エンカウント
ドアを開け、マンションの廊下に出る。
静まり返ってるかと思いきや、遠くでドン!って爆発音みたいなのが響いて、心臓がビクッと跳ねる。
「うっ、なんか外マジでヤバイな……。やっぱり今日はやめとこうかな……」
意気揚々と出てきたものの、いざ現実を目の当たりにすると足が震える。
「……いや、今動かないと絶対後悔する。こういうのは初動が大事って、ラノベに書いてあったんだ」
震える足をなんとか動かし、ビビりながら階段を下りて外に出る。
アパート前の道路はガランとしてて、人がいない。
普段なら朝の通勤時間で人や車が行き交ってるはずなのに、今は静かすぎる。
「いや、静か……じゃねぇな」
道の向こう、コンビニの駐車場あたりで、なんか動いてる影が見えた。
デカい犬……じゃない、あれ、ゴブリンだ!
緑色の肌に、ボロ布みたいな服着て、棍棒持ってる不細工なやつ。
ゲームで見たことあるような、典型的な雑魚モンスター。
「うぉ、早速エンカウントか!?」
ゴブリンはまだこっちに気づいてないみたいだ。
距離は……20メートルくらいか。
SNSで見た情報だと、「ゴブリンは群れで行動する」、「単体なら弱いけど、数が多いと厄介」って話だった。
周りを見回すと、幸いこいつは単体っぽい。
スライム探してぶらつくのもいいけど、せっかくのチャンスだ。
魔物雇用の初陣、試してみるか!
「でも正面から突っ込むの怖ぇ……」
ゲームなら、こういう時は不意打ちが基本だ。
コンビニの駐車場脇に停まってる車に隠れながら、ゴブリンに近づく。
金属バットを握りしめ、息を殺して物陰から様子をうかがう。
「ふぅ、大丈夫、大丈夫だ。こんな状況、今までに何度もあった」
ゲームで、だけど。
気分はスニーキングミッション中の傭兵だ。
ゴブリンはコンビニのゴミ箱を漁ってるみたいで、背中を向けてる。
チャンス!
心の中で「魔物雇用!」と気合を入れて念じる。
「もし!? そこのお方! お、お主も俺の仲間になって、一緒に終末世界をトゥギャザーしようぜ!」
……って、緊張と恐怖で焦りすぎて変なこと口走ってる!?
「……ゴブ?」
ゴブリンがビクッと反応して、こっちを振り向く。
だめか!?
でも、ゴブリンの目が一瞬ボーッとしたように曇る。
「お、おぉ……やったか!?」
「……ゴブゴブ」
ゴブリンがなんか呟きながら、棍棒を下ろす。
「お、マジか? 仲間になるか!? 無休無給だけど」
「ゴブっ!?」
……と、思った瞬間、ゴブリンの目が急にギラッと光って、棍棒を振り上げてくる!
「うおっ、ダメだった!? なんでぇ!?」
俺の腰くらいの高さしかないゴブリンが、異様にでかく見える。
「うわ、うわわわっ!」
咄嗟に金属バットを振り抜く。
リーチの差からか、ゴブリンの棍棒が俺にめり込む前に、不意打ち気味にバットがゴブリンの頭にクリーンヒット!
ゴッ!
鈍い音がして、ゴブリンが「グギャ!」って変な叫び声を上げて倒れる。
「い、いまだ! 殺らなきゃ殺られる!」
すかさずもう一発、倒れて頭を押さえてるゴブリンの頭部にバットで追い打ち。
ゴキャっ!
ゴブリンの体がビクッと震えて、全身がビンっと硬直する。
「うおぉぉぉお!」
ゴッ、ゴッ、ゴキャ、ゴスッ!
何度も何度も、小さな頭めがけてバットを振り下ろす。
バットが頭にめり込む度に、衝撃が伝わってきて手が痺れてくる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
数秒後、頭がぐちゃぐちゃになってビクビクと痙攣しているゴブリンは、突然キラキラした光の粒になって消滅。
「死んだ、か? 仲間になるかと思ったら、消えちゃったよ」
肩で息しながら、金属バットを地面に突いて立つ。
ダメだったか。
それよりも、想像以上に怖かった。
心臓バクバクだ。
でも、なんか……めっちゃアドレナリン出てる気がする!
モブの俺が、ゴブリンに不意打ちとはいえタイマンで倒せたぞ!
ゲームなら「かいしんのいちげき!」って感じの爽快感だな。
地面を見ると、ゴブリンが消えた跡に小さな石がコロンと転がってる。
「お、これが魔石ってやつか?」
恐る恐る拾ってみると、さっきのスライムの核より少し大きい。
ビー玉より一回り大きくて表面はザラザラ、なんか濁ってて不気味だ。
試しに握ってみると、こいつもパキッと簡単に砕けて、光の粒がスマホに吸い込まれる。
ピロン!
スマホを見ると、画面にメッセージが。
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《レベルアップ! レベル1→2》
《スキル獲得:魔物鑑定》
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「おお、マジか! レベル上がった! スキルも増えた!」
急いでスキルをタップして詳細を確認。
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・魔物鑑定
魔物を鑑定する。成功すると、魔物の能力や弱点、好みが分かる。レベルが上がると成功率上昇、より詳細に情報を得られる。鑑定方法はスマホのカメラで対象を撮影すること。
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「おぉ! ここで鑑定来たー!」




