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第9歩:帰り路に心も君と・・・。

うっはぁ~、予想に違わずの不人気っぷりwww

(まぁ、そうなるよな・・・。)


 屋上でケイスケやダイがいてアレなんだ、二人きりなんて殊更に話題がない。

出来る事といえば、彼女の横顔を眺めるだけだ。

そんな事をして気づけたのは、思ったより睫毛が長いって事と、さっきからずっと彼女が思案げにしているという事。

それだけしかないとは我ながら情けない。


「さっきからずっと何かを考えているみたいだけど?」


 何故だか口に出さずにはいられなかった。


「ん?あぁ、すまない。」


「いや、別に構わないけど・・・。」


 特に話題がないんだ、彼女が退屈にならなければ今はそれでいい。


「実は今とても深刻な事態というか、迷っている事がある。」


「なにやらワケありげな・・・オレでいいなら聞くよ?まぁ、頼りになるかどうかは別だけど。」


 なにしろ駅までの十数分で、気づいた事が2つしかない男だからな。


「それが・・・。」


「それが?」


 息を呑む彼女に、オレは顔を覗き込むように見る。


「明日のお弁当のウィンナーは、タコとカニのどちらがいいだろうか?!」


「はぃ?」


 タコ?カニ?


「だから、おかずのウィンナーだ。」


「いや、ウィンナーは知ってるぞ、うん。」


 お子様から大人まで、嫌いな人はいないくらいの定番のおかずだ。

菜食主義とか宗教上のってのは、抜きにして。


「タコさんウィンナーとカニさんウィンナーと君はどちらがいい?」


「えぇと・・・もしかしなくても、それを学校を出てからずっと考えてたのか?」


 あんなに真剣に?

いやいや、まさか・・・。


「違う。午後の授業が始まってからずっと考えている。」


 ・・・ありえんでしょ、フツー。


「手足が8本ってトコはどっちも変わらないんじゃ・・・。」


「何を言う!タテとヨコの違いがあるじゃないか。それに8本も切ったら細切れになってしまう。せいぜい4本が限度だ。」


 と、千鶴さんは力説していますが・・・。

これってあれかな?

どっちでもいいとか言った日にゃ、オレはダメ男確定か?

そういうフラグなのか?

しかし、どうでもいいというのが、本音なんだけどなぁ。


「えぇと、オススメというか、得意な方でオネガイシマス。」


 そもそも、オレの為に作ってくれると本人は仰っているわけだから、その好意を無下にする事はないよな。

・・・したところで彼女のあの勢いじゃ、止まらない気もするが。


「ところで気になったんだけどさ。」


「?」


 首を傾げる彼女はオレの質問の先を聞く気のようだ。


「いや、オレの家はこっから3駅くらいのとこなんだけどさ。」


「知っている。」


「知っているって・・・。」


 それは最寄の駅をか?それとも住所をか?

怖くて聞けん・・・。


「好きな人間の住んでいる所くらいは、普通は知っているものだ。」


 一体、その知識は何処から?

基礎から180度間違っている気がする。


「あぁ、そうなのか。」


 曖昧な返事をしつつ・・・。


「じゃあ、参考までに千鶴さんの住んでいる所は?オレの家の方だとは知らなかったからさ。」


「私の家の最寄の駅は反対方向になるが?」


「はぃ?」


 これまた予想外の回答が・・・。


「は?!も、も、もしや、もう私の家に来たいと思ってててているのか?!」


「ててててないです。自分んちが反対方向なのになんで?」


 既に電車には乗ってしまっていて、オレんちの方、つまり彼女の家とは反対方向へと動き出してしまっている。


「君が一緒に帰ろう言ったんじゃないか。」


 少し、ほんの少しだけ咎めるような口調でオレに言う彼女。

それに対してオレは反論出来ない。

確かに言ったし。


「恋仲の男女はこうするのが定番だとあったし・・・。」


「ん?」


「なんでもない。ただ私にだってイメージというものがあるのだ。」


「イメージ?」


「そうだ。恋人同士がする事のイメージ。」


「イメージねぇ。」


 本気で彼女が何を参考・基本にして、恋人という概念を作ってんのかは、いずれ解明しなきゃなんないってだけは脳ミソにメモっておこう。


「ともかく、私は君の降りる駅までは行く事にする。」


 完全に決定事項といった風体で彼女はオレを見つめる。

案外、頑固なのかも知れない。

それでも、きっとオレが嫌だと言えば彼女は引き下がるんだろうな。


「時間は?帰るのが遅くなるけど?」


 彼女に門限があるかどうかは知らないが、帰宅が遅くなるのは確かだ。

たかが3駅分の往復だとしても、遅くなるのには変わりない。

オレには女子の門限なんて見当もつかん。


「君は優しいな。だからこそ惚れたんだ。」


 もう公共の乗り物の中とか、そういうのは彼女には関係ないのかも知れない。


「大丈夫。心配ない、多分。」


「多分なのかよ。」


「いや、大丈夫だ。たとえ君と夜を明かしても問題ない。」


「違うイミで問題があるかと・・・。」


 もはや門限云々の話じゃないよな、ソレ。

彼女的には自覚がないみたいだが・・・つか、脳内フィルター的なモノを通る時と、完全に素通りする時の2通りがあるみたいだ。


「まぁ、仕方ないな。じゃ、次に一緒に帰る時があれば、オレが千鶴さんの駅まで送るよ。」


「え、あ、いや、それは・・・悪い・・・。」


「悪くない。どっちかっていうと不公平に感じる。」


 誠実だとか、優しさとかじゃなくてさ。


「そっちにイメージがあるように、オレにもイメージがあんの。相手と対等ってのがいいな。」


 そうじゃないと負担になる。

重くなる。

例え、彼女が仮免のお試しだとしても、オレは嫌だ。

そういう意味じゃ、頑固なのはオレもだな。


「・・・・・・やはり、君を愛したのは間違いじゃなかった。」


そう言って再確認するように頷く彼女に何と返したものかとオレは考え始めた・・・。

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