第6歩:今日も屋上は良い天気だった・・・。
気まずい・・・。
昼食に屋上へと誘ったのはいい。
それはいいんだよ。
だが、それ以外は完全にノープランだった。
彼女を理解しようと思ったし、そういう態勢になってはいたんだが、考えてみれば俺と彼女には共通の話題がない。
それ以前にあるかどうかも謎で・・・。
そうなってくるとだ、屋上に着く、座る。
そして弁当を広げる・・・食う・・・しかなくなってしまう。
よって現在は互いに無言。
ダイは当然、ケイスケも話題を振ってこようとしない。
ケイスケに関しては、ワザとやっているに違いないだろうから、アレだが。
「ん?金城さん、そんなちっさい弁当で足りんの?」
ふと、オレの視界に彼女のフトモモ・・・・・・に、乗った小さな弁当箱が目に入る。
決して、フトモモが目に入ったからではないぞ、いや、本当。
「私は少食なんだ。」
「それにしたって、小さいな。」
オレとダイだったら、5分もあれば一気に食べ終えてしまいそうだ。
胃袋の構造からして違うのだろうか。
「それに昼に沢山食べると、午後の授業で眠くなってしまう。」
「さいですか。」
とても立派なコトで。
「気になる?」
「女子ってそんなもんなのかなと。」
「しっかり食べる女子もいるけれど・・・私はこれくらい。あ、でも、デザートというか、おやつのような物は帰宅してから、夕食前に食べている。」
そう言われてみると、クラスの女子は休み時間によくお菓子類を食べているのを見かける。
甘い物は別腹というが、彼女も普通の女子のご多分に漏れず、その一人という事だな。
「それとも君は、もりもりとよく食べる女子の方が好みというのだろうか?ならば、努力する。」
「いやいやいやいや、そんな事はない、うん、ないぞ。」
そこまで合わせる必要もないし、させようなんて思わない。
というか、オレはそういう人間に見えるんだろいか?
違うな、彼女は彼女で、オレに気に入られようと必死なのかも知れない・・・これでも。
そこまでされる程の価値がオレにあるとは思えないんだけど・・・。
「・・・イツキ。」
小さな声でケイスケがオレに呼びかけながら小突いてくる。
「黙り込んじゃダメだよ。」
おぅ、少し考え込んでしまった。
「し、しかし、小さけど、中身は美味そうだな。」
彼女の弁当箱はこぢんまりしている割りには、色合いがとりどりで食欲をそそる。
「そ、そうか?そっちは何時も購買の?」
「購買のパンも美味いぜ?」
「栄養は偏るけれどね。」
ここでようやくダイとケイスケが会話の流れを掴んだように入ってくる。
「僕は一応野菜ジュースを飲んでるよ?」
「オレはコレだ!」
ダイは大きめの紙パックを見せる。
そこには太い筆文字で【ザ・漢の青汁!】と書かれていた・・・何処で売ってんだ、ソレ。
「ちなみにオレは豆乳。」
最近はメロン味と焼き芋味が流行りだ。
「それでも、どうかと思う。きょ、興味があるなら食べて・・・みる?」
ずぃっと弁当箱をオレを押し付ける見せてくる。
確かに美味そうなんで、食べてくたくなる。
でも・・・。
「金城さんの分がなくなっちゃうだろ?」
ただでさえ、小さいんだ、一口二口か食べなかったとしても、彼女の分がなくなってしまう。
「ふむ、ならば・・・。」 「手作り弁当だなッ!」
ダイがただでさえ大きな声を更に大きくして宣言する。
「手作り弁当であーんだ!」
その言葉に一瞬、彼女は目を大きく見開いて。
「確かに、このお弁当は私の手作りだが・・・。」
あ、手作りなんだ・・・じゃなくて!
「どうしてそうなる。」
「何を言ってんだ!手作り弁当、あーんは定番だ!」
定番だったのか。
いかんっ!
ダイの無駄な力説に納得しかけそうになったじゃないか、バカめ!
そんな与太話を誰が信じ・・・
「なるほど、そんな定番が・・・。」
「ねぇよ!」
思わず突っ込んでしまったが、オレ以上に納得してしまう彼女の方に問題がある。
「いや、あるよ。定番だね。恋人同士の。しかも学生時代のそれは非常にレアでレベルが高い。」
ヲイヲイ、ケイスケ氏?
何をノリノリでぬかしてんですか、アンタはよぉっ!
「ちょっ、おまっ?!」
ダイはただのストレートなアホだけど、ケイスケは確信犯だ。
「やはりそうなのか。では、それでいいかな?」
「ぐ・・・。」
ここで断ったら、彼女は寂しそうな顔をしてがっかりするんだろう。
それも極力、表情に出さないようにして。
「あ、あぁ・・・機会があれば。」
「解った。ついでに二人にもサラダくらいは持ってこよう。」
「うん、ありがとう。栄養のバランスは大事だよね。」
「お、サラダげっと、ラッキー♪」
・・・はぁ、なんか、もぅ、ますますカオスな事に・・・・・・。