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人斬り、一人……

夜道。俺は提灯を片手に、考えていた。出るという。幽霊ではない。怪物ではない。そんな妖怪変化ではない、何か。何を恐れるものか。山崎五大酷の一人とされる、俺の敵ではない。返り討ちにしてくれる。この夜道に現れる、人斬り。見るものすべてを射すくめるという、腕利きの辻斬り。何を恐れるものか、と思っていたのは、その男と相対するまでだった。


「あ……」


俺は運がなかった。だが命がある。これで差し引き、こんなものだろう。差し引きの話をするなら……まだやることがある。礼を言っていたと、伝えてくれ。俺はそう言い残して、その場を去っていった。


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