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どうして気付けなかったのだろう。
花音が、苦しんでいたことに。
どうして止められなかったのだろう。
花音の、死を。
例えば、花音の苦しみに気付けたとして。
私は、花音を止められた?
例えば、花音の死を止められたとして。
私は、花音に気が付けた?
それは違う、と何処かで声がした。
あれから、早くも一週間が経とうとしている。
「……あ」
思わず声を漏らす。
それは、廊下の先に真奈が居たから。
放課後の、誰も居ない廊下。
私は、少し立ち止まって、そして……。
「……………っ、真奈、」
真奈に、声を掛ける。
きっと、花音が死ぬ前の真奈なら、笑顔で『なぁに』と言ってくれた。
それでも、今の真奈は、違うから。
「………………」
真奈は、夕陽が差し込む廊下を、ただ歩いていく。私には、目もくれずに。
あれから一週間。
真奈とは、話さなくなった。……話せなく、なった。
知ってる。認めたくなくても。
これは、花音の死が原因でしょう?
もしも。
もしも、前に戻れたなら良かったのに。
そしたら、全部元通りなのに……。
ため息は、静かに廊下に消える。