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天使伝  作者: HAIRU
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第一話 白の男

この小説には性的及び暴力的表現が含まれます。閲覧には充分注意してください。


首都東京


郊外にある進学校の教室の中茹だるような暑さにあみはやられていた。


まだ6月下旬

公立の為にクーラーの使用は制限されており、教室内は地獄と化していた。


「お前ら〜授業中だぞちょっとは起きろ」



「う゛う゛う゛死ぬ」

「まっTクーラーはー!!!」

「未来ある若者を殺す気かあっ」


まっTと呼ばれた中年教師は

自らも大量に汗を流しながら喋っていた



「ったく元気じゃねえかお前ら。


ほら次中田読め」



「えぇーなんであたしー」

机に突っ伏していた女子生徒はだるそうに顔を上げる


ピンクブラウンに染められた長髪を、くるくると指に絡めながら教師を睨み付ける



中田亜未-ナカタアミ-



は気怠そうに教科書を読んだ



読み終えるとあみは再び机に伏せた


空は快晴

生温い風が窓から吹き込む


街はいつもと変わらない時を刻んでいた










太陽が沈み辺りが闇に包まれた頃


校内にはひとつの影



「も〜っケータイ忘れるとか信じらんない!!!!てか暗いんだよーっ!!!!!」



膝上20cmまで切られたスカート

第2ボタンまでぱっくり開いた指定外のピンクのシャツ

ニーハイを履いた細い足


普段通り進学校の生徒とは思えない格好で、あみは廊下を走っていた


進学校と言っても勉強以外には干渉しない学校なだけあって、生徒はかなり自由な異装に身を包んでいる



「あったー」



ふぅと息をつき

教室から出る



「………」



「えっ?!!!」



かすかな声が聞こえた



「うそでしょちょっと…むりむりむりむり!!!!!」



あみの顔からサッと血の気が引く



「資料室からだ…どうしよお」



そっと近付くと電気がついている事に気付きほっとする



「はっ…んぁ…」



どう考えてもおかしい声と息遣いが聞こえてくる



「学校でヤんなっての」



眉をハの字に下げてあみは呆れた



「…だれかな」



そろそろと摺り足で資料室の前まで行き


ドアの硝子張りの部分からそっと顔を出す



「っあ…はぁっんっ…」



顔がよく見えない

さらに顔を出そうと曲げてた腰を伸ばす



ガシャッ



勢いよく落ちたケータイの音に行為を楽しんでいた男はこちらを見る



「あっ…」







「はぁっはぁっ…ヒック…うぅヒック…う〜」



人通り少ない小道についたあみはその場にへなへなと座り込む



「うぅー」



教室で淫らな行為をしていた少年には見覚えがあった


茶色の長くサラサラな髪

柔らかいねこっ毛なそれはいつも軽く寝癖がついていて、そこがまた自然なボリュームを生んでいた

切れ長な一重に薄い唇

細身ながらもがっしりした体



一瞬で誰だかわかったあみはすぐにその場をかけだした



工藤祐希-クドウユウキ-


あみの元彼

祐希とあみは中学2年から高校1年の5月、つまりつい先月まで付き合っていた

しかし中学の頃から人気があった祐希、高校入学とともに距離が広がり、あみから別れを切り出した


それ以降幾度となく女の噂は聞いていた



まだ未練のあるあみにとっては一番見たくなかった光景



「ふ…ヒック…」



落ち着いてきたあみは手の甲で顔を拭い立ち上がる



力が抜けるようにふらふらと体が倒れて行く



それを腕が伸びてきてぐっと止めた



「へっ??」



振り向くとあみは目を丸くして口をあけた阿呆な顔で固まる


160cmに満たないあみから頭3つ分は飛び抜けた長身


白いマントにスーツ

肩につく長い金髪が夜風になびいて光る


高くスラッとした鼻

白い肌

優しいタレ目



思わずじっと見つめてしまう


ふっと優しく笑いかけられると、顔が真っ赤に染まってしまう



「あ、あのありが…」



「やっと見つけました」



「え?」



ふわっと体が浮いたかと思うとあみは男にお姫様抱っこされてしまう



「ひっちょっおろしてよ!!!!」



バタバタと暴れるが男にぐっと押さえ付けられてしまう



「大人しくしててください」



そう言うと男は走り出し、近くの空きビルをかけ上がる



「ちょっと!!!!おーろーせーっ」



ぐっとあみが体を反らせると階段を登っていた男はバランスを崩す



「わっ暴れないでください」



腕が緩んだ隙をついてスルッと抜け出したあみは、すごい勢いで階段を登る



「…まったく、昔からあなたは変わらない。こまった人ですね」



男はふっと口の端をあげあみを追いかけた



「ひえええええええええついてくるううううっ」



女とは思えない速さで階段を2段跳ばしでだかだか登る


屋上のドアが現れたがなかなか開かない


カツン…カツン…

音はゆっくり近付く

何度ノブを回しても鍵のかかった鉄の扉は開かない



「あけっあけっ…うー…あけ!!!!!!」



カチャ



「わあっ」



何の前触れもなく開いたドアに体は持って行かれて前のめりになる


汚れたコンクリートに包まれた屋上は古く錆つき、柵もない



「きちゃうきちゃうっ」



怖々身を乗り出して下を見るとその高さに目眩がした


「飛び下りたら…死ぬよ、ね」



ここは6階建てビルの屋上、軽く10mは超えてるだろう

遥か下にトラックが止まっているが、この距離の衝撃を吸収するかは不安なところだ


あははと不器用に笑いとばすが、どうしようもない



「やはり身体能力の良さはこちらにきても健在ですね」



ばっと振り向くと男がやれやれといった様子でこちらに近付いてくる



「く、くんなっ変態!!!!」



「変態とはひどいですね」



「じゃあどこのコスプレまにあだよっあたしに何の用なのよ!!!!!」



「コスプレ…気の強さも変わりませんね、そうゆうとこが好きですけどね」



にこっと笑って言う男にあみはまたもや顔を染める



「うっるさい!!!だまされないからね!!!てか変わるとか変わらないとか何なの!!!!」



じりじりと言いよる男を避けようとあみは後退していく



「言ったでしょう。迎えにきたんですよ…っと、落ちますよ」



「へっ…あ!!!!!」



踵の支えを無くしたあみの体は中に浮き急降下する



「きゃああああああ」



…ーこんなところで死ぬのかな、これじゃまるで祐希のせいで自殺したみたいじゃんか…そんなの、そんなの…



「いやっ!!!!!!!!」


強く叫んだその瞬間あみを取り囲む白い光り、しかしそれはあみを包み込むとそのまま消えてしまった



「今のは…まさか力を戻したのか?まさか…そんなはずないですね、さて行きますか」



男はトンと地を蹴り屋上から飛び下りる

が、すぐにその姿は闇に溶けた



空には満月が光り輝いていた





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