第4話 迷宮入りて踏破する③
三十八層で冒険者パーティと接近、戦闘、殺害した黒人とヴォルフは、更に下層へ進んでおり、今居るのは四十層だった。
出てくる魔物のパンバリエーションも富んできていて、黒人とヴォルフの戦闘経験値的にも、万魔殿的にもウハウハな感じになっていた。
「もうちょっと、歯応え欲しいよな」
「ウォフンッ」
ヴォルフも全くその通りだ、とでも言うかのように頷いていた。
「おっ、階段だ。行くか」
「ウォン」
下層への階段を発見した黒人は、ヴォルフと共に下っていった。
ーー《魔狼の森》第四十三層ーー
四十三層まで来ると、出てくる魔物が連携するようになってきて、少し歯応えが出てきていた。
まぁ、少しには変わりないが。
「連携の練習するぞ、ヴォルフ」
「ガウッ」
連携と言っても、ヴォルフの影から黒人が隙を見つけて攻撃するだけなのだが。
ーー《魔狼の森》第四十七層ーー
ここからの説明は簡単に行こうと思う。
まず、鞭剣での攻撃が防がれるようになった。
次に、魔物が武器を使ってくるようになった。
おそらく殺した冒険者の物なのであろうが、武器を使う程度の知能はあると言うことだ。
ーー《魔狼の森》第五十八層ーー
ここまで来ると、黒人の鞭剣が避けられるようになってきた。
黒人の技術が拙いのもあるのかもしれないが、弦と併用で戦わなければ高確率で避けられるようになってきていた。
それでも苦戦するほどではなかったが。
ーー《魔狼の森》第六十層ーー
黒人とヴォルフは今、ボスっぽいものと対峙していた。
それは、三つ首の狼で体はヴォルフよりも大きかった。
三頭狼は、巨体に似合わず動きが素早くて、ヴォルフも捉えあぐねていた。
「あぁ! うっぜぇ、死ね!」
デカイくせにチョロチョロと動き回る三頭狼に業を煮やした黒人が、|《火槍》《ファイアランス》を100ほど乱発しまくった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!!
と轟音をたてて一斉に発射されたそれは、ダンジョンの地面を抉り、濛濛と煙が立ち込める。
煙が晴れた場所に立っていたのは、右前足と一番右側の首を失った狼だった。
足と頭を一つずつ失ってバランスが取れないのか、先程までとは打って変わって動きの精細さを欠いていた。
そのため、捉えるのも簡単だった。
「捕まっとけ! |《束縛する闇》《ダークネスバインド》!」
|《束縛する闇》《ダークネスバインド》に捕らわれた三頭狼にヴォルフが駆ける。
三頭狼の一番左の頭が口を開き、ヴォルフに向かって雷を吐き付ける。
しかしヴォルフは自身の角に雷を落とすと、そこから三頭狼の雷に向かって自分も雷を発した。
ヴォルフの雷と三頭狼の雷が互いに打ち消し合う。
バチバチバチバチィィッと雷が爆ぜる音を轟く中を、ヴォルフが上空に飛び、回転しながら前足を三頭狼に叩きつける。
頭を地面にめり込ませて気絶している三頭狼に、《朱と黒の王》を発動した黒人が禁呪を叩き込む。
「死んどけ、|《死者の呼び声》《ムエルテ・リャボス》」
黒人の周囲に浮かぶ100枚ほどの魔導書の紙が一気に黒に染まると、跡形も残さずに、まるで最初からなかったかのように、消え去った。
すると三頭狼の足下に黒い魔方陣が浮かび上がり、その魔方陣から黒い小さな手が無数に出てきて、三頭狼の体に纏わりついた。
全身をくまなく黒い手に包まれた三頭狼が突如として苦しみ出す。
「ガァァァァァッ、グ、グルゥゥゥッ、グガァァァッ!」
あまりの苦しみ様に驚いていた黒人が唖然としていると、急に静かになったかと思うと、黒い小さな手がシュルシュルと魔方陣に戻っていき、後には三頭狼の死体だけが残った。
三頭狼の死体を火弾で燃やすと、1つの宝箱と更に下層へと伸びる階段が出現した。
宝箱を開けてみると、甲の部分に藍色の宝珠が埋め込まれた手袋と1枚の紙切れが入っていた。
どうやら紙切れには、宝珠の埋め込まれた手袋の説明が書かれているようだった。
|《神盾の宝珠》《アイギス》と呼ばれるそれは、LV.4までの全属性の魔法を無効化して打ち消す障壁を張るのだそうだ。
黒人はそれを右手にはめると、階段に向かって歩き出した。
† † †
「何だよ、これは……」
六十層にあった階段を下った黒人たちの目の前に有ったのは、THE 城と言った感じの巨大な城だった。
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