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第13歩:そんな彼女への歩み寄り方。

 あえて突っ込むまでの事ではないと思ってはいたんだが・・・。

どうにも居心地が悪い。

前もこんな事を思った気がする。

多分それを感じているのはオレだけなんだろう。

だから、あえて前置きをしてみたんだが・・・きっとこういう所が損をしたりする理由なんだろうな。


「で、何で今日もなんだ?」


 彼女と一緒の下校。

駅に行き、電車に乗り・・・。

それ自体は特に悪い事ではない。

それは解っている。


「何が?」


 案の定、彼女は何の問題があるのかとオレの顔を見る。


「今日もというのは、何故今日も一緒に帰るのかという事?」


 それでも何とかオレの言いたい事を考えてくれるのは嬉しいが、オレが聞きたい事の真意はそうじゃない。


「恋人同士が帰路を共にするのは普通の事だと思うけれど?」


 うん、まぁ、直して欲しいと申し出てもダメなんだろうなぁ・・・。

基準の問題だし。


「まぁ、オレの言った事の全部が全部を覚えていろとは言わないけど・・・。」


 人間なんて忘却の生き物だしな。

忘れたい事だってあるだろうし・・・。


「何を言う。君が私にかける言葉の全ては、私への愛の言葉の如く一字一句を・・・。」


「わーった、わーった。オレが悪かった。」


 拳を握り締め反論する彼女は、放っておくとそのまま演説に入りかねない。

タイトルはそうだなぁ、"如何に愛しているか"とかか?

あぁ、まぁ、どうでもいいけど。

彼女の言葉さえ遮れれば。


「つーか、一字一句覚えようとしなくていい。そんなに集中されても困るし、疲れるだろ?」


 オレは授業でさえ集中し続ける事なんて出来ないんだからな。

15~40分くらいってのが、個人差も含めて集中出来る限界なんじゃないか?



「君の優しさはありがたいが、私が覚えていたいんだ。君の一挙手一投足を。」


 ちょっぴりヤンデレ入ってる?

入ってないか。

・・・んん?なんか話がズレてきたな。


「そこはまた話合うとして、いや、話し合うかどうかは置いといて。」


 今言いたい事はそういうんじゃないんだ。


「オレが言いたいのは、何でまたオレを送る方向性で一緒に帰ってんだって話だ。」


 オレと彼女の自宅は反対方向。

こうやってオレを送って帰ると、この後に彼女は遠回りをして帰る事になる。

オレとしては、これは忍びないんだ。

彼女はそんな事を苦になっているようには見えないけれど、オレは気にする。

これはオレの我が儘でしかないんだろうか?


「それは、君と私の自宅が逆方向だから・・・。」


 と、いつもオレと話す時は、しっかりとオレの目を見るタイプの彼女が微妙に視線を逸らしている気がした。


「じゃなくて、もうワザとだろ・・・逆方向で遠回りなんだから、今度はオレが送るって話さなかったか?」


 彼女の言い分がどこまで本当かは解らないが、仮に本当にオレの言った事を一字一句覚えているなら、この話だって覚えているはずで・・・。

それでもこういう事になってるのなら、彼女のやっている事はワザとって事になる。


「いや・・・その・・・。」


 その証拠に露骨に目を逸らす。

つーワケでワザとなのは確定だ。


「寛大なオレは理由をまず聞いてやろう。」


 ダイの真似をしたら、人間としてどうなんだろうと思うが。


「なんというか・・・その、覚悟が・・・。」


 覚悟?

一緒に帰る事か?

それだったら別にオレを送るなんて事はしないだろう?

そう考えると、オレが彼女を送る事がってコトか?


「別に自宅の部屋まで行こうとしているワケじゃないぞ?」


「それはそれで別の覚悟がいる。けど、それはもう少し待ってくれれば、その、愛で乗り越えてみせようとは思っては・・・。」


「じゃあ、オレが地元に行くのが嫌ってコトか?」


 もはや愛とかなんとかにイチイチ突込みを入れると会話が進まないので諦めるしかない。


「要約するとそうなのだが、決して嫌というわけじゃない。ただ地元の知り合いに遭遇すると、その・・・。」


 昼休みも友人がどうとか言ってたな。

アレと同じ様な繋がりか?


「友人といい、地元の人間といい、よっぽどオレに会わせると都合が悪いんだな。」


 少し責めたような口調になってしまったのは反省すべきなんだろうか?

本当、オレは彼女に関して知らない事が多過ぎる。

そもそも多いから、こんな事態になってんだろうけれど、それはオレが何処まで彼女に踏み込んで行っていいものかを考えさせる。

知りたいし、知らなければ結論は出せない問題。

だからといって、彼女に対して踏み込んで行っていいのかはまだ別の問題だ。

一体どうしたらいいんだと叫びたいくらいだぜ。


「それもいずれは・・・。」


「愛の力で乗り越えるか?」


 彼女の"愛"というものの基準はどのレベルなんだろうな、全く。

正直、オレ達の年代だと言うのも恥ずかしいと思うんだが。


「あぁ、必ず。」


 この辺は予想通りの反応だ。

ん?

もしかして、あらかじめこうやって予想を立ててから、彼女に接してみればいい・・・のか?

そうすれば、彼女を理解するスピードや深さ変わって、理解する事が出来るのだろうか?


「そうか。じゃあ、いずれは必ず千鶴さんの部屋に入れてくれるのか。」


 愛のチカラとかやらで打開してくれるらしいからな。


「え?!あ、うむぅ・・・。」


 少しだけ、少しだけ彼女と一緒にいる事の楽しみ方を解ってきたような・・・。


「・・・ではでは、先に休みの日にでもオレんチに来るか?それともデートが先?」


「き、き、き、キミの家にか?!いや、デート?!う、うむぅ、も、物事には順序が大事だからなっ!」


「大事だから?」


 明らかに狼狽する(うろたえる)彼女に微笑みかけながら、さぁ、どっち?とオレは今までの分を反撃してやる事にした。


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