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第2歩:恋愛と交通事故の因果関係。

このアクセス数が私らしさを表現していて、いいと思いません?w

「は?」


 今、何を・・・言われた?

彼女の言葉が把握出来なかったんだが・・・。

まさかの日本語が理解出来ないなんて。

ふんわりとした肩口までの長さのセミロングに、楕円形の小さな眼鏡。

切れ長の瞳に強い意志が籠もった、一点の曇りもない眼差しがオレを見つめている。

ふと、そんな彼女の眼差しが所在なさ気に揺れて・・・。


「・・・言い方が悪かった、すまない。何分に初体験なもので緊張していてな。」


 とてもそうは見えないぐらいに堂々と立っているが?

けれど、あんな事を衆人環視の中で言ってのけるんだから、彼女は本気なんだろう。

だって、クラス中のヤツラが見ている中でだぞ?


「その、別段、何処かに一緒に行こうという意味ではなくてだな、その・・・。」


 所在無さ気に何ヶ所かに視線が巡った後、再びをオレをまっすぐ見つめる。


「簡潔に言うと、好きだ、愛している、私のモノになって欲しい!」


「はあぁッ!?」


 教室中に響き渡る素っ頓狂な叫びを上げてしまったけど、オレは悪くないぞ。

誰だって突然こんな事を言われたら、大なり小なり驚くし、混乱するだろう?


「あぁ、えぇと、金城きんじょうさん?」


 それでも何とか彼女の苗字を思い浮かべて口に出来た自分を褒めてやりたい。

品行方正、学年トップクラスの秀才、何より超クール・・・な、ハズの彼女なんだが・・・。


「む?千鶴でいい。」


 いや、いきなり名前呼び捨ては難易度が高いですよ?

オレにはハードルが高過ぎます。

いくらこのクラスの団結力が強いといっても、個人と個人の全てが仲が良いわけじゃない。

隣の家の人とはよく会って話をするが、間を一軒挟んだ隣の隣とは交流がないみたいな?


「え~と、そ、その金城さんは何故にそんな事を仰るので?」


 距離感を掴み損ねた挙げ句に、変な口調になってしまった。


「何故・・・?愛してしまったのだから仕方がないだろう?」


 腕を抱き、きっぱりと断言する。

勿論、この間もクラス中の視線がオレを見ている。


「私は四六時中、君を見ていたからな。迷子の親を捜しているところ、雨に打たれる猫に傘を置いて行ったところ、木に引っかかったボールを子供の為に取ってあげた事もあったな。挙げたらキリがない。」


 ぐおぉぉぉーッ!!

死にてぇっ!

今、モーレツに死んでしまいたい!!

赤裸々にオレの恥ずかしい点を並べ立てられた?!

なんでこうなった?!

つーか、何でケイスケは頷いてんだよっ!

友ならオレを今すぐ助けろカモン!

悶絶するオレに何故だか得意気かつ、満足そうにしているこの女を誰かなんとかしろ!


「そ、そんな事で?何か、こう、金城さん自身が関係する具体的な事があったとかはないのか?!」


 今、彼女が言ったのは余りにもオレを端的に捉え過ぎてる。

オレは一体どんな善人なんだよ?

いや、善人を通り越して逆に偽善者っぽいじゃないか・・・。


「具体的に?」


 組んでいた手を顎の辺りに持ってゆく彼女の仕草、その細い指を思わず目で追ってしまう。


「何というのか・・・こぅ、ビビッと女の本能に来たというか・・・女の・・・本能・・・子宮に感じ・・・」 「も、もういい!言わんでいいッ!」


 痴女か己はッ!

セクハラで訴えられるレベルじゃないかそんなもん。

て、オイ、コラ、下腹部を擦るんじゃない!


「言えと言ったり、言うなと言ったり・・・。」


 眉根を寄せて(これでも)困った表情をする彼女と、脱力するオレ。

一体、悪いのはどっちだ?


「もしやこれが、恋の駆け引きというモノなのか?・・・難しいものだな。」


 駆け引きどころか、どストレートに直球勝負で来て、相手にドン引きされてるんですけどォ?

唐突過ぎるんだ、何もかも。

彼女は恐らく今まで考えてから行動に出たんだろうが・・・つか・・・。


「大体、何でこのタイミングなんだ?」


 今は朝のHR前。

しかも、公衆(クラスメート)の面前。

普通はオレだけ呼び出すとか、手紙で想いを伝えるとかするもんじゃないのか?

少なくても、ひっそりと伝える手段を選択するべきなんじゃないかと思う。


「いや、会話を盗み聞きしてすまないとは思ったが、さっき彼女はいないと言っていただろう?」


「あ、あぁ。」


 行ったな。

確かに。


「それで、これはまたとない絶好の機会だと思った。他の者に抜け駆けされる前に君を奪いたい・・・それは、今しかない。」


 ぬ、抜け駆けって、言っちゃ悪いが、生まれてこの方、彼女なんて出来た事はない。

更に言うなら、告白された事もない。

あ、なんか泣きたくなってきた・・・。

大体、奪うって、普通男の側が言う台詞だと思う。

いくら男女の差がなくなりつつある時代だからって。


「と、ともかくだ!そっちはオレの事をよく知っているかも知れんが、オレはよく知らない。それをいきなりだなァ・・・。ちょいと不公平というか・・・。」


 ダメだ、こういうタイプはきっと理論的に説いて納得させないとテコでも動かないタイプだ。

んでもって、開き直ったら理論的にも通じないタイプ。

超、厄介。

不意打ちに等しい彼女の行動だけれど、チャンバラじゃないんだから、その不意打ちで討たれるってワケでもないだろう。


「そうか・・・なるほど・・・。」


 嘘、納得したわ。


「解ってくれたか?」


「私は君がどんなだろうと愛せる自信がある。だが君は私がどんなに愛しているか解らないと・・・こういう事だな?」


 ・・・あれ?

オレ、何時そんな事を言ったっけ?言いましたっけ?

何やら凄まじい誤変換が発生していないか?


「お互いの事を知る期間を設ければ、問題ないと、こういうわけだな?」


 ・・・・・・そうなるのか?あれ?

いかん、なにやら外堀から埋められている気がする。

寧ろ、理詰めで説得されているのはオレの方か?


「段階を踏んでという事なら、そういう事に・・・なるのか?」


 相手の事を知らない。

これは確かにその通りで事実。

でも、知ったからといって好きになるとは限らない。

それを彼女は理解しているのだろうか?

告白ってのは、二択しか答えが無いから、そしてその違いは天と地ほどあるから辛いし、勇気がいるんだぜ?


「そうか、互いに感じ合えないというのも問題ではあるな。」


 解り合えない→感じ合えない

誤変換サレテマスヨー。


「少し考えてみよう。では。」


 そう言うと彼女はあっさりと自分の席へと引き下がって行った。

その後姿を見送って、オレは呆然とする。

なんか、意外にあっさりと引き下がったな。

あれだけ勢いをつけて来たのに、なんでだ?


「オラァ、朝のHR始めっぞー。日直号令!」


 彼女が引き下がってすぐに担任の女教師が教室に入ってきた。

どうやらそれを察知したかららしい。


「ほら、北山田!鳴瀬ェ!ぼーっとしてないで、席つけぇっ!」


 気づくとダイとオレ以外の皆は既に席に着いていた。

何故か、オレの横にいたはずのケイスケまでが・・・。

素敵だね、君達の団結力は・・・願わくばオレも仲間に入れてくれると嬉しい。

仕方なく言われるがままに席に着きHRが始まる。

だが、オレはそれをぼぅっと聞き流しながら、今日一日が一体どうなってしまうんだろうかと考えずにはいられなかった。

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