面接その2 神父と人間の子供たち
「はあ、疲れた・・・」
「疲れましたね・・・」
ホームレスたちの話を聞き終え現在休憩中だ
結果は全員合格。何というか人間社会の嫌な話をこれでもかという程聞かされ食傷気味である
その内容は上司や権力者の怒りを買い身に覚えのない罪を着せられる
そして器物破損や横領などで企業に損害を与えたとされて損害賠償を払わされるといったコンボが主で、酷い物になると麻薬所持や業務上過失致死の罪に問われているケースもある
勿論全員冤罪である
人間社会では上の人間がその気になればいくらでも犯罪者を作れてしまうって訳だ。ホント胸糞悪い
こういう話を聞いてるとやっぱり人間って滅ぼした方がいいんじゃないかと思えてくるね
「受け入れてもらえて助かるよ。あの人らとはたまに話をする程度の仲だけど事情を知ってしまってる分、何だかほっとけなくてな」
感謝を述べて来るトシ
いや、流石にあの話を聞いて追い出せる程おれは鬼では無いよ
「いいよ、ああいう人たちを助けるのは俺の目標でもあるしな。他にもいるなら今のうちに連れて来とけよ」
頻繁にダンジョンに出入りしてたら怪しまれるってのもあるが、こんなメンタルへダメージを受ける面接を何度も行うのは避けたい、今回で終わりにしたいというのが本音だ
「いや、知り合いには一通り声を掛けて来たから大丈夫だ
ここの事も来なかった奴らには言ってないしな
心配事があるとすれば、この面接で落ちた奴らが口を割らないかだが」
「それは心配しなくてもいい。入り口は塞ぐ事も出来るし、眷属にならなければ記憶は次周に持ち越せないしな」
決戦の日まではひたすら死に戻る事になるだろうし、この周の細かい事は割とどうでもいい
「それより、そろそろ次の組を連れて来てくれるか?あまり長く休憩するとやる気がなくなってしまいそうだ」
「お、おお!じゃあ呼んで来るぜ!たぶん次も重い話を聞くことになると思うがよろしく頼むな!」
「おう!任せとけ!ユズにな・・・って冗談だって!逃げないから離せっての!」
「そうは聞こえませんでしたよ。えいっ!」
「ぐわ~~!やめろ~!潰れるっ!潰れる~!っていつもやられっぱなしと思うな!ってい!」
「甘いです!」
一本背負いを仕掛けるもあっさり潰される。やっぱ強い!重い!岩かよ!
「ちくしょー!重い!上がんね~!ハアハア・・・」
「むかー!それ普通に悪口ですからね!もう怒りました!」
なんてまたアホなやり取りをしてるとコンコンとドアをノックする音が聞こえる
「「はいどうぞ」」
ハモった。2人とも同時に手を離し何事も無かったかのような顔で来客を迎え入れる
入ってきたのは大勢の小さな子供たちに、その保護者と思われる神父だった
「わ~すごい!洞窟の中に部屋がある~!」
「秘密基地だ~!ねえ神父様!秘密基地だよ!」
「モンスターも居る~!でけえ!カッチョイイ!」
「こらっ!お前たち、静かにしないか!」
神父は元気にはしゃぐ子供たちを制し、礼儀正しくお辞儀してくる
「す、すいませんお騒がせしてしまって」
「いや、構わんよ。子供は嫌いじゃない」
腰が低く細目で大人しそうな顔をした神父だが先程のホームレス達とは違い俺達を見ても平然と落ち着いた様子を見せている
体も細いがなかなか鍛えているのが服の上からでも分かる
どこか凄みのある男だ、油断はしない方がいいな
傍に控えるゴブ太達も男の実力を警戒しているのか緊張した空気が伝わって来る
「トシから話は聞いてると思うが俺がここのダンジョンマスターだ。ここへ住みたいという話だがそれはその子供たちも一緒にという事でいいんだな?」
「はい、その通りです。図々しいお願いとは思いますが、受け入れてもらえますでしょうか?」
う~ん、子供の受け入れか・・・
俺としては全然構わないんだけど子供たちはそれでいいんだろうか?
見ればまだ5歳未満と思われる子もいる
汚い世界を見てきた行き場のない大人ならともかく、子供たちはまだ人間社会に未練もあるんじゃないか?
そんな人間まで眷属にするのは何か違う気がするんだが
「えっと、その前にそちらの事情を聞いておきたい。簡単でいいから説明と自己紹介をしてもらえると助かる」
「・・・」
ここで男が少し怯んだのが分かった
何か他人には話しづらいやましい事でもあるんだろうか?
「ロビンさん、気持ちは分かるがここは正直に話すべきだ」
男は数十秒もの間沈黙を続けていたがそれを見かねたトシの一言によって覚悟を決めたのか自身と子供たちの関係について話し始める
「・・・そうですね、トシさんの言う通りですね。ここは正直に話すのが礼儀という物でしょう。
マスターさん失礼しました、私の名はロビン
人間社会では連続誘拐犯として指名手配されている者です」




