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楽しみにしていた筈なのに

「そういやこいつら寝てるけどお前の仕業?」


俺の護衛として付いてたゴブ太とエアは何故かコアルームで爆睡中である。

 カメラを見るとアーサーやローレライも、いや人型は殆ど寝てる様に見える。


「は、はい! どうせなら全員の共通認識にしておいた方がいいと思いまして・・・」

「ああそうか、確かにあれを見ておけばやる気は違ってくるだろう。やっちまったもんは仕方ないしな。でも後で謝っておけよ」


「はい、すいません・・・」


 ゴブ太たちを見るとすごいうなされているのが分かる。エアなんて泣いてるし、まあ俺も泣いてたけどな。

 あれを見せられるのは酷だとは思うが、あの結末を避けるためには必要な負荷だと思うしかない。

 予定ではかなりの苦行を強いる事になるしな。並のモチベーションでは付いて来られない可能性は高い。

 つらいが、見ておくべきなんだろう・・・


 それに、この後の事を考えれば寝ててもらった方が都合がいい。


「都合がいいとは?」

「ちょっと試したい事があるからな、ヒミカ達はあれからずっと戦っているのか?」

「はい、3人で回していますがずっと戦っていますね」

「そっか」


 カメラでヒミカ達を見るとまだ来た時のレベルのままだった。

 とりあえず今の時点でセーブしておく。セーブ2へ上書き。


 メニュー画面で時間を確認してみると俺が眠らされてから2時間は経っている。

 ずっと戦っているのならそろそろ誰かレベルは上がりそうなもんだが、人間はモンスターよりレベルが上がりにくいのかな?

 モンスターも大型種なんかは上がりにくいしな。そういうのは差はあって当然か。


 今からする検証の為にヒミカ達のレベルが上がるのを確認しておかないといけない。その時間までは待機だ。

 検証というのは色々あるが特に知りたいのはコンティニューで死に戻った際にそれを付与された者のレベルがどうなるのかだ。

 ヒミカ達は侵入者だが侵入者にもコンティニューは付与されているので検証対象としては問題ない。


 俺自身はレベルやスキルを引き継いで戻れるのは検証済みだ。

 DPは一割引継ぎだったっけか? 理屈上は死に戻りを繰り返せばどこまでもDPは増やせそうだがそれは後でもいいだろう。

 そういえばスキルと言えば


「DPやダンジョン内貨幣で得られるスキルはギフト能力とは別なのか?」


 これも聞いておかなければならない。覚えたものの使えませんでしたじゃ話になんないからな。


「それは問題ありません。他にもスキルオーブというスキルを覚えられるアイテムもあるんですが、これらはその者が持っている眠っている潜在能力を発掘する為の物で、なんというかきっかけを与える為のものなんです。ですから資質の無い能力は覚えられませんし、レベルの違いすぎる能力も覚える事は不可能です」


「ほうほう、つまり覚えても無効化される事は無いんだな?」

「そうですね。大丈夫です」

「ふむ」


 となるとスキルは覚えておいて損はない。

 今までは俺自身が戦う事は無いと思っていたけどあれを見た後じゃそんな甘い事は言ってられない。

 伸びる可能性がある部分にはすべて手を伸ばすべきだ。じゃないとあの脅威は抜けられない。


 習得可能なスキル一覧を見る。


 う~ん、どれにするかな?

 この後の事を考えれば察知(周囲の気配を察知する能力が上がる)とイーグルアイ(空からの視点で周囲を見る事が出来る)は絶対欲しいな。


スキル:察知とイーグルアイを習得。合わせて10000DP消費。残りDP91800


 こういうのだとよくあるパターンとして剣術や槍術、または魔法なんかのスキルがありそうなもんだが、そういうのは見当たらないな。

 それ系の能力というよりは技術カテゴリの物は実際に修練で覚えないとダメな感じなのかな?

 攻撃系のスキルで覚えられそうなのは投げとチャージくらいか。

 投げは多分前世で柔道やってた影響だろうな。チャージは分からん。


 これは必須という程でもないが一応習得しておく。

スキル:投げとチャージ習得。合わせて10000DP消費。残りDP81800

 うん、とりあえずこんなもんかね。


 準備を終えカメラを見ると丁度トラリとトラ蔵のレベルが5から6へと上がった所だった。うん、頃合いよし!

 後はマップをちょこっとだけ弄ってっと・・・さて、死にに行くか!


「え? 死にに行くって、何言ってるんですか?」


「ん? ああ、この周回は捨てる。自殺する事も考えたがそれだと無駄が多いからな。ついでに検証したい事もあるし外で死ぬ事にするよ。分かってると思うけど助けたりするのは無しな。これは必要な事なんだ」


「ええ! ちょっと待ってくださいよ!」

「だが断る」


 俺はさっさとダンジョン内転移で入り口へ飛びダンジョンの外へと繋がる階段を上っていく。

 制止はしていたが気持ちを察してくれたのかユズは追っては来なかった。ありがたい。

 ゴブ太たちも寝ててくれて助かった。あいつらは言っても追って来そうだからな。



 それにしても、初めて外へ出るのがこんな形になるとは思っても見なかったな。

 最初は確かノエルに止められたんだっけか?

 外にハンターが待ち構えてるから出るのは危ないですよってな、ははっ懐かしいなぁ。

 まだあれからひと月も経ってない筈なのに随分昔の事の様に感じるよ。

 あいつ今どこで何してんだろうな。早く帰ってこいっつーの!


 あの頃はいつの日か外の世界を旅してやるって思ってたもんだ。

 少なくとも目標の一つにはしていた。そのいつか来る日を楽しみにしていた。


 楽しみにしていた筈なのに・・・

 くそ! 何の高揚も感じねェよ! こんなの!



 今も階段を上りながら浮かんで来るのはどす黒い感情ばかりだ。

 ユズの前では立ち直った風を見せていたが実の所、怒りは全く収まっていなかった。

 深呼吸なんかであの怒りが収まるかよ! 収まってたまるか!


 あの映像を忘れるだと? 忘れられる訳が無い。一生忘れられねェよ・・・


 本来なら今死ぬべきでは無いのも頭では分かっている。

 同じ死ぬにしてももっとDPを貯めてからの方がいいし、他にもするべき事を済ませてから死んだ方がいい筈だ。分かってはいるんだ。


 でもダメなんだ・・・

 ふつふつと体の内側から黒いモノが湧き上がってくるのを感じるんだ。

 とても我慢できない。今すぐ何かにぶつけて発散しないとおかしくなってしまう。


 ああそうだ。検証とか俺自身が強くなる為とかもっともらしい理由を述べていたが本当の所は・・・




 俺は、この怒りを誰かにぶつけたいだけなのだ













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