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第5歩:それは天秤にかけるものじゃない。

「一緒に昼メシ食わないか?」


 こうと決めてしまえば、行動は早かった。

翌日、オレは昼食を一緒にと誘う。

ただ、この行動を起こすに、一つだけ面倒な事をしなければならなかった。




「なァ、彼女の事をちょっとだけ真剣に考えようと思うんだが・・・。」


 朝の登校の時にオレは二人の友人にそう打ち明ける。


「いいんじゃない?」


 友情と愛情の天秤とかいう事だけは願い下げだったので、正直に打ち明けると、ケイスケは予想通りあっさりと返事を返してきた。

ただ・・・。


「んまーっ、聞きまして奥さん?彼女ですってイヤらしい。」


 ダイだ。

完全に抜け駆け(?)状態のオレに対してこんな風に意固地になってしまった。

まるで子供。


「奥さんて、あのなぁ・・・。」


 何処ぞの噂好きのオバはんだよ・・・。

ご丁寧に口元に手の甲を寄せての再現っぷり。


「ダイ、イツキが幸せについて考えてみたんだ。これは大きな成長だと喜ぶべきだよ?」


 こっちはこっちで、どっかで聞いたような曲のタイトルみたいだがな。

そして普段オレが何も考えていないという方向性にどうあっても持って行きたいんだな?


「何が幸せだ、何が!急に告白されて、はい、そーですかって節操がねぇ。」


「そんな言葉知ってたんだ・・・。」


 ケイスケに一票。


「てっきりダイの頭の辞書にはそんな単語は載ってないと思っていたよ。」


「いや、そこまでは流石に言い過ぎなんじゃないか?」


 ほら、涙目になってるし。


「そういうところが、イツキは優しいよね・・・ダイ、ちょっと。」


 オレの言葉に溜め息を一つつくと、ダイをちょいちょいと指の先で手招きする。

お?指先でも手招きっていうのか?

手招き?

いや、指も手の一部だから、手招きでも間違いはないの・・・か?

てなコトを考えている間に、ケイスケが寄って来たダイの耳に何かを吹き込んでる。

どうせロクでもない事は明白だ。

だって、ケイスケだし。


「ね?」


「ふむぅ~。」


「だからさ・・・。」


「ぬぉっ、うぐぐぬ・・・。」


 表情の豊かさをオレに披露しつつ、ダイは頷く。


「ダイ、オレはな、別にこんな事でオマエをないがしろにするとか、そういうつもりは全くないんだからな?」


 友情は恋愛とはまだ別に大切というのはホントのコトで・・・。


「しゃあねぇなぁ・・・ケイスケにもイツキにも言われるとな。ま、いいんじゃねぇか?」


 ヤケに素直に応じたな。

一体、ケイスケは何を吹き込んだんだ?


「一体・・・何を?」


 オレは話を終えたケイスケに近寄り、それとなく小さな声で聞く。


「いや、ただメリットとデメリットの話をしただけ。」


「?」


「イツキと遊ぶ時間は少なくなるけれど、もしかしたら、金城女史の友人を紹介してもらえるかもよ?って。」


 ・・・・・・。

前者がデメリットで、後者がメリット。

んで、ダイはメリットに重きを置いたと・・・。

一番恋と友情を天秤にかけてんのは、テメェじゃねぇか。


「て、ヲイ、いいのか?彼女、友達は少なそうだぞ?」


 言っちゃなんだが。

それに色恋沙汰も今までなかったような口ぶりと態度だったし、とてもダイの妄想を叶えられるとは思えん。


「だから、"もし""かも"って言ったよ?」


「・・・流石。」


 コイツとかわす書面は、1mm程度の文字とか変な余白、ついでに炙り出しまでチェックせんと大変なメに会いそうだ。

そして、ダイよ、いい加減、ケイスケのやり口を学習した方がいいとオレは思うぞ。

オレも、今、少し学習したところだ。

とにもかくにも、許可をわざわざ取る事ではなかったけれど、友情の方はなんとか保てたワケだ。




 てなコトがあり・・・。



「一緒に昼メシを食わないか?」


 てなコトになったのだ。

席に座ったままの彼女がきょとんとした顔でオレを見上げる。

ちょ~と可愛い。

眼鏡がないバージョンもお願いしてみたいなと思いつつ。


「昼だよ、昼。あ、ダイやケイスケも一緒で良ければだけど。」


 彼女の場合、二人で昼食の方が良かったのかも知れない。

でも、オレはどちらと言えば皆でワイワイ言いながら食べる方が好きだ。

三人で食う昼に慣れてしまってるってのもある。


「私と・・・?」


「そう。」


 彼女にとってみれば、昨日、あんなに距離を置いた。というか、色んな意味でドン引きしゃたオレが急に距離を詰めて来たんだ、そりゃびっくりするかもなぁ。


「そ、その・・・。」


 オレを見つめていた視線が、机へと落ちる。


「私は、あまり昼食に提供できる、その、楽しい話題がなくて・・・。」


「なんだ、そんな事か。」


 こちとら別にはなから、そんなのを期待していたワケじゃないんでねぇ。


「だから、私と食べても、あまり面白くないというか・・・いや、君との昼食は天にも昇る嬉しさなんだが・・・。」


 天にもって・・・表現がオオゲザな。

やれやれ・・・。


「"千鶴さん"と一緒がいいんだ。」


 ガタン!と俯いたままの彼女が勢い良く立ち上がった。


「い、いいい行こう!屋上でいいんだな?」


 あら、イマイチか?と思ったけれど、表情は俯いてるからともかく、耳が真っ赤になってるのは解る。

効果はばつぐんだ!

彼女は何ポ○モンだろ?


「鳴瀬 斎くん。」


「はい?」


「その・・・次からも"ソレ"で呼んで欲しい。」


 とりあえず、ツンデレ属性?

全く、最初は呼び捨てでいいって言ったクセに・・・ま、これはこれで可愛いから・・・いいのかな?

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