表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/74

この素晴らしいおっ◯いに祝福を

 あぁ、素晴らしきかな、おっぱい。

 この世の理を超えた柔らかき峰――。


 腕に全神経を集中してると、吸血鬼が不満そうに頬を膨らませてた。

 こいつ、どんな顔でも美人だな。


「……ちょっと。何よその顔。だらしない」

「ん? ハハッ、なにがだい? おっふ」


 やめてくれ、今は神聖な儀式の途中なんだ。

 大いなる母性と精神的対話の最中なのに邪魔すんなや。


「んっんー、それよりも君は早く手当てに行きたまへよ」

「なんなのそのキャラ、気持ち悪い。はいはい、行きますよっと。……まったく、もう」


 吸血鬼はこちらをジト目を投げつけてから、避難民たちの手当てへ向かった。



 ☆



「あの、望月さん。それで、身体は大丈夫なんですか? 血塗れで……」

「ああ、これ? 大丈夫、全部仮装用の血糊だから。ここに来る間にちょっと拝借してね……っと、ほら」


 さすがド◯キ、サバイバル用品から地獄演出までなんでも揃ってる。


 改めて自分の格好を見ると……うん、全身真っ赤だもんな。

 そら心配にもなるわ。


 包帯を外して顔を見せると、梅野さんはホッと息をついた。


「梅野さんは? 竹原になにかされてない?」

「私は、何も。けど、他の人たちが……」


「望月さん……!」


 呼びかけてきたのは、松下さんだった。

 軽く息を切らしながらも、その目には安堵の色。


「無事で、本当に良かった」

「すみません、遅くなって。結局、偵察の報告もできないまま捕まっちゃって」


 俺はこれまでの経緯を掻い摘んで説明した。

 例によって、報連相は簡潔に、だ。


「なるほど……そんなことが」

「でも良かったですね、望月さんに怪我がなくて」


「いやぁ、まぁ、なんとかって感じですね。間に合わず申し訳ないです」

「言ったでしょう。無事で帰ってきてくれればそれでいいと」


 松下が安心したように俺の肩を叩く。

 梅野さんも涙ぐんでて、上目遣いにこちらを見てくる。


 やっぱ可愛いなこの子。

 吸血鬼とは違うタイプの可愛さ。

 そして、なにより、神乳!


「……しかし、竹原くんの様子は酷いですね」

「いやぁ、まさか漏らすほどビビるとは。やった俺が言うのもなんですけど」


「慎ちゃん、ホラーが昔から苦手で……子供の頃なんて、トイレも一人で行けなくて私が付き添ったくらいですから」

「そう言えば二人は幼馴染って言ってたっけ。じゃあ今回の『竹原ドッキリ大作戦』がうまくハマった感じか」


 てか、アイツ、そんなヘタレのくせにあんなイキってたのかよ。

 逆にすげぇわ。


「まあ……人は見かけによらないものですね。とりあえず、彼は拘束しておきます。さすがに着替えはさせますが」

「まぁ、あのビジュとスメルは迷惑ですからね」


 でも、目を覚ましてまだ態度が悪いなら、反省するまで放置でもいいと思うけどね。

 プライドの高そうなあいつにはちょうどいいだろ。


 ちらっと見ると、桐生が放心した竹原に毛布をかけていた。


「……あの人、まだ面倒見てるんですね」

「桐生くんは彼を人一倍気にかけていました。態度の悪さで皆が彼を見放す中――唯一、『俺が立派な警察官にしてやる』と」


 松下の声音が、どこか遠い。


「彼には亡くなった弟さんがいまして。竹原くんに重ねていたのかもしれません」

「……そうですか」


 重ねるにしても他にいるだろ。

竹原なんかじゃなくてもっとマシな奴に重ねればいいのに。 


 俺が微妙な顔をして桐生さんを見ていると――


「話してるとこ悪いけど、応急処置は終わったわよ」


 吸血鬼がさらりと割り込んできた。

 彼女は血液魔法で避難民たちの止血や警察官の手当てを終え、どこか涼しい顔で戻ってくる。


「そう言えば、気になっていたのですが……彼女はあなたの?」

「お察しのとおり、俺の仲間です。彼女は吸血鬼、例の『魅了』の使い手です」

「他にも魔法も使えるわよ。私、けっこう便利なのよ、こう見えても」


 吸血鬼が軽く顎を上げ、どこか誇らしげに笑う。


「いや、便利って言い方よ……。お前の過去を知ってる身としては反応に困るぞ、それ」


 そんな軽口に、松下さんは僅かに目を細めた。


「……仲間、ですか」

「ええ。まあ……いろいろあって。彼女、死にかけてたとこを竹原に救われて、それを恩に感じて言いなりになってたっていう――すげぇ面倒くさいやつです」

「めんどくさいって何よ!」


 吸血鬼が即座にツッコミを入れる。


「いや、だって事実じゃん。恩義とか筋とか、そういうの妙にうるせぇし」

「当然でしょ? 借りを返すのが筋ってものだわ」


「それでやったのが竹原のパシリって時点で……めんどくさい、というか馬鹿だろ」

「なっ、言い方ぁっ!」


 漫才のようなやり取りに、松下さんが軽く笑う。その目は少しだけ柔らかい。


「なにはともあれ、丸く収まったみたいで良かったですね」

「……まぁ、そうですね。彼女はこういうやつなんで」


「それにしても、吸血鬼……。本当に存在したとは……さすがファンタジー」

「ゴブリンとかオークよりはよっぽど現実的でしょ?」


「確かに、人間にしか見えねぇもんな。お前、めちゃくちゃ美人だし」

「ふふん、そうでしょ? もっと褒めてくれてもいいのよ」


 コイツ、ちょっと褒めてやるとすぐ調子に乗るな。

 話せば話すほどポンコツ感がマシマシだ。


「で、彼女は……こことは違う世界で、人間たちにひどい扱いを受けてたんです。それで――」


 俺が言いかけたところで、吸血鬼が軽く肩を竦めた。


「まぁ、過去の話よ。もう気にしてないわ。というより、さっきも言ったけど――どうでもよくなっちゃったの」

「……強いですね」


「ふふ、強くなきゃ、生きてこれなかったもの」


 その微笑みには、どこか影が差した気が――。


「いや、ただの勘違いだっただけだろ。なにぶってんだよ、ポンコツ枠のくせに」

「だ・か・ら! 言い方! もっと言い方考えなさいよ! 傷心の乙女の傷口を抉るようなこと、よく言えるわね!」


「乙女ねぇ……あ、まぁ乙女だったな。いや、すまんすまん」

「ちょっ……! ほんっとデリカシーない! ちょっと、その憎たらしい笑顔やめなさいよ!」


「……なんか、すごい仲良しですね。知り合ってすぐとは思えないくらい」


 梅野さんの目が細まる。

 声がちょっと尖っていて、拗ねてる感じというか……。


「いやまぁ……コイツ、見た目クール系だけど、中身ポンコツなんで。扱いもこうなるというか」

「……ふぅん」


 あれ、なんか怒ってる?

 やっぱりチラチラおっぱい見てるの嫌だったかな。

 いいって言ったよね?

 今さら取り消しとかやめてよ?


「あなた……ウメノって言ったわね。ふふ、私たちが恋人みたいに仲良しだから、妬いちゃった?」

「や、妬いてなんかないですよ!」


「あら、拗ねた顔も可愛いわ」

「な、なに言ってるんですか……!」


「だろ? 梅野さんは可愛いんだよ。あと、お前も適当なこと言うな。誰が恋人だ」

「いいじゃない、貴方の想い人がどんな子か気になったんだから。ふぅん、貴方こういう子がタイプなのね……」


「お、想い人……っ!?」

「ほらぁ、やめろよマジで! 梅野さん違いますからね! こいつが勝手に言ってるだけなんで……っておい」


 俺と梅野さんが慌てる隣で、おもむろに吸血鬼が胸の下で腕を組み、これでもかと張りをアピールしてくる。

 なお、吸血鬼の視線は梅野っぱいを凝視している。


「な、何してるんですか?」

「……急にどうしました?」

「……何やってんだお前」


「……別に? いつもこうよ私は」


 俺達3人の視線を受けて、さらに吸血鬼がムギュッと胸を強調し始めて……って、デカっ!


 コイツ、ノーブラ疑惑がある中でこの大きさ……ブラによる補正がないのに……やるな!


「ふふん、どうかしら」

「え、え、?」

「……」


 吸血鬼の胸が、ゆさ、と揺れる。

 梅野さんは完全にフリーズ。

 松下さんは……あ、顔が「無」だ。


「お前なぁ……」

「なによ」


 吸血鬼のおっぱいは、確かにデカい。

 さすが戦闘力95。

 アンダーも細い。

 思わず「Perfect Body(小杉感)」と言葉が漏れる。


 だが――



 神乳の前では、霞む。




「ふぅ……梅野さん、ちょっと軽く胸張ってくれますか?」

「えぇ!? 私もやるんですか!?」


「是非、お願いします。勘違いしている凡夫に、格の違いってやつを教えてやりましょう」

「えぇ……、はぁ、少しだけですよ」


「ふふ、見せてもらおうじゃないの! 神乳とやらの……って、デッッっ!」


 はは、そうだろう、そうだろう!

 見よ、この見事なまでのチョモランマを。

 いや、マジでデッッッッッ!


「……分かったか。お前の乳も実に見事ではある。だが、梅野っぱいは次元が違う」

「くっ……話には聞いてたけど、まさかここまで……! 貴方が見惚れちゃうのも分かるわ」


「だろ? 梅野さんは凄いんだ! 国宝だぞ! この国の宝なんだぞ!」

「そうね、彼女は守るべき宝だわ!」



「……すみません、あなたたちは何をやっているのですか? この場には私もいるのをお忘れなく」

「……はぁ、望月さん。相変わらず変態ですね」


 松下さんの顔が「無」を通り越して、もはや「悟り」を開いた仏みたいになってる。

 さすがベテラン警察官、神乳をもってしても動じない精神力。

 年齢的にも仏に片足突っ込んでるだけある。

 あと、お願いだからその顔でじっと見つめてこないで。なんか夢に出そうで怖いから。


 そして、梅野さん。

 真っ赤な顔で小さくため息。

 嫌そうなのにちゃんとノッてくれる優しさ、めっちゃかわいい。

 おもっクソ地雷踏んづけて爆発させてから、吹っ切れた感すごいな。


「ありがとうございます! 変態とかそんな褒めないでくださいよ」

「褒めてません。心配して損しました。吸血鬼さんにもセクハラして。こんな美人さんに何やらせてんですか」


「いや、コイツのは俺がやらせてるわけじゃ……。でも梅野さんも相変わらず神乳っす、最高」

「……何言ってんですか、変態」


「ふぅん……なによ、貴方達も仲良しじゃない」


 吸血鬼が肩を竦めて口を尖らせた。


「俺は神を崇めてるだけだ、他意はない」

「なんですかそれ……」


「ふぅん、もっと大きくならないとダメなのかしら……」


 そう言って、吸血鬼は胸を張り、下から持ち上げてゆさゆさと揺らす。


「おい、それやめろって! やるなら二人きりの時にしろよ、なんか勿体ない!」

「あら、いいわよ?」

「ちょっと、望月さん! 二人きりってなんですか!」

「……」


 顔が死んでる松下さん、苦笑いの梅野さん。

 避難所の空気が、少しだけ和んだ気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ