表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

七美の章 3

スーパー「ナナマル」は俺たちの命の綱の一つだ。

それがどのような原理で動かされているのかは知らないが、とにかく食料が切らされることは全くない。どんなに持っていっても、次の日にはすべて補充してあるのだ。普通のスーパーマーケットであれば当たり前のことではあるが、店員不在のナナマルではそれは異常なことだ。初めてそのことを知ったときはかなり疑問に思った筈であるが、なぜだろう、今となってはそんなことはどうでもよくなってしまった。

「七美君のおつかいかね?」

惣菜パンコーナーにやってくると、メガネをかけた男が声をかけてきた。山崎望。ひょろりとした体つきとその知的な顔つきは、俗にいう秀才的雰囲気を持っている。彼がなぜここに来たのかは知らない。何度か聞いてはみたものの、全く教えてくれなかった。

「山崎も買い物かい?」

「そういったところだね。暇つぶしも兼ねて物色してたのさ。」

君に会えてよかったよ、と山崎は微笑んだ。正直気持ち悪い。

山崎はおもむろにクリームパンを手に取り俺に下投げで渡した。

「七美君が好きなパンだろう?」

「そうなのか?」

「そうともさ。」

僕にはわかる、と山崎は微笑みつつも何故か誇らしげにしていた。やはりコイツはどこか不気味だ。優しいことに間違いはないはずなんだが、そもそもコイツは犯罪者だ。この優しさはどこから出てくるのか?

優しい人間というものは、怒ると豹変するとも言うが、実際のところはどうなのだろう。

「?…どうしたんだい?」

「……」

山崎の問いかけに答えずに彼の瞳を見る。まるで、吸い込まれるかのような眼。眼。眼。眼。眼。

そのうち眼しか見えなくなるかのような錯覚に見舞われる。二重にも、三重にもなってそれは見える。ある種の恐怖のような。

「…金井君?」

「…あぁ。すまない。」

山崎の声で目が覚めたかのように全体が見える。

「金井君、大丈夫か?」

「…大丈夫、だと思う。」

とてつもなく張り詰めていたのか、激しい運動をしたあとのように息苦しくなってくる。

「金井君、手」

「…え?…あ。」

そこで気づく。俺はいつの間にか力が入ってたのか、手元のクリームパンが潰れていた。まるで、雑木がつぶれているかのように。血肉が、血肉が、血肉が血肉が血肉が血肉が血肉が血肉が血肉が血肉が

「金井君!」

「…………」

いや、これはクリームだ。これは違う。

動悸が激しい。息苦しい。かがんでしまう。

吐きそう。

「落ち着くんだ、金井君。」

「…すまない」

結局、収まるまでは30分ほどかかってしまった。突然起きたことなので、動揺を隠せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ