あの世
目が覚めると知らない部屋の中だった。
なぜここに居るのか思い出せない。だけど・・・
記憶には無いが ここには何度も来たことがあるような・・・そんな気がする、デジャブってやつか?
「やあ、気が付いた?」
声のする方を見ると七福神の恵比寿天に似たふくよかなおっちゃんが居た。
一見ただの太ったおっちゃんに見えるが、なんというか不思議な迫力がある。歴戦の兵って感じだ
おれがその雰囲気に対し緊張していると、それを察したのかおっちゃんは表情を崩し優しい口調で話を切り出した。
「緊張しなくてもいいよ。いろいろ混乱してるとは思うけど順に説明していくから落ち着いて話を聞いてほしい」
「あ、はい!」
確かにここはどこ? 俺は誰? 状態だ
話には聞いた事あるけど まさか自分がそうなるとは・・・
正直色々不安だが おっちゃんは頼りにしていい気がする。
覚えてないけど、おっちゃんとは何度も会ったことある気がするんだ。ここは真面目に話を聞こうと思う
「まず最初にだけど、君の生前の記憶は少し消してある」
生前ってことは俺はもう死んでるのか。
普通なら疑ったり驚いたりするのだろうが俺は意外と落ち着いていた。
と言うのも言われて思い出してみれば死の瞬間は思い出せないが確かに俺は死んだ・・・という記憶があるのだ。
それにこの部屋も普通じゃないんだよな。
何が? とはうまく言えないが異次元に迷い込んだ様な、この部屋が宇宙空間に浮いてる様な、ふわふわした現実味の無い感じがするのだ
きっとここは「あの世」ってやつなんだろう・・・
おっちゃんは俺が落ち着いているのを見て安心したのか、ほっとした表情を浮かべ続きを話し出した
「本来なら記憶は全て消してリセットするんだけど今回君の転生する種族は特殊でね、ダンジョンマスターって分かるかな?」
「な、なんとなくは・・・」
そのまんまの意味だよな? たぶん
ダンジョンを運営する、とかそんな感じの筈だ。
それに転生? 生まれ変われるのか!
てっきり死後の世界の案内人かと思っていたが俺はここで終わりじゃないんだな! おお! 一気にテンション上がって来た!
「そうか、それなら話は早いね。
君にはこれから そのダンジョンマスターになってもらう訳だが、その場合記憶を全て消しちゃうと生きていけないだろう?
だから少し残してある」
まあ記憶全部消されたら赤ちゃん状態だもんな。そりゃ生きていけないわな
記憶を消されたことについても怒りは感じない。テンション上がってるせいもあるかな?
おっと! 浮かれて話を聞き逃さない様にしないとな!
「それでだ・・・能力の説明はここでしても多分覚えきれないと思うから向こうで実戦で覚えてほしい。」
ゲームとか説明書読まずにやりながら覚える派だなこの人。
俺も今説明されても覚える自信は無いので うんうんと頷いておく
「向こうへ着いたらメニュー画面が開ける様になってるから分からない事があったらメニューの検索で調べるといいよ」
う~ん、またツッコミたいワードが出てきたぞ
でもちょっと面白そうだな。恐らく生前ゲームが好きだったんだと思われる
「では次に先天性スキルを選んでほしい。このカタログを見てもらえるかな」
そう言って1000ページはありそうなゴツイ カタログを渡された。重っ!
スキル? はいいとして先天性ってことは才能の様なものか?
これは真剣に選ばないとな!
もうやる気になっている俺は乗せられやすい性格をしている様だ
「Aのスキルならひとつ Bならふたつ選べるよ。制限時間は5分! オーバーしたらランダムに選ぶからね。はいスタート!」
「え?ちょっとまっ・・・」
「待ちません」
まじか! このゴツイカタログを5分で見るの不可能だろ!じっくり見て選びたかったのに! くそ~っ!
ぐお~! どうする? どれにする?
心の準備出来てないのにいきなり制限時間とかやめろや!
「30秒経過~♪」
うるせえ! こいつ絶対楽しんでるだろ!
カタログを見るとスキル名とその効果が簡略に書かれている様だ。1ページに付き10個くらいか? とても全てを見る時間はない。
「ちなみに~」
なんか言ってるけど無視! 気が散る! もう細部まで見るのは諦めて流し読み
スキル名とフィーリングで決めることにした
そしてパラパラとページをめくっていくとあるスキルが強烈に俺の目を惹いた
Aランクスキル『コンティニュー』
効果 死んでもセーブポイントからやり直す事ができる