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そう、それは。
それは、理不尽な別れだった。
***
「嘘だ」
私は、声を絞り出した。
回らない頭で、必死に自分に言い聞かせる。
…これはきっと嘘なのだ、と。
手渡された手紙には、可愛らしい字で『夏樹へ』と書かれていて。
それがあの子の字だって、本当は解ってた。
これが、遺書だってことも、全部。
なんで。どうして。
そんな疑問だけが、頭を回る。
昨日まで、笑ってたのに。
なのに、今は………
「そんなの、嘘だっ!」
信じない。
こんなの、理不尽だ。
「やめて夏樹っ!」
後ろから響いた声に、はっと我に返る。
後ろを振り向けば、立っていたのは真奈。
でも、彼女の顔には、いつもの笑顔なんて無かった。
「花音は……っ、死んだんだよ……!」
かのんはしんだ。
そんな事実だけが、淡々と頭を回る。
そのとき私は、回らない頭で何を言ったのだろう。