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Proving Ground  ~喪失と融合の世界~  作者: 時雨 彰弘
序章:開拓地(フロンティア)と呼ばれる世界で
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第4話「魔獣」

魔獣――それは、存在してはならないもの

そのように定義された魔獣ではあるが、一目でそれが魔獣と判断する方法が一つだけある。目を見ればいいのだ。

魔獣は皆、眼が金色であり、金色の眼を持つものは魔獣なのだ。


===============================<ミルフィリアside>


「なんで、魔獣が、こんなところに……」

「そんなことはわからない。だが、どうする? このままだと二人ともやられるぞ?」

 今日知り合ったばかりのセラがそう言ってくる。だが、私は動くことが出来なかった。

「お母さんを、お母さんを殺した魔獣、いや、こないで、いやぁ!!」

「おい、どうした! おい!」

 彼が私を呼ぶ声がするが、私は小さいころの光景を思い出していた。

 そう、初めて魔獣を見たときにお母さんを食い殺した魔獣。あの時もこんな狼のような魔獣だった。

 私が、泣き出して、街の外に飛び出したために魔獣に襲われ、お母さんは私を庇って死んでしまった。

 私は食べられる直前で救出されたが、お母さんは骨すら残さず魔獣に食べられたのだ。

 私の中で、その光景が何度も繰り返され、そのほかのことが何も分からなくなる。

 しかし、私の頬に強い衝撃が走った。

「!?」

「死にたいのか! 死にたくないならここから逃げろ!」

 彼が私をはたいたのだろう。緊急事態だからこそ、彼を咎めることも出来ない。私は我に返って、現状を認識する。

「逃げるって言っても、すぐに追いつかれるわ!」

「とりあえず、俺が囮になるから、速く逃げろ!」

 一瞬彼が幼い頃に見た母に重なって見えた。

「駄目よ! 私のために命を捨てるなんて!」

「だが、それ以外に方法があるのか?魔獣に対して二人で対抗しようと言うのがそもそもの間違いだ。違うか?」

 そう、それが問題だった。街中で突然魔獣が現れたのも問題ではあるが、それ以前に魔獣は熟練の傭兵十人がかりで下級一匹倒せると言われているほど強い。

 目の前にいる魔獣は下級と言われてはいるものの、こちらは二人。そして、彼には戦闘経験などまるでなさそうな上、私も魔獣相手では足がすくんでしまっている。

「でも、貴方をおいてここで逃げるなんて!」

 その瞬間、魔獣が咆哮をあげる。それは重低音よりももっと大きな、それでいて重圧的な音だった。

「魔法陣だと!?」

「何なの!?」

 最初は彼が言った言葉が理解出来なかった。魔獣が魔法陣を使うなど聞いたこともなかったからだ。だが、現実は違う。目の前で魔獣が魔法陣を使っているのを見てしまった。

「ここを召喚場にする気か!?」

 彼は魔獣がやろうとしていることが何なのか分かったらしい。私が気付いたときには札を投げつけていた。札が魔獣に近づいたとき、彼が指を鳴らし、札が爆発し轟音を発する。

「発火符、なの?」

「ああ、試験でこいつを使った。威力はそれで分かったから、十枚ほどまとめて使ったんだが、どうやら手応えなしだな。」

「何言って、そんな!」

 彼が嘘を言ったわけではないと分かってしまった。魔獣が全くの無傷だったからだ。

「どうしようもないな、こうなると」

「発火符は後何枚あるの?」

「さっきので全部だ。そんな大量にいつも持ち歩くわけがない」

「そんな。そうだ、その刀貸して。私がそれで切るわ」

 彼はさっきそれを飾りと言った。けれど私ならまだ扱えるはずなのだ。

「駄目だ。その前に君が死ぬ」

「やってみないとわからないわよ。それに、貴方の発火符を警戒してこちらを様子見してるし」

「無理なものは無理だ。見たところ君はまだ熟練傭兵一人分の実力があるか無いかぐらいだろう? ならば、無駄死ににしかならない。」

「なんで、そんなことが分かるのよ!」

 そう、彼が言う通り、私の実力は熟練傭兵一人分程度。とてもじゃないが、魔獣に太刀打ちなど出来ない。

「分かるんだよ。分かる気が無くても、見たら予想できてしまう。だから、無理だってこともわかるんだ。」

「それでも、やらないよりはやってから後悔したい! 私は誰かの犠牲の上に生きたくないの!」

 もう、お母さんのように誰かを目の前で失いたくない。彼は私が巻き込んだも同然なのだ。

「逃げろ、と言ったのに、手遅れになったじゃないか」

 だが、彼は冷たい声を出し、諦めたような感情を吐いた。

「何言って……」

「空間を固定された。魔獣がもっと出てくるぞ。もう、逃げることすら叶わない」

 彼に言われたまま周りを見ると、周りの景色は見えず、辺り一面が真っ白になっていた。

「これは?」

「召喚場だ。魔獣が魔獣を呼ぶための空間。こうなってしまえば、魔獣は一度に三十はでてくるだろうな」

「それは、諦めるしかないわね」

 私はその事実を知って、地面に膝をつく。視界には彼の言った通り、魔獣が次々と現れていた。

 だが、彼は、セラは、全く絶望などしていなかった。

「……やはり、レヴァは異常地帯と化していたか。街中での出現といい、いきなりの召喚場の展開。何かがあるのだろうが、それを調べるために俺は来た」

「セラ?」

「安心しろ。君は俺が守ろう」

 彼はとても、とても優しい笑顔を私に向けた。

 その後で彼が戦う者になったことがよく分かった。


===============================<セラside>


たった・・・三十程度で俺を止められると思うなよ?」

 俺はこんな自分が普通の人間とは思っていない。だが、この程度なら腰を抜かしている彼女もそのうち倒せるようになるであろうことは容易に想像できた。

「セラ、貴方一体……?」

 俺はその質問には答えない。答える気などもとから無かった。

 そこに、魔獣が三匹、こちらに突っ込んできた。

「様子見か、良い判断だ、だが!」

 俺は刀を構え、魔獣との距離を詰め、即座に抜刀、三匹同時に切り裂く。

「刀を抜いたんだ、おとなしく滅せられればいい」

「たった一閃で三匹同時に消滅させたの? そんな、下級とはいえ魔獣をそんなあっさり!?」

「この刀は『光陰』という。俺の愛用の刀だ」

 今度は五匹、こちらに向かってくる。だが、所詮は雑魚。一刀のもとに切り伏せる。

「飾りだって言ってたじゃない!!」

「あのな、こんなことできる奴を学園が置いとくと思うか? 普通に暗殺対象だぞ、俺」

「何言ってるの? そんなことあるわけないじゃない」

「馬鹿言うな。俺が今葬った魔獣が八匹。通常八十人で倒す量だ。そんな奴が街中で暴れ出してみろ、手に負えるわけがない」

「まさか、そんなことが!」

「人間ってのは、あまりに強い者が近くにいると排除するように出来てるんだよ」

 そんなことを話してる間に八匹ほど周りを囲んでこちらに迫る。

「フィボナッチ数列じゃないんだから、変な規則性で襲ってくるなよ!」

 かくいう俺は、走り回りながら魔獣がレムクラン嬢に飛びかかる前に全て切り裂いている。

「貴方のその剣技はどこで?」

「そんなのは後だ。さっさと残り切り伏せて、ここから出るぞ」

 残りの魔獣は十弱。ならば一気に片付ける技を使えばよい。俺は技のために刀を鞘に収める。

「簡単に言わないでよ!」

 レムクラン嬢がわめいているが気にしない。俺は技を使うタイミングを見ていた。その瞬間は意外に早く来た。

「殲滅陣」

 技名と共に俺は突撃し、抜刀から順に魔獣群を陣を描くようにして攻撃していく。最後は描いた陣に納刀と同時に魔力を通して、跡を残さないように抹消して完了。

「今の、何?」

「……面倒だから説明はパスだ。ここから出るぞ」

「あの、セラ?」

「何だ?」

 俺は刀を構え、空間の壁を切り裂く。切り裂いた部分が次第に大きくなり、空間そのものが崩れていく。

「腰が抜けちゃったから、手、貸してもらえない?」

「馬鹿言うな」

「冗談じゃないの」

「本気か? 俺が、おまえを運ぶのか?」

「うん、そうしてほしいなって」

「あー、レムクラン嬢その前に二つほど条件があるからそれを呑め」

「条件?」

「一つ目、今のことは無闇に喋るな。むしろ誰にも言うな。二つ目、俺に頼ってもろくなことにならないと思うが、これ以上俺に関わるな。」

 これは今後のためにも必要なことだ。もう誰も俺に関わらせるべきではない。

「うーん、一つ目はいいけど、二つ目はヤダ」

「何言っているのか分かってるんだろうな!?」

「分かってるわよ。貴方の近くにいたら守ってくれそうだってことが」

「分かってないだろ!? 俺は誰かを守ることなんて出来ないぞ!!」

「今、私を助けたのは貴方よ?」

「それは成り行きだろう!?」

 こいつ、ああいえばこう言ってくる。どうしろと言うんだ?

「それと、私のことは今後『ミル』と呼ぶこと、良いわね?」

「何言ってるんだ? レムクラン嬢を愛称で呼ぶとかしたら俺が困るだろう?」

「ミル」

 レムクラン嬢が泣きそうな顔でこちらを見てくる。泣き落としと来たか。しかし、俺はその手には乗る気は無い。

「だから、俺は」

「ミル」

 最後まで言わせてくれないどころか、むしろさっきより状況が悪化している風である。ああ、駄目だこれは。

「……わかった。ミル。今後はそう呼ばせていただきます」

 先に俺が折れる羽目になった。完全に負ける羽目になるとは、ね。

「じゃあ、お姫様抱っこで連れてって」

「何故そうなる?」

「いいから早く」

「いや、待て、何故決定事項なんだよ」

「セラが私を愛称で呼ぶようになったから、記念に」

「どんな記念だ、ミル!」

「いいから、ね?」

 ものすごく熱い視線をこちらに向けてくるミル。絶対にこれは折れないと判断出来た。

「……わかったよ」

 愛称で呼ばせた超絶美少女をお姫様抱っこで連れて帰るという大変な事態に発展することになるとは思っていなかった俺が居た。

連続投稿終了。

書き溜めとか一切せずに一日で勢い余って掻いてしまったのであまり出来は良くないと思いますがご勘弁を。

次回は書き溜めてから投稿したいと思います。

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