続・やっぱ、愛は世界を救う!コレ常識でしょ?
お久しぶりです(?)。ササメです。
という訳で、公園のベンチで日光浴しながら、ぼけ~っと空を見上げていたりする私とウサギ。
「ササメ!北に行こう!俺のヒゲが何かを感じている・・・気がする!」
私の膝の上で、お髭をピコピコさせている白いモフモ・・・ゴホン、白いウサギのシンラが、何の根拠もないことを自信満々に言い放った。
「はいはーい、北って言うと、えーと・・・あっ!タナハの町があるな。あそこはそこそこ大きな交易都市だから何か有力な情報が手に入るかも知れないし・・・、さらに北に行けばシーア国か。」
手に持っている地図で場所を確認して、膝の上のシンラを見下ろした。
「そう!そこに行こう!もうこれ以上王都にいても、新しい情報はなさそうだしな」
膝の上のシンラはクリクリとした漆黒の瞳をパチパチと瞬かせ、私を見上げている。
あ~もう、カワイイな~・・・、じゃなくて、地図、地図。
地図を見ながら、道の確認や、距離を確認していく。
「そうだな~、ここでの情報収集もそろそろ限界だしな・・・・・・、よし!行くか!」
私は、持っていた地図を勢いよく閉じて、座っていたベンチからさらに勢いよく立ち上がった。
「うわぁぁっ!・・・・・・・・(怒)!!いきなり立つな!ビックリするだろ!」
あっ!・・・立ち上がった勢いで転がっていった白い球のようなモフモフは、手ですかさずキャッチ!!
え!?忘れてませんよ?シンラが膝にいたこと・・・(汗)。
実は、あれから(シンラがウサギに変えられてから)、1ヶ月程立っていたりする。
アカサの町に、旅人の振りをして(このときシンラはカバンの中に入ってた)入ったが、仮面の男も、怪しそうなヤツも見つけられず。
念のためにと3日程滞在したが、成果は出ず・・・。
依頼も仕組まれていたことの為、何にもやることのなくなった私達は、ホームのあるメリア国王都に戻ってきたのだ。
犯人を捜しながらも、独自に人に戻る手段を模索していたが、これもまた全く成果は出ず。
いいかげん2人ともイライラしてきた時に、シンラが「北に行こう!」なんて言い出したのだ。
まぁ、私としてもジッとしているのも辛いし、事情が事情なだけに仕事もしばらく休みを貰った。
そんなわけで、今の私達には時間が腐るほどある。
敵(?)の目的が、シンラならまた襲われる可能性もある。
ならば、獲物らしく釣られてみるのもいいだろう。
私は、抱き上げていたシンラを下に下ろしてやった。
抱き上げるのは仕方ないときだけと、シンラに決められているからだ(チッ)。
「今回は仕事ではないから、時間に追われることもないしな、のんびり行こう!」
「いや、それ違うし!なんでお前1人休暇なノリなの?違うでしょ!?俺!俺が一刻も早く人に戻るために、サクサク進む!コレが1番大事でしょ!?」
地面で必死にバランスを取って、2本足で立ち上がっている姿はなんとも可愛らしい。
まっ白なモフモフと暮らし始めて一ヶ月。大体の生態はわかった。
どういう仕組みかはわからないが、体はウサギでも、喋るし、人と同じものを食べ、人だった頃のように魔法を使える。
「ところでシンラ。首輪とリードは必要か?ウサギとの散歩を最近では『うさんぽ』と言うらしいぞ」
「いらんわーーーー(怒)!!」
***
まずは、M・A・S・Kの支部へ行き、旅に出る報告をして、許可ももらった。
後は、自分達の準備だが、年がら年中旅しているような職業の為、すぐに終わった。
といっても、人間は私1人なので、荷物も主に私のものだ。
シンラ自身、ウサギといえど、4大元素の魔法が使えるので、水や火に困ることはない。
旅なれているとはいえ、ウサギを連れての旅は初めてだ。
小さな小動物をずっと歩かせるわけにもいかないし・・・。
どうするかシンラに尋ねてみると、私の背負っているリュックの上部に乗ると決めているらしい。
ちなみに、抱っこはシンラに禁止されている。男のプライドの問題らしい。
首だけひねって、後のシンラを見ようとしたが、首の限界が思ったより早くやってきて、まったく見えなかった(笑)
仕方ないので、前を向いたまま声をかけてみた。
「落ちるなよ?」
「うっかりお前が転ばない限り大丈夫だ。なかなか安定感があるぞ?」
リュックの上の安定感など知るかと言いそうになったが、シンラが楽しそうにしているのでやめた。
私は、持っていた地図を開いて再度確認することにした。
「さてとまずは・・・、タナハの町だったよな?裏では盗品の売買も行っていると聞く。シンラの杖の手がかりぐらいはつかみたいな。さて、出発するか?」
前を向いたまま再度シンラに尋ねると、なかなかポジションが決まらないのか、しきりにモゾモゾと動いている。
リュックの上の寝心地を確認しているのか、モゾモゾと動くたびにシンラのフワッフワの毛が首に当たり、少しくすぐったい。
いい感じのポジションを見つけて、シンラの準備も整ったらしい。
「よし!完璧だ!あっ!先に言っとくが、おまえの超人的な運動能力で走ったり、跳んだりするなよ?必ず俺が落ちる。背中に俺がいることを忘れるなよ?」
「なにも起こらなければ、飛び跳ねたりしないさ。何か起こったとしても、自分の身は守れるだろう?」
たとえウサギでも、シンラは魔法使いとしては最強の位にいるんだから、臨機応変に対処してくれる(はず)。なんだかんだといいつつも、自分はシンラを信頼しているのだ。
「おうよ!ただ、できれば一声かけてくれ。魔法だって万能じゃないからな。」
私は前を向いたまま、シンラに出発を告げた。
たとえどんな姿でも私はシンラと共にいる。
そうあの時誓ったのだから。
***
いつもは、シンラの移動魔法や、私のちょっとした特殊能力で目的地付近まで行くことが多いが、今回は情報収集と、餌を敵(?)に認識させることが目的なので、徒歩&馬車で行くことにした。
街道を歩いていると、馬車の乗合所が見えてきた。
馬車を待っているのだろう旅人が、何人かいるのが見える。
「シンラ?乗合所が見えてきたぞ。どうする?乗っていくか?」
「・・・・・・いや、まだ何が起こるかわからん。慎重に行動したほうがいい。関係ない人を巻き込むわけにはいかんだろ?」
「・・・・・・・プッ!アハハハハ!!おまえ、もっともらしいこと言ってるけど、乗合い馬車に乗ると他人と一緒だし、一切喋れないもんな。アハハ!そりゃ、キツイわ。」
「なんだよ!そうだよ!もっともらしいこと言ってんだから、わかっててもそこは触れずにスルーしろよ!」
首の後ろでモゾモゾと動き、私の肩を小さなモフモフの手でバシバシ叩きながら文句を言うのがまた可愛い。
やっぱり、小動物は癒されるな~。可愛いな~。頬ずりして抱きしめたいな~。
「お~い、ささめ?戻ってこ~い。」
私が違う次元に飛び立ってしまったからか、シンラの怒りも治まったようだ。
何度もフニフニと、小さなモフモフの手で頬を押され、漸く私の意識が戻った。
「はっ!いかんいかん。一瞬違うところに行っていた。はぁ~、シンラが急に真面目なこと言うからさ、そりゃ、おかしいとおもうだろ?」
「なんだそれは。普段の俺ってそんなにアホ属性?なんか凹むわ」
「まぁ、わからんでもないし、人前で喋ったら好奇の的になるのは間違いない。(ん?)が、もう手遅れだ。あちらはこっちに気付いているし、一緒に行く気満々だ。あきらめろ」
「何が?何が気付いているんだよ?誰?誰?」
「マノカとカズサ」
名を告げたとたん、首の後ろでフリーズしてしまったシンラ。
何度か呼びかけても、なかなか戻ってこない。
コレは重症だ!早く、マノカとカズサの所まで行かな・・・
「行かんでいいわ----(怒)!!!」
やっと戻ってこれたシンラが、今度は大声で喚きだした。
「なん、あ、な、な」
「落ち着けよ、シンラ。言葉になってないぞ?あっ!マノカとカズサが走ってきたぞ?もう諦めろ。こうゆう時は諦めが肝心だ、うん。」
あっ!ちなみにマノカとカズサはM・A・S・Kに属している、まぁ・・・(多分)仲間だ。
「多分仲間って何?相変わらず失礼なヤツね!」
走ってきたにもかかわらず、息ひとつ乱していないこの女の子(?)がマノカ。
その少し後で穏やかに微笑んでいるのがカズサだ。
マノカは、パッチリとした目に、若干低めの身長で、ツインテールにした髪型が、幼い顔立ちをより際立たせているという特徴をもつ人間だ。
カズサは、まぁ、見たまんまの穏やかそうな青年で、同じく人間(?)だ。
にしても、この上から目線。間違いなくマノカだな。
「勝手に心を読むな。久しぶり、マノカ(さっさと帰れ)。カズサも、本当に久しぶりだ、元気だったか?」
「何?その態度の違い!?しかも心なんて読んでないし、はっきり声に出てたわよ!!多分とかさっさと帰れとか、本当に失礼なヤツ!!」
どうやら、心で思っていた事が、そのまま口から出てしまっていたらしい。
「いや、私って正直だから///」
「照れるなー!!はぁ、はぁ、まぁいいわ、あなた達の事情をM・A・S・Kで聞いたわ。実は、カズサの魔力制御の剣も盗まれたの。今のままじゃ危なくて仕事行けないから、あなた達と一緒に行きなさいって言われて待ってたのよ?」
なるほど。
「だ、そうだぞ?シンラ?」
私は、首の後ろで小さくなって見つからないように(してるつもり)ジッとしているシンラに、話しかけた。
「シンラの状況も詳しく聞いたわ。私達はあなたを脅かすつもりもないし、言い広めたりもしない。いつもにみたいに勝負を挑むことも、真夜中にベッドに忍び込むこともないと約束するわ(多分)」
なんか、最後に多分とか聞こえてような?まぁ、いいか。
マノカの言葉を聞いていたシンラがモゾモゾと首筋から顔を起こして、私の肩にモフモフの両手を揃えて置き、真っ黒なクリクリな瞳でマノカ達を正面から見た。
「ッ!!!・・・・ゴホン!!約束は守るわ。どんなに可愛くても、抱きしめたりしない(多分)わ」
若干シンラが、いぶかしむ様な顔(ウサギだけどなんとなくそんな顔)をしたが、諦めたかのようにため息を吐いた。
「いいよ。仕方ないし。カツラギさんに言われたんだろ?俺達のこと。一緒に行けって言われたなら、なんか意味があるんだろ・・・。ただし!俺に触れるなよ!接・触・禁・止!!」
実は、マノカはシンラに惚れていたりする。
今まで、気を引くために様々な手をつくしてきたマノカだが、そのどれもが裏目に出ている(笑)。
シンラは、過去に色々やられたせいか、マノカがとても苦手なのだ。できれば避けて通りたいぐらいに。
以前、任務中に偶然同じ町で同じ宿に泊まった時に、マノカがシンラに夜這いをかけたことがあった。
マノカに喰われる寸前に、私の部屋にシンラが逃げ込んできた為、未遂に終わったのだが、半裸で部屋に駆け込んできたシンラの顔は、赤いのか青いのかよくわからない顔をしていた。
なにを見た、相棒よ(笑)。
私は、穏やかに微笑んでいるカズサを見た。
どんな状況でもカズサの鉄壁の微笑みを崩せたことは、いまだかつてない。
「カズサも相変わらずだな。どうせ旅の同行の半分の目的は、制御なしのカズサが暴走した場合の保険なんだろ?」
「うん、多分ね。その時はヨロシク」
にこやかに言ってるが、その『もし』になった場合は、本当に殺し合いになるだろう。
ジャラジャラしたアクセサリーを腕や首にかけているが、どうやら間に合わせの魔力制御らしい。
「そうならないように善処してくれ。私1人では少し荷が重い。シンラがコレだしな。」
首筋でモゾモゾしているシンラを指差すと、指先を軽く噛まれた。
「コレ言うな!!俺だってもしもの時は頑張るさ!」
私の頭に手を置き、お髭をピコピコさせているシンラの可愛さに眩暈が・・・!!
見たい!抱きしめたい!頬ずりしたい!
「あっ!ササメが暴走しそうだ!」
指を指して笑うカズサ。
逃げ場がないシンラはオロオロしている。
暴走とは失礼な。小動物に癒しを求めるのは至極当然のことだ。
「と・に・か・く!こんなとこでいつまで喋っているつもり?さっさと行くわよ!」
そうだ、コレはまだ始まり。にぎやかな旅になりそうだけど、たまにはこんなのもいいかもしれない。
まずは、タナハの町に向かって出発だ!
***
「・・・・・・・様、奴らが王都を出発しました。どうやら4人で行動するようです。」
「そうか、都合がいい。監視は任せる。それより、アレを片付けろ。」
目の前にある、体中を裂かれ、血溜まりの中で横たわる生物を見やる。いや、生物だったものだ。
どう見ても、もう生きてはいない。
ソレがどういった生物だったかを判別するのも難しいだろう。
「かしこまりました。次の獲物はどうされますか?」
命令することに慣れた男は、任せると一言告げ、部屋から掻き消えた。
「かしこまりました。血も滴るようなディナーを準備させて頂きます。」
誰もいない空間に向かって静かに礼をすると、残った男もその場から掻き消えた。