キレてないっすよ
準備を整えて、ゴブ太郎と軽く打ち合わせをした。
「よし、覚悟はいいか?」
「ゴブ!」
「俺やってやりますよ!」って鼻息荒くフンスフンスしているゴブ太郎。
よっぽど鬱憤が溜まっていたのか、目をギラギラさせててちょっと怖い。
なんか、滅多にキレない奴が突然爆発して「うわぁ……」ってなる、なんとも言えない雰囲気がある。
「う、うん、気合入れすぎて空回りしないようにな? じゃ、行くぞ!」
ゴブ太郎と一緒に、もみ合うフリをして店から転がり出る。
ガシャン!
派手に音を立てて、コンビニの自動ドアをくぐる。
外で俺の投げつけた袋を漁ってた棍棒ゴブリンとナイフゴブリンが「ゴブ!?」ってギョッとする。
「う、うわぁ、やめてくれぇぇ!」
「ゴブゴブゴブぅっ!」
俺はゴブ太郎に強めに尻を蹴られ、その勢いで前のめりになって倒れる。
「っ! ちょ、痛ったいな!」
「ゴ、ゴブ!」
おい、演技だっつってんだろ!
何嬉しそうに笑ってんだよ!
あれ? 演技だよね?
仲間になったよね?
ヒーヒー言いながら四つん這いなり、情けない声をわざと上げて油断を誘う。
それを見て、持っていた袋の中身を投げ捨てて、ニヤニヤと笑いながら近づいてくる2体のゴブリン。
あ、こいつら俺のポテチ食いやがったな!
後で食べようと思ってたのに!
許さん!
食い物の恨みはデカいんだぞ!
「ゴブブフゥ!」
「ゴブッ、ゴブ!」
棍棒持ちがいやらしい笑顔で棍棒を振り上げる。
ナイフ持ちはボロいナイフをチラつかせて、なんか楽しそうに笑ってる。
よし、油断しまくってるぞ。
もう少し近づいてこい!
「た、助けてくんろぉぉぉ!」
「ゴブゴブ!」
ダメ押しでさらに情けない声を上げる。
俺のナイスな演技に気を良くしたのか、棍棒持ちが手を伸ばせば届く距離まで無防備に近寄りやがった。
よし、今だ!
「フハハ、馬鹿め! くらえ!」
拝借した不意打ちアイテム――殺虫剤を握りしめ、棍棒ゴブリンの顔にシューッ!
「ゴブァ!?」
棍棒ゴブリンが棍棒を取り落とし、目を押さえて叫ぶ。
近寄ってきたナイフゴブリンにも、すかさずシューッ!
「グギャぁ!」
こいつも目を押さえて地面を転がる。
2体とも目潰し成功!
ざまぁみろ!
「フハハ! ゴブリンなんぞ虫と同じだ! どうだ、〇キジェットの味は! ほらほら、たーんと食らうがいい!」
「「ギャァぁっ!?」」
さらに、追いゴ〇ジェットでゴブリンどもをテッカテカにしてやる。
ゴブリンは無駄に数が多いってのは、ラノベでよくある設定だからな。
Gみたいに1匹見たら30匹はいるんだ。
「よし、ゴブ太郎! チャンスだ!」
「……ゴブ」
ゴブ太郎が抗議するような目をしてこちらを見てくる。
なんだよ、雇用主に文句でもあるんか?
俺虫嫌いなんだよ。
何か言いたげなゴブ太郎を無視して、俺は金属バットを構えてナイフゴブリンの頭を狙う。
ガツンッ!
鑑定通り、弱点の頭にクリーンヒット!
頭がグチャッと潰れて、ナイフゴブリンがキラキラ光って消滅、魔石がポロッと落ちる。
ゴブ太郎も負けじと素早さ高を活かして、起き上がってきた棍棒ゴブリンに飛びかかる。
小柄な体でガツンとタックル!
棍棒ゴブリンが「ゴブッ!」って倒れる。
ゴブ太郎が棍棒ゴブリンを押さえつけて、俺を見る。
「ゴブ!」
「お前、めっちゃやるじゃん! よし、トドメだ!」
バットを振り下ろし、棍棒ゴブリンの頭に直撃。
ゴキャ!
2体目も光になって消滅。
「はぁ、はぁ、よし、勝ったぞ! やったな、ゴブ太郎! これでもういじめられなくて済むぞ!」
「ゴブー!」
ピロン!
スマホが鳴る。
画面を見ると、
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《レベルアップ! レベル2→3》
《スキル獲得:魔物教育》
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「おお、マジか! レベル上がった! スキルも!」
「ゴブゴブ!」
ゴブリン2体倒したんだ、当然上がるよな。
新しいスキルも覚えて、最高だな!
なんか、めっちゃ嬉しそうな顔でゴブ太郎が隣で跳ねてる。
その姿が犬みたいで、なんかこう、ゴブリンも可愛く見えて……。
こないな。全然。
よく見ると、いや、よく見なくても顔不細工だし。
え、俺これからこいつ連れて歩くの?
マジかよ。
「ゴブ?」
「あ、えっと、良かったな、ゴブ太郎!」
「ゴブ!」
うん、嬉しそうで何より。
でも、喜んでる場合じゃねぇ。
ちょっと近くのコンビに行くのに4体と遭遇とか、この辺ゴブリン多すぎじゃね?
さっき言ったみたいに、マジでゴキブリ並みにいるのかもな。
「……ゴブリンじゃなくて、ゴキブリンじゃねぇか」
「ゴブ?」
またエンカウントしないうちに、リュックとレジ袋を背負い直し、ゴブ太郎を連れてアパートに急ぐ。
「よし、ゴブ太郎、行くぞ!」
「ゴブ!」
遠くでまたサイレンが鳴る中、俺は新しい仲間、ゴブ太郎を引き連れてアパートへの道を急いだ。




