自己紹介
「ほれ!お前ら挨拶しろ!」
「「は~い」」
ゴリにそう言われ元気に返事をする3人の姿はとても可愛らしく、とてもオッサたちが逃げ出すような悪童には見えない
まずはトラリという少女が前に出て礼儀正しく礼をした後 自己紹介を始める
「初めましてトラリと申します
山の町の大学に通いながら学費と生活費の為にこのクラン『ゴライアスの宿』でアルバイトをさせてもらっています!
将来はS級冒険者を目指していますが、理想にばかり走らず1つ1つ丁寧に積み重ねていく事が大切だと思っています
これからしばらくこのダンジョンでお世話になりますが挫けず頑張りますのでどうかよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしくな」
トラリは再度礼をして後ろへ下がる
なんかよくできた子だね。でもたぶんこっちは営業用の顔でさっきまでのが素だよな
二重人格かってくらい裏表が激しいな。こういう使い分けする人間はあまり好きではなかったりする
『マスターさん、トラリちゃんはとてもいい子ですよ!今のは初対面だから丁寧に挨拶しただけで仲良くなればもっと砕けた感じになりますよ。だから嫌わないであげてください』
うおっとびっくりした~!なんかユズが脳内に話しかけてきた
まあ人間なら多少の裏はあって当たり前でそんなので簡単に嫌ったりしないから安心してくれ
『そうですか?それならいいですけど仲良くしてあげてくださいね』
分かってるよ。なんて脳内会話している内に今度はトラ蔵がヒミカに押され出てくる
トラ蔵はいきなりでテンパってるらしく言葉が浮かんでこない様だ
そして5秒ほど無言が続いた後ボソッと
「トラ蔵です。よろしくです」
「ん、よろしくな」
と言葉を交わした後、目も合わせず下がって行った
どうもこの子は人見知りで初対面の人と話をするのは苦手の様だ
声も小さく、どもり声で普通の人間なら聞き取りにくいかもしれないが今の俺は多分ダンジョン内限定だが聴力がかなり発達しているので聞き取り自体は問題ない
性格もこういう暗い子は嫌いという人は多いが、俺としては八方美人で世渡り上手な人間よりもこの位の方が好感が持てたりする
今のところ俺の中の好感度はトラリよりトラ蔵が上である
『だからトラリちゃんはそういうんじゃないんですよ~!どうしてそう捻くれてるんですか!』
別に捻くれてないし今のはユズの反応が面白かったから言っただけ(心の中で)で深い意味はないから安心してくれ
『そういう所が捻くれてるんです!もう!』
ユズがプンプンしながら背中を杖でつついて来るがヒミカの挨拶が始まったので今はそっちに集中する
「ヒミカと言います!色々事情がありましてゴライアスの宿で住み込みで働かせてもらっています!
でも、いつまでも師匠たちに守ってもらう訳にいかないのでここで頑張って強くなりたいと思ってるっす!
そう、頑張って、強くなって・・・そして・・・」
あれ?固まってしまったぞ。この子は人と話すの得意な方だと思ってたんだが実はそうでもないのか?
というかなんか様子がおかしいぞ。目の焦点が合っていない気がする
どうしようか?とりあえず固まったまま放置するのはかわいそうだよな
固まってしまったヒミカに言葉をかけようとしたその時、ゴリがスッと手を前に出し俺を制した
「ヒミカ」
そしてゴリはヒミカに対し優しく声をかける。なんだろうかこの感じは
切ない。胸が締め付けられるような、そんな感じがする
「すまんな、こいつはちょっと訳ありでな。すぐに立ち直ると思うから待っててやってくれ」
「ん?ああ、分かった」
一体何なんだろうか?俺の後ろにいるユズも気が気では無い様だ
そういえばユズはずっと俺の後ろに隠れている気がする
何かこの事と関係あるのだろうか?あるのだろうか?
『うう、すいません。それはお話できないんです・・・』
むう、気になる・・・があまり詮索するのもよくないか
少し待つとゴリの言葉通りヒミカは立ち直った様だ
「うう、お見苦しい所をお見せしましたっす」
「ん、もういいから下がってろ」
「はいっす」
ゴリに言われ下がるヒミカ
最後に俺の方を見てペコリと礼をしてからゴリの後ろに下がっていった




