表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/268

誘拐犯と親子

誘拐犯?その言葉を聞き周りの子供たちを見て思いつく事は誰でも同じだろう

つい無意識に眉根を寄せてしまう


ゴブ太やエア達もそれは同じ様でロビンと名乗る男に対し、殺気を隠そうともしていない

今にも飛び掛かって行きそうな眷属たち、そしてその殺気を受けてなお怯まないロビンという男

一触即発のピリピリした空気が場を支配していたが、それに終止符を打ったのは意外にも被害者である筈の子供たちであった


「神父様をそんな目で見ないで!」

「そうだ!神父様は俺達を助けてくれたんだぞ!」


体を大の字に広げて俺達と神父の間に割って入って来る子供たち

涙ながらに神父を庇うその姿に皆困惑を隠せない


「お前たち、さがっていなさい!」


「だ、だってこいつら!」


「これからお世話になるかもしれないのにこいつら等と言うものじゃありませんよ」


「う、うう・・・」


神父の言葉にシュンとなる子供たち

う~ん、なんかよく分からんけどこのやり取りを見た感じでは子供たちは望んで神父の元にいると考えていいのか?


「いいよそのままで。今のは俺達に非があったしな、話も聞かずに非難の目を向けて悪かった」


頭を下げて謝っておく。話も聞かずに貼られたレッテルだけで人を判断したんじゃ俺も人間どもと同じだしな

そこまで堕ちたくはない


「いえ、動機は何であれ人様の子供を攫ったのですからそうされても当然でしょう・・・

事実指名手配犯ですし、人間の中には私を嫌悪する者も多い」


「・・・ここはダンジョンだから人間の法など関係ない。指名手配犯だろうが何だろうが関係ない

犯罪者=悪とも俺は思っていない

例えば暴力事件が起きると殴った側が悪いって事にされる

だがもし殴られた奴が相手の傷つくような事を言っていた場合、俺は殴られた奴の方が悪いと思うんだ

でも人間の法律では殴った側が悪いって事にされ殴った奴の言い分など誰も聞く耳持たない

一方的に悪者にされてしまう

俺はそういうのは好きじゃない

ここでは俺が法律とまで言う気はないが、相手の言い分も聞かずに一方的に断罪するなんて事はしないつもりだ

だからそっちも出来れば正直に話してほしい。その子たちとあんたの関係をな」


まあ元々そのつもりだったみたいだけどな、俺らのせいで中断されてしまった。仕切り直しだ

トシめ、流石にこれはぶっつけ本番はきついだろ!軽くでいいから事前に説明しとけや!


「兄ちゃんもしかしていい奴なのか?」

「そうなんだよ!みんな話なんて聞いてくれないんだ!みんなして神父様を悪者にしてさ!」

「法律とかよくわかんないけど神父様なにも悪い事してないよ!なんで捕まらなきゃならないの?」


仕切り直しにしようと思ったが俺の言葉に呼応して泣き叫び騒ぎ出す子供たち

あ、やば・・・余計に収拾付かなくなったか?


「お前たち、静かにしなさいと言ってるだろう?」


と思ったが神父の一言で皆静かになる。あれ?子供ってこんなに素直なモンだっけか?


「懐かれているんだな。みんなあんたの言う事はよく聞く」


「はは、今ではもう親代わりですからね

血は繋がっていませんが、この子たちとは本当の親子だと思って接しています

逆に言えば血が繋がっていたとしても親と呼ぶに値しない親もいるのです」


何か思い出したのか神父の言葉に怒気がこもる


「子供はね、生まれて来る場所を選べません

どんな屑親の元だろうが自立して生きていく力が無い以上そこで暮らしていくしか無いのです

・・・この子たちは性的、暴力的な虐待を受けていました

毎日のように犯され殴られ、夏の炎天下の中、空調も効いていない密室に放置され冬の寒い日に外へ放り出され・・・

熱湯を浴びせられたり、包丁で切り付けられた子もいます

瀕死の状態でゴミ捨て場へ捨てられていた子も・・・

私はね、前にしていた仕事のせいか他人のが視えるのです。そういう能力を持っています

だからこそ我慢できなかった。傷だらけの子供たちを見て攫わずにはいられなかった

例え誘拐犯として忌み嫌われる事になろうとも、子供たちを救わずにはいられなかった・・・」


「・・・」


面接室に入らず外で待機している子も合わせれば子供たちの数はざっと見ただけで50人は居るだろう

ひとつの町でこんなに虐待された子供が居たとは考えにくい

恐らく色々な場所で攫って回り、その結果足がついて指名手配犯として追われる身となったのだろう

当たり前だ。こんな大人数でウロウロしてたらそりゃ目立つって話だ


逆に考えれば各地を回ったりしなければ潜伏していられたんじゃないかとも思える

・・・本物の正義の味方だな。普通なら分かっていてももう少し保身を考える物だ


「国に追われながらも今までは何とか逃げおおせて来ましたがもう限界が近いのを感じておりました

逮捕されるのは・・・まあ仕方のない事ですが、気がかりなのは子供たちの事です

私が捕まれば子供たちは親の元へ帰されるでしょう

そしてまた地獄のような日々を送る事となる。死んだ方がマシだと思えるような日々を・・・

私はそれだけは我慢ならないのです!」


神父は勢い良く地面にひたいを叩きつけ土下座をしながら叫ぶ

相当強く打ったのだろうその額からは血がにじみ出ていた


「指名手配犯である私は外敵をおびき寄せてしまうかもしれません!

ですので私の事を受け入れてくれとは申しません!

ですが!どうか子供たちだけでも受け入れてもらえないでしょうか!

この通りです!お願いします!」


神父の悲痛な叫びが響く

耳を澄ますと面接室の奥の部屋でドアの隙間からなりゆきを見守っていたホームレス達からも

「マスター受け入れてやってくれよ。子供たちの世話は俺らもするからさ」と声が聞こえて来る


言われるまでも無く神父の思いに応えようと声を掛けようとする、しかし・・・


「ダメ―!」


それよりも早く子供たちの制止の声が上がる


「神父様と一緒じゃないとやだー!」

「離れ離れ嫌だよ」

「俺も戦うから!神父様の事追って来る奴らなんか俺がみんなやっつけるから!だから一緒にいようよ!」

「私も戦う。怖いけど、神父様と別れる方がやだもん」

「あたちもたたかう!」

「俺も!」

「ぼ、僕も!」


「お前たち・・・ぐっ!」


子供って正直で純粋だよな。神父も子供たちの言葉に感極まったのか言葉を発せずにいる

というか俺もやばい、おっさん泣きそう


「とりあえず頭を上げてくれ

あんたの処遇だが最初からあんたの事も受け入れるつもりだから心配しなくていいぞ

懲役を受けてまた社会に復帰したいって言うんなら止めないが、そうじゃないんだろ?」


「・・・お見通しですか

その通りです。私は一生人攫いはやめられないでしょう

そしてそれはダンジョンに滞在していても変わりません

定期的に外へ出て、子供を攫って来るでしょう

敵をおびき寄せると言うのはそういう意味も込めています

それでも構わないのですか?とんだ疫病神かもしれませんよ?」


「構わん。手出しの云々に関わらず、どこへ逃げようとも人間どもが攻めて来るってのは変わらん。その事はもう体験済みだ

ならば疫病神大いに結構!むしろどんどん攻めて来てもらえた方が屈強な兵が出来上がるってもんだろう

という訳で出ていく必要はない。子供たちは勿論、あんたの事も歓迎するよ」


そう言った瞬間ホームレス達から歓声が上がり、子供たちも泣き喜びながら神父に抱きついていく

お、おお・・・喜んでくれてなによりだ


って事で誘拐犯と子供たちが仲間になった







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ