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◆真っ暗な世界と輝いているもの

「トシよ、草原のダンジョンマスターというのはどんな奴だった?お前会った事があるんだろ?」


もうかなりダンジョン行きに心は傾いてしまっている辺り俺はアンデッドになっても単純なままなんだと思う

ダンジョン行きを決めた理由としては最初に考えた秘境探索ルートは思ったより敷居が高かった点と件のダンジョンにオッサさんが出入りしているというのが挙げられる

今はそのダンジョンについての話をトシから聞き出しているところだ


「ああ、何というかカッコいい男だったよ。俺らがあいつを追い詰めた時あいつさ、眷属を庇ったんだよ

俺は大人しく殺されるからこいつらは見逃してほしいってな。アホだろ?恰好付けすぎだって話だ

そんで言葉通りぶっ殺そうとしたら今度は眷属が立ち塞がって来るしよ、いちいち暑苦しいんだ

一緒に行った連中も失笑してたっけかな・・・

でもな、みんなが笑ってる中 恥ずくて言い出せなかったけど、俺はそれ見てカッコいいって思っちまった

その時まで忘れてたけど、昔おれが目指してたカッコいいってのは正にあれなんだよ

うまく言えねェけどな、俺はあれを目指してたんだ」


トシは話をしながらその時の事を思い出したのか拳を握りブルブルと震えて興奮している

まあ分かるよ。その気持ちは

俺もそういう暑苦しいのは大好きだ

その話を聞いてますますダンジョン行きへの決意が固まっていく


「だがな、俺はそのカッコいい奴らにヒドイ事をしちまった

ずっとその事でモヤモヤしててな。なんとかしてあの時の詫びをしたいと思ってたんだが相手はダンジョンマスターだ。しかも俺は敵だし、会う事も容易じゃねェ

どうしようかと悩んでた所で今回思わぬチャンスが巡って来たんだ

さて、ここからが本題だがその噂のダンジョンマスターが何を血迷ったか外に出て来てるらしい

さっきメールがあってな。国道に追い込んだから狩りに参加しろって事で今続々と近隣の冒険者が集結中って訳だ

でだ、俺はあいつを助けに行こうと思うんだが、よかったらあんたも手伝ってくれねェか?

正直おれ一人じゃ手に余るし、かと言って知り合いに頼るにも気が引ける案件だ

その点あんたなら平気だろ?モンスターだし、うまくすればダンジョンマスターに恩も売れるかもだぜ?」


「ふむ、いいだろう一緒に行こう」


即決。迷うまでもない。ダンジョンマスターは元人間が転生した者が主だ

それがコアが高く売れる、あるいは成長させれば脅威となるというだけで狩られるのだ

実際は温厚で人類に害を与える者など皆無に等しいというのにだ


とは言え俺もアンデッドになる前はそこまで真剣にその事について考えた事は無かった

だが今は違う。同じ人類に狩られる側の者として助けてやりたい、力になってやりたいと強く思うのだ


「だが逆にお前はいいのか?俺はもうモンスターだし人間相手に多少暴れようと関係ないがお前はまずいだろ?」


だがその問いに対しトシは迷う素振りも見せずあっさりとうなずいた


「はっ!構わんよ!言ったろう?忘れてた物を思い出したってな!

俺が高校の教師を殴った話知ってんだろ?俺はその事で落ちこぼれたが後悔はしちゃいない!

あのくそ野郎を殴らなければ俺は一生俺の思うカッコいいにはなれないと思ったからな!正義は俺にあるって思いもあったしな!

だが周りの反応は違った。生徒の中には俺を庇ってくれる声もあったが、大人たちの対応は冷たいもんだった

どんな理由があろうが暴力はいかんってな

叩きに叩かれて言葉の暴力で心を削られていく内に最初の頃の熱い思いは忘れてしまっていた

気が付けば周りへの不満だけで心は満たされ、前へ進む事は出来なくなってしまっていた

世界は汚れていて真っ暗なんだって思い込んでしまっていた

でもな、そんな時あいつが光を与えてくれたんだ

こんなにも美しいものが世界にはあるんだって思わせてくれたんだ

例え世界が汚れていたとしてもそこには確かに輝いているものがあるんだって気付かせてくれたんだ!

その輝きがある限り俺はどこまでだって進んでいける!

そう思わせてくれた恩人に恩を返すチャンスなんだ!状況なんざ関係ねェ!むしろ燃えるぜ!

元々おれは日陰者だしな!こういう時は気楽でいいぜ!ふはは!

まあそういう訳だ!もうすぐそこにいるらしい行こうぜ!ボアさん!」


そう言って走り出すトシ

その背を見て思わずふっと笑いがこぼれてしまう

カッコいい男になりたいか・・・きっとなれるよお前ならな!

その背中はそう思わせるには十分な可能性を感じさせる物だ

まだまだひよっこだと思っていたがなかなかどうして大きくなった

元は天才児と呼ばれていた男だ。本気になった今その手はきっと英雄にすら届く

それ程の可能性を感じる

そしてその男に頼られている自分を誇りに思う。俺はこいつのいう世の中の汚れには含まれていないと感じるからだ

その誇りは俺に力を与えてくれる。こいつに頼られていると思うだけで力が湧いて来る!

ああ、確かにこれは燃えるな。ふはは!こんな時だが、楽しくなってきた!














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