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Proving Ground  ~喪失と融合の世界~  作者: 時雨 彰弘
序章:開拓地(フロンティア)と呼ばれる世界で
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第5話「遊ぶ心」

何してるんでしょうか、宣言に反するのが僕らしいですorz


何はともあれ、お楽しみいただけたら幸いです

「さて、俺はどうして乗せられるようにレムクランの屋敷に来てしまっているんだろうな?」

「さぁ、セラ! そのまま屋敷に入りましょう!」

「できるかっ! 何でこの状態のまま屋敷に入らないといけないんだよ! ってか入るのか!?」

「些細な問題だから、行っちゃえ」

「ミル……ここにきて、性格はじけたな」

「気のせいだよ☆」

「気のせいなら『☆』までつける理由がないだろ、この確信犯がっ!」


 道中様々な問題を乗り越え、セラ・ヴレイヴスとミルフィリア・レムクランは現在、レヴァの最大の屋敷の前で騒いでいた。

 ――セラがミルフィリアをお姫様抱っこしたまま。






===============================<ミルフィリアside>






 時間を少し遡る。時間的には数十分前。私達は魔獣と交戦した。私達、といえば語弊があるかもしれないから訂正すると、私を抱き上げているセラ・ヴレイヴスが一人で交戦した。

 その後、セラに抱き上げてもらい、屋敷に連れて行ってもらうようにお願いして、その道中だったりする。

「ねぇ、やっぱりさっきの魔獣、私を狙ってきていた気がするの」

 半ば確信を持ってセラに話す。人を襲ってくる魔獣を召喚できるのは魔獣か人間だけ。それでも、魔獣だけがいきなり街中に出てこないように魔獣の進入は一切ないように徹底している。

 もし、いつの間にか魔獣が街に侵入しており、そこから魔獣を次々と召喚しても、その間の交戦が一切無いなどあり得ないことなのだ。

「さっきの魔獣は確かに誰かを襲ったりした痕跡はなかった。だが、だからといってもミルを狙ったものというのは短絡的すぎる」

 魔獣は人を喰う度に体が大きくなっていく。先程の魔獣にはその変化はほとんど無いとされるほど、小さかったのだ。

「ねぇ、やっぱり、護衛の件、頼まれてくれないかしら?」

 私は自分の勘を信じていた。そして、目の前の彼――セラならば、それを何とか出来るのではないかということも、何故か確信できた。

「言ったはずだ、俺にはやることがあると。明日から俺はミルに時間を割くほど余裕はない」

 しかし、セラは力強い意志の籠もった目をこちらに向けてくる。さすがに、これだけは譲ってくれないようだった。

「そう、そうよね。ごめんなさい、わがままだってことも、わかってたのに。この話を了承したら、今後ずっと巻き込んでしまうわよね」

 少しだが、視界がぼやけてきたのが分かった。すると、頬を暖かい液体が伝っていく感覚があった。

 これは、涙だろうか? 私は今、泣いている? なんで?

「代案というのもお粗末だが、護衛と言っても学内だけだったな? ならば信頼できる者の近くにいればいい。さすがに俺も視界に入る知り合いの危険を眺めているほど酷くはないと思っている」

「セ、ラ?」

「護衛の件は断る。だが、俺の近くに居るな、と言った覚えはない」

「なんで、そんなこと……」

「ただの気分だ。だから、泣くな」

 セラは恥ずかしいのか、少し視線をずらして頬を赤くしている。

「うん、ありがとう」

 私は涙を手でぬぐい、セラを抱きしめる。なんで泣いてたんだろう、私。

「そこまで動けるなら下ろすぞ?」

「家に着くまで少しぐらい胸貸してよ」

「……勝手にしろ」

 セラがぶっきらぼうに言うと、静かに、ゆっくりと歩調を変えたのが分かった。

 その温もりが、ただ気持ちよくて、ずっとそこにいたいと、そう思ってしまっていた。きっとその温もりが恋しかったから、私は泣いたのだと、そう思った。




 だが、そんな私的に良い雰囲気も、大通りに出ると一変した。私はその喧噪で大通りに出たと分かったのだ。

「なんだあいつ? 女の子を抱きあげてるぞ?」

 冷やかし。単にそれだけなら良かった。

「おい、にーちゃん。その子もしかして資産家の子だったりする? 髪も長くて蒼いし、そんな気がするんだけどね?」

 絡んできたのがどうやらごろつきだったらしい。治安が良いと言っても、やはりこういう輩はどこにでもいるものなのだ。

「人違いですよ。彼女が疲れ切ってしまったらしいので僕が連れて帰ってるんです。」

 私はセラの胸に顔を埋めてしまっているため、セラがどんな表情をしているのか、ごろつきがどれだけいるのか分からなかった。

「俺達がその役目変わってやるからよ、そのおいて帰りな」

「そうそう、資産家の娘じゃなくても、俺達はかまわねぇんだよ」

「なんで今日はこんなに面倒ばかりなんだろうな?」

 場の状況に反して、セラは面倒そうな声を出す。確かに、あれだけの魔獣を一人で殲滅できる彼ならば面倒以外の何物でもないのだろう。

「無視してんじゃねぇぞ!?」

「彼女に連れて行ってほしいと頼まれたのは僕だ。貴方達の出る幕じゃない」

 セラが言い切る。それに、なんでかしら? その言葉に凄く、どきどきする。

「あ?てめぇはそいつの何だって言うんだよ?」

「さて、何でしょう? 騎士ナイトってことにでもしますか?」

 最後に馬鹿にした笑いを付けたことで、セラが冗談のような声ということが分かった。それは分かっていたのだ。けれど、私を守る騎士ナイトなんて……

「馬鹿だな、騎士ナイトなんて言っても所詮一人だろ? おとなしくやられちまいな!」

 直後、地面に思い物がぶつかる大きな音が聞こえた。きっと、ごろつきが何か振り回したのだろう。

「すみませんが、僕の守るべきプリンセスはわがままなので抱き上げたままじゃないと文句を言われるんですよ。そして僕は戦いを好みません、いいですね?」

 セラが私をプリンセスと言った。プリンセスを守る騎士ナイト……ってこれは、年頃の子には麻薬よ!?

「意味わかんねぇこといってんじゃ……」

「逃げられるなら、逃げますよ。特に今は。それじゃ、さよならです。『天飛翔スカイフライト』」

 セラが何かの魔法を使った感覚がした。魔法発動時の魔力感知は私もいくらかは出来るのだ。

「ミル、もう顔を上げて良い。せっかくだから、見たらいい。」

「見る?それは……これ、綺麗ね」

 視界に入ってきたのは、日が落ちていく様を空高くから見た風景だった。

「それにしてもセラ、詠唱破棄を見せつけるなんて、良いの?」

 魔法には三種類あり、そのうちの詠唱魔法にはいろいろな段階がある。詠唱魔法の詠唱は術式を作り上げるために必要な過程であり、詠唱破棄とは詠唱抜きでその術式を作れる者がする行為である。ちなみに、その術式を発動させるトリガーが魔法名であり、熟練者はそれすらも破棄する。そのため、魔力をただ放出するのと区別が付かなくなってしまうこともあるのだ。詠唱破棄はその術を使い込めばそのうち出来るようになり、魔法効果自体は詠唱しているときとなんら違いは出ないということもある。

「別に、飛行魔法程度なら大した苦労をしなくても詠唱破棄できるからな。そろそろ降りるぞ?」

「え、もうちょっと……」

「駄目だ、そんなに長時間飛ぶつもりはないんだ。さっきの奴らが追いかけてきたら騒ぎになりかねないんだぞ」

「じゃあ、また今度」

「機会があれば考えてやる。降りるぞ」

 セラは急降下の後に急停止で着陸という飛行魔法で難しいとされる技術も難なくこなしてみせる。これは魔力操作が甘いと失敗し、大変危険な目に遭う。

「うー、もう少し躊躇したっていいじゃない」

「馬鹿言うな。俺はもののついででやってんだぞ?」

「ついでのわりに騎士ナイト名乗ってみたり、私をプリンセス扱いしたりしたじゃない……」

 言いながらも、私の頬が熱くなっているのが分かった。もしかして、ううん。それこそ馬鹿な話よね。

「深い意味はないから気にするな。というかもうこの状態を止めたいんだが」

「駄目!」

「ったく、ミルを屋敷に連れて行くまでだからな? 俺だって今日は宿の手配しないといけないんだから」

「あ、そうだったわね」

 我ながら自分で操作したことをすっかり忘れていた。

「誰のせいだよ、誰の」

 セラがジト目でこちらを見てくる。

「それより、早く連れて帰ってくれないかしら、騎士ナイトさん?」

 慌てて話題を変えようとする私。うん、悪いことをしたと今更ながら自覚したわ。

「言ったな?ならすぐにでも着いてやる。」

「セラ、笑みが怖い。訂正するからゆっくりして?」

「断る。俺はさっさとミルを届ける」

「そんな、セラは私と居たくないのね……」

 私は泣くようにしてセラに視線を向ける。これで落ちない男はいないはずだ。

「この羞恥状態をなんとかしたら考えてやる!」

 だが、予想に反してセラは無視して走り出した。それにしても、セラはこの街に来て数日しか経ってないはずなのに、どうして道の網羅をしているのだろう?



 こうして、私達はレムクランの屋敷前に着いて、冒頭の騒ぎを起こすことになった。

 もともと資産家屋敷付近に近づこうとする人もそうはおらず、この辺りは静かなものなので多少騒いでも大丈夫だったりする。



「なんで俺がそこまでしないといけない!?」

「いいから、いいから。あ、アートン! こっちこっち!」

 かなり良い体躯の執事であるアートンを門の向こうに見つけたのをこれ幸いと呼んでみる。

「おい、何呼んでんだよ! 俺はここまでなんだろ!?」

「ミルフィリア様、お呼びですか?」

 アートンはセラを無視して、門を開けて出てくる。

「この人をあの件について関わってもらうから、丁重にもてなしてくれない?」

 私はセラを指さしながらアートンに話す。

「あの件、って何なんだ? それに、俺は関わる気は無いと言ったはずだろ」

「このように申しておりますが、どうなのですか?」

「恥ずかしがり屋なのよ。今だってこうして私を抱き上げてくれる人なんだけどね」

「なるほど。いい目をしていらっしゃる、良き御方ですな。かしこまりました」

 アートンの説得はこれで完了である。あとはお父様を説得すればいい。

「私は部屋に戻って着替えてくるから、彼は接客室に通して。セラ、もう下ろしてくれて良いわよ?」

 私はこの状態を少々残念に思いながらも下ろしてもらうようセラにお願いする。

「毒を食らうば皿までってか? やれやれ、本格的に資産家と接触する羽目になるとはね」

 私を下ろしながらセラは若干嫌そうに言うが、顔を見ている限り、そこまで嫌がっているようには見えなかった。

「それじゃ、アートン、よろしくね」

「かしこまりました」

 アートンがお辞儀するのを見た後、私は駆け足で自分の部屋に行く。

 今度はセラと面と向かって喋るのだから、身だしなみを整えたい。そんなことを考えている自分を不思議と疑うこともなかった。

 さすがにこれ以上は投稿しませんのであしからず。あ、さすがにこれは覆りませんからね!←必死


 次回更新は来週末を予定しております。気が向いたら早めに投稿するかもしれませんが、犠牲となる物も多いので、たぶん、そこまで早くはならないと思います。

 ではこれからもよろしくお願いします。

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