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「……ただいま……」
がちゃり、と家のドアを開ける。
母親が玄関に来る気配がしたが、何となく顔を合わせたくなくて、階段をかけ上がった。
そして、そのまま部屋に入ると、ベッドに倒れ混む。
一階から母親の声がしたが、無視。
一階に行く気力など、残っていなかった。
だって、もう疲れてしまった。
そして、枕に顔を押し付けたまま考えた。
ーー夢なのかな。
夢であって欲しいなぁ。
だって、理解出来ない。
昨日まで、笑ってたのに。
夢だったら良かったのにーー。
そんな、バカなことを。
いくら現実逃避しても、握られている遺書が、私を現実に引き戻す。
花音がいない、この現実に。
カーテンの隙間から、オレンジの光が差し込んでいた。