間たちの中にも復唱している者や興奮して震えている奴らが居る様だ
気持ちは分かる。人間は大人になれば周りと距離を置く様になるものだ。経験上それが一番傷つかない方法だと誰もが知っているからだ
そうして生きていく内に子供の頃の様に誰かと思い切り笑い合うなんて事は少なくなっていく
例えば会社の飲み会なんかではみんな楽しく笑い合っている様に見えるがあんなものは上っ面だけの物だと誰もが思っているだろう
前世ではそれを感じる度にうんざりした気分にさせられた物だ
だから飲み会はホントに嫌いだった。あんな物悪しき習慣だとホントに思う
だが今ここには上っ面だけで無いものが確かに存在するのだ
大人になってから手に入れようと思っても難しい、多くの者が子供の頃に手放したそれが目の前に存在するのだ
下手をすれば一生のうち一度もそれに出会えない人間も居るだろう
しかしそれは誰もが心の奥底では欲してやまない物なのだ
興奮するなという方が無理な話だろう
「「「そして我らは共に生き、共に笑っていく為に誰よりも強くなる事をここに誓わん!!」」」
またガシャン!と音がする。神父の連れて来た子供たちも目をキラキラさせその様子を見ている
「「「我らが強ければあの日、住処を奪われずに済んだ!築き上げて来た物を壊されずに済んだ!そして何より、仲間が死ぬのを見ずにも済んだ!!」」」
その言葉に夢の光景を思い出すがガシャン!という音に引き戻される
「「「だからこそ我らは強くなる!大切な物を護れるくらい強くなって見せる!もう二度とあのような思いをしなくてもいいように!何者が相手だろうと!例え最強の軍勢が相手だとしても!神や悪魔が相手だとしても!もう、誰一人として・・・」」」
ガシャン!と音がする
「「「誰一人として死なせはしない!!」」」
その伝説のセリフと同時に人型モンスターは手を上げ雄叫びを上げる
「「「うおおおおおおおお!!」」」
いや、モンスターだけではない
人間たちも多くの者が叫んでいる
俺も気が付けば握り拳を作ってしまっている
はは、確かにこれは元気が出るな。なんてアリスの思惑にまんまと乗せられてしまったが悪い気はしなかった




