第2話 迷宮入りて踏破する①
短いかな?
ギルドの受付嬢にダンジョンの場所を聞いた後、ヴォルフと合流してその背に跨がり、北にある《魔狼の森》に向かっていた。
本来なら1日かかるところを、ヴォルフの足のお陰で半日で到達した。
ダンジョンの入り口は正方形の箱に階段が下に向かって伸びていた。
幸い回りには冒険者は居らず、ダンジョン内で夜営するつもりなのでそこら辺の木の枝を切り落として、薪にして倉庫に放り込む。
「じゃ、行くか」
「ウォンッ」
黒人の言葉にヴォルフは元気よく吠えて、その後をついていく。
入り口となる階段はヴォルフが通れるほどの広さだった。
† † †
ーー《魔狼の森》第一階層ーー
ダンジョンに入ってから数十分。
黒人は退屈していた。
それと言うのも、ヴォルフが来る魔物の全てを瞬殺してしまうので、黒人の方に魔物が全く来ないのだ。
その上、ヴォルフは魔物を殺したあと誉めてほしいのか、擦り寄ってくるので、叱ることも何だか違うような気がしている。
しかし、ここへはし実戦のために来ているので、黒人が戦わなければ意味はない。
「おい、ヴォルフ。ここへは実戦のために来てんだ、俺に殺らせてくれ」
「クゥン」
「怒ってんじゃねぇよ」
「ウォフッ」
と言うようにしてヴォルフに瞬殺を止めさせるようにして、黒人が前に立つ。
このダンジョンは《魔狼の森》と言うだけあって、狼系の魔物しか出現しない。
そもそも、ダンジョンの魔物は一番最下層の部屋にあるダンジョンコアが自動的に外から転位みたいな形で連れてくるのだ。
ダンジョンによってある程度魔物の出現傾向は変わるが、このダンジョンの様に特定の系統の魔物しか出現しないのは珍しい。
ーー《魔狼の森》第五層ーー
ヴォルフに瞬殺をやめさせて自分が戦うようにしていた黒人だったが、いかんせん敵が弱すぎて瞬殺だったので、下へ下へと下りてきて、只今第五層。
ここでも瞬殺だ。
「あー、またか」
「「「グルルルルゥゥッ」」」
さっきからやたらと魔物が多くなってきたのだ。
瞬殺には変わりないので、どうと言うことはないのだが。
「《裂くは烈爪》」
操弦術LV.4で習得可能な技、《裂くは烈爪》。
縦横無尽にダンジョン内を駆け巡る弦が、三匹の一角狼を木っ端微塵に切り刻む。
断末魔の声をあげることすら叶わずに絶命した一角狼に目を向けることすらせずに先に進む。
技と言うのは、剣術や投擲術と言った何か武器を扱う際の行動の熟練度に合わせて使えるようになる技の事で、この場合の熟練度と言うのはLVの事である。
「はぁ、先進むぞ」
「ウォンッ」
元気よく吠えるヴォルフと共にさらに階下へと進んでいく黒人だった。
ーー《魔狼の森》第二十五層ーー
現れる魔物の全てを瞬殺してきた黒人たち一人と一匹は2匹ににまで到達していた。
ここまで来ると、出てくる魔狼にもバリエーションに富んできていた。
一本角の狼、二又の狼、双頭の狼、脚が異常発達した狼、二足歩行の狼等々、瞬殺に変わりはないが|《万魔殿》《パンデモニウム》に記録された魔物の数が増えてきていた。
「さて、なんか眠くなってきたな。飯食って寝るか」
「ウォン」
倉庫から取り出した薪を積んで、|《弱火》《ロゥヒート》を発動して火をつける。
弦を網目状にして、その上に一角狼の肉を乗せて焼き、ヴォルフには生の肉を放る。
「ウォンッ!」
放られた肉にがっつくヴォルフを見ながら、網の弦の上の肉をひっくり返す。
焼き終わった肉を弦に突き刺して、湯気が立ち上って肉汁がタラタラ垂れている肉をほうばる。
口に入れた瞬間とろけるような食感と溢れる肉汁に思わず顔を綻ばせる。
「ふぅ、食った食った」
「ウォフッ」
数枚の一角狼のステーキを食べ終わった黒人は、ヴォルフに火の番と新張を頼んで就寝するのだった。
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