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◆土鏡陽平

めちゃくちゃ久しぶりです

しかも久しぶりの話がダンジョン外の話という・・・

この世界では基本的に体が大きい者程力は強い

ランクやレベルアップ時の身体能力の向上が大きい為、高ランクになれば誤差程度のハンデに過ぎないが大半の低ランクの者にとっては体格差というものはくつがえしがたいハンデであろう


事実 格闘技の大会でもランクと体重別で分けられているが、低ランク帯の大会では細かく高ランクの大会では大雑把に分けられている

高ランク帯では無差別級一択という大会もあり、一部競技者から改善を求められているが高ランクの人間は絶対数が少ないのであまり分けると大会自体成り立たないという理由からその意見が受け入れられる事は無い様だ


一口に格闘技と言っても様々な物がある。また、同じ格闘技内でも幾つかの団体に枝分かれしておりそれぞれにチャンピオンと呼ばれる存在が居る

その為例えチャンピオンになっても安易に最強などは名乗れないし、一般人からすれば名前も知らない程度の知名度である事が普通である


だが現在そんな格闘技界に最強と呼ばれる男が存在する

打・投・極・さらに魔法の使用までも許される総合格闘技

あらゆる格闘技の中で最もルール制限の少ない競技である

そしてその男はその総合格闘技において長年最高ランク(ランク9以上)のチャンピオンに君臨する男である


男の名は土鏡つちかがみ陽平

陽平は格闘技選手だった両親から優れた体躯と運動能力を受け継ぎ、幼い頃から両親やその関係者から英才教育を受け育ったいわゆるエリート2世選手である


両親は共に一流と呼べる選手であったが、王座という夢には手が届くこと無く現役を退いた

陽平はまっすぐな人間であり、両親が叶えられなかった夢を自分が叶えてやるんだという気概を持っていた

俺がチャンピオンになるんだ!俺がやらなきゃ誰がやるんだ!と幼いながらに心を奮い立たせ過酷なトレーニングにも弱音を吐かず己を鍛え続けた


小等部、中等部、高等部、プロと

陽平はあらゆるタイトルを総なめにし、そして25歳の時ついに念願の総合世界チャンピオンとなる

それ以来11年間負け無し。今ではまさに絶対王者と呼べる存在となっていた


本来格闘技という競技はあまり稼げない

プロとはいっても大会で得られる賞金などは雀の涙程度である

競技にもよるがチャンピオンでさえ普段は普通の会社で働いている者が殆どだ


中には自分で道場を起こしたり定期的に教室を開いたりする者も居るが、これにはある程度その競技において成績を収める必要がある上に稼ぎとしては微妙な場合が多く、やはりそれだけで食べていくのは難しいとされている

基本的には他の仕事と併用しながら続けて行かなければならない過酷な割にあまり報われない競技と言えるだろう


だが得られる物はほぼ名誉だけという過酷な競技性にも関わらず、不思議と人気のある競技でもあった

人気の理由として冒険者というそれを必要とする人間が多いという理由を挙げる者が居るが陽平は違うと思う

金では得られない確かな充実感がそこには存在するのだ

特に男はそういう物を求めて生きて行く生き物だと陽平は思っている



「もう!パパはすぐそうやって男は男はって女を差別する!そういうのやめてよね!」


そういうつもりは無かったのだが、「男は」というキーワードに過敏に反応を示す娘の響はご立腹だ

響は我が娘ながら素晴らしい才を持っているが、幼い頃から俺と比べられて育ったせいか競技としての格闘技にはあまりいい思い出は無い様だ

格闘技のトレーニングは続けてはいるが将来は格闘技選手では無く冒険者になりたいと言っている


冒険者は危険な職業ではあるが、まあそれはいいだろう

響には響の人生がある。俺も無理に格闘技選手になってもらおうとは思わないし、響が冒険者になるのを止める気も無い

俺の子だけあって強いしな!これで男に生まれていればと・・・

ああ、睨んでるな。今の無し!今の無しだ!元気に育ってくれて父さんは嬉しいよ!



響がランク2になったのは高等部を卒業する直前の事だった

正直一流を目指す者から見れば遅すぎる進化と言える

俺なんかは小等部の頃にランク2への進化は済ませた物だ


これには理由がある。響は活発な子ではあったが格闘技を始めたのは小等部高学年になってからなのだ

俺は自身が格闘漬けの人生を送っていた事もあり(嫌では無かったが)娘である響には自由に生きてもらいたいという気持ちが強かった

だからトレーニングなどは強制した事は無かったし、妻もその教育方針に反対はしなかった


だが、俺の考えが甘かったのだろうか

響が小等部4年生になると怪我をして帰って来る事が多くなった

それも巧妙に隠された怪我だ。傷の目立つ顔などは殴らず腹や足などに複数の打撲の跡が残っていた

つまり、響はイジメを受けていた


これは見過ごせないと思い俺は響を問い詰めた

しかし響は「何でもないよ」と強がって見せる。目に涙を溜めながら・・・


後で分かった事だが響は友達の七海ちゃんという子がいじめられてるのを見てクラスの不良に立ち向かったというのだ

そして返り討ちに会い、自分もいじめられるようになった

七海ちゃんも響も器量がいいからな。不良どもから見ればいじめの格好の的だったのだろう


俺はどうしていいのか分からなかった

俺や妻が出て行って学校側に相談するか?

だが、それでは根本的解決にはならない気がする。見えない所でいじめを受ければ一緒だろう

下手をすれば今よりいじめがエスカレートするかもしれない。どうすればいいのか・・・



正直この件に関しては俺の考えが甘かったと思う

世の中、力の無い者に対してはとことん残酷になれる者が存在するのだ

生きて行く為には戦う力が必要だ


俺は響と七海ちゃんに格闘技を教える事にした

彼女たちが不良どもより強くなればいじめを受ける事も無くなるだろうとの考えだ

暴力には暴力で対抗だ


こういう話になると平和的に行こうとか話せば分かる的な事を言う奴が居るが馬鹿かと思う

部外者だからそんな甘い事が言えるのだ

もし自分や自分の子供がいじめにあっても同じ事が言えるのなら大したものだ

俺はそこまで大人では無い。正直言えば俺自身が出て行ってぶちのめしてやりたい位には頭に来ている


だがそれではダメだろう。何故ならこういう事は何度でも起こり得るからだ

俺の体感ではいじめっ子というのは1クラスに1人は必ず居る

いや、それどころか大人になってからもそういう事の無い環境の方が珍しいだろう

人間とは基本的に醜い生き物なのだ


今回俺が出て行って解決したとしてもまた同じ様な事が起こる可能性は高い

毎回俺がイジメに気付けるとも限らないからな

自力で解決できる様に戦う力を身に付ける必要があるだろう




















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