第5話 まさかのラ○ュタ?!
一昨日の分です。
六十層に現れた階段を下った黒人たちの目の前に有ったのは、THE 城と言った感じの巨大な城だった。
その城は、高さ60mほどでとてつもなく広そうだった。
階段が城のある地面まで伸びているようなので、とりあえず地面へと降りていく黒人たち。
黒人たちがへ入ると、突如として声が聞こえてきた。
『ようこそ、ボラル・シュロスへ。《蒼宝の鍵》の所持を確認しました。玉座の間への転移を開始します』
「はっ?!」
なんだそりゃ、と続ける間もなく黒人の足下に魔方陣が浮かび上がり、一瞬にして転移させられた。
残されたヴォルフは、「クゥン?」とただ鳴くことしか出来なかった。
† † †
玉座の間とやらへ転移させられた黒人は、黒一色の椅子に座らされていた。
『《蒼宝の鍵》を目の前の鍵穴に差し込んで回してください』
「鍵穴……?」
黒人が辺りを見回すが、鍵穴らしきものなどどこにもない。
と、黒人の目の前に鍵穴が出現した。
黒人は、倉庫から中ボスっぽいのを倒したときに出てきた、蒼い宝珠のはまった大きな鍵を取り出した。
黒人が今まで手に入れた物の中で、鍵と呼べるのもはこれしかなかった。
『ボラル・シュロス本体の解放を確認しました。これからよろしくお願いします、我が主』
「何がなにやら、訳が分からん、説明しろ」
鍵を差し込んで回すと、謎の声にマスターと呼ばれて混乱する黒人は、説明を要求する。
まぁ、それも無理はないだろう。
『了解です。さしあたって、申し訳ないのですが私の体を出して頂きたいのです』
「は? 体を出す?」
『はい、格納庫には案内しますので』
謎の声がそういった瞬間、またしても黒人の足下に魔方陣が浮かび上がり、黒人をどこかへと連れ去った。
† † †
連れ去られた黒人は、地面を感じて目を開けた。
その目に映ったのは、全く同じ顔、体型、服装の少女が何体、何十体と置かれている正に格納庫と言った様子だった。
『我が主、そこら辺の体を持ってきてそこのコードに繋いでください』
「あ、あぁ」
黒人は少し不気味に思いながらも、言われた通りに少女を運び、コードに繋ぐ。
因みに、少女の服装は綺麗な青のドレスだ。
コードに繋がれた少女は、ビクンッと衝撃が走ったかのように一度震えると、綺麗な青の目を開いた。
彼女は少しキョロキョロと回りを見回すと、黒人の目をしっかりと見据えた。
そして数回瞬きをすると、立ち上がり、華麗に一礼をして見せた。
「始めまして我が主。私はボラル・シュロス本体の管理用人工生命体、アリーシャです」
「おう、よろしく?」
「よろしくお願いいたします。して、説明をご所望とのことでしたが、何をご説明致しましょうか」
「その前に、さっきの玉座の間に戻って、ヴォルフを呼んでくれ」
「かしこまりました」
今度は黒人とアリーシャの足下に魔方陣が浮かび上がり、二人を玉座の間へと転移させる。
そこには、ヴォルフも居た。
「では、説明を致しましょう」
「俺が聞きたいのは、これは何なのかと、どうやって作られたか、だ」
「かしこまりました。まず、この城はボラル・シュロスと言って、浮遊城です。どうやって作られたかは、私を作った人が同じようにこの城をお作りになられました」
「一人で作ったのか?」
「えぇ、お一人で。私を作った人は、それはもうすごい方でした」
「作った理由は?」
「趣味、と申しておりました」
「趣味、趣味か」
「はい。他に何かございますでしょうか?」
「本体ってことは、他にも似たようなのがあるのか?」
「ございます。ボラル・シュロスは本体の他に、倉庫、闘技場、研究所、治療院、防衛所の五つがあり、我が主は既に倉庫と治療院、防衛所の三つの所持権限がございます」
「なに?」
「我が主から、|《貪り食う者》《グレイプニル》と|《悲哀の鞭剣》《ブリュンヒルデ》、|《神盾の宝珠》《アイギス》の反応を感じます。それぞれ倉庫、治療院、防衛所の所持権限をもたらすものです」
「そう、か。この城は飛べるんだよな?」
「はい、可能です。飛びますか?」
「あぁ、頼む」
「かしこまりました」
そう言ってアリーシャは、黒人に一礼すると、何だか分からないウィンドーを開きだした。
ウィンドーには、何かの数字や文字が書かれていたが、黒人にはなんのことやらさっぱり分からなかった。
「魔力供給安定、座標位置設定、完了。魔方陣生成開始。魔方陣生成28%、36%、45%、52%、68%、74%、89%、96%、100%。転移、開始します」
アリーシャが静かに告げる。
すると、空気がビリビリと振動し出した。
「衝撃に備えてください。転移します」
「は? っ?!」
アリーシャの警告むなしく、黒人とヴォルフは宙を舞う。
壁に打ち付けられたり、床に叩きつけられたりしながらも、やっと落ち着いた。
「痛てててて」
「大丈夫てすか? 我が主」
「あぁ、大丈夫だ」
「そうですか。転移は無事、成功いたしました」
「そうか、外に出してくれ」
「了解です」
再度、黒人とヴォルフ、アリーシャの足下に魔方陣が浮かび上がり、二人と一匹を転移させる。
一瞬の浮遊間の後に、城の外に出た一人と一匹は、言葉を失う。
目の前に広がるのは、壮大な世界。
大地は地平線の向こうまで広がり、空は限りなく青かった。
太陽はキラキラと輝き、世界に恩恵をもたらす。
「すげぇ……」
「ウォン……」
そうして一人と一匹は、アリーシャに声をかけられるまで、我を忘れて目の前の景色をずっと見ていた。
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