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「思い出の実体験がないんだったら、作ればいいんだよ」
カナが言った。
僕らは毎日、必死に遊んだ。
…その甲斐があったのか、僕は、今のカナがだんだん好きになってきた。
「私も」
笑顔でカナが言った。
放課後。
いつものように街をぶらぶら。
「今日はなんだか気分がいいなあ」
カナが言った。
「どうして?」
「好きな人と一緒だから」
もう、戻ったんだな。カナが。
道の向こうに、同じくらいの歳の女の子が立っていた。
「…わ、私だ」
カナが言った。
「えっ?」
僕はその娘を見た。
背も顔も全然カナじゃなかった。
でも、彼女がカナなのは、僕にもわかった。
「久しぶり、トオル」
彼女は僕にキスした。