おお、ゆうとよ しんでしまうとはなさけない
落ち着け、落ち着け、望月友人。
素数だ、素数を数えると良いって有識者も言っていた!
1……2……3……何……カップ……あるんだ……9……90、いやそれ以上……100……?
「……ふぅ」
喉がカラカラだったせいか、水がうまい。
口の中に冷たさが広がって、少しだけ落ち着く。
「……ちょっと、暑くないですか?」
「あ、あー……たしかに、ちょっと暑いかもですね」
避難所の中は人が多くて、空気がこもっている。
エアコンは動いてるみたいだけど、湿気のせいか蒸し暑い。
「すみません、ちょっと上着、脱いでもいいですか?」
「あ、はい、ど、どうぞ!」
俺は「暑いなぁ〜」なんて言いながら、作業着の上着を脱ぐ。
下はTシャツ一枚。背中に汗が張りつく感覚が気持ち悪かった。
腹に入れたジャ◯プが恥ずかしい。
さりげなく背中に回しておく。
「そういえば……私も、少しだけ暑いですね」
「なっ!?」
そう言って、梅野さんが薄手のパーカーを脱ぐ。
その瞬間、俺の世界がスローモーションになった。
――デッッッッッ!!!!
あれだ。
さっきの見間違いじゃなかった。
こいつ、ガチだ。
反則級のやつだ!
「? ど、どうしました、望月さん?」
「い、いえ、でかッ、いや、エッ!?」
マジか……。
テーブルに載ってるよ。
小玉スイカ、いや、メロンか?
「い、いや、その、さっきの話だけど。そんなだと重くないかなって……いや、性格! 性格の話ね!」
「え? あ、はい、そうですね。確かに、私、重い……ですよね」
「そ、そうでしょう? いつ、いつからそんな?」
「えと、昔からです。小さい頃からこんな感じで……。これが原因でイジメられたりもしましたし」
「な、なるほど。そういうの、よく聞きますもんね」
いかん。
俺何を言ってるんださっきから!
言葉のチョイスがマズい!
こんなの今の世の中一発アウトだ!
セクハラ、ダメ、絶対!
俺は誤魔化すようにペットボトルの水を一口飲む。
冷たい水が頭を冷静にさせる。
そうか、小さい頃から……。
やっぱり重いんだなぁ。
「……あの、望月さん、大丈夫ですか?」
「え、えっと、はい! 俺は至って冷静ですよ! 冷静に事を進めて行きたいと思います!」
「はぁ……?」
梅野さんは首を傾げて不思議そうな顔だ。
ヤバい、おっぱい効果でメッチャ可愛く見える。
元々顔は可愛らしいなと思ってたけど、今は余計にそう思える!
くっ……!
これがおっぱいの魔力か……!
さすが終末世界! 一筋縄じゃいかないぜ!
クールだ、クールになれ望月友人!
「……で、ちなみに、そのおっぱ……それって肩凝らないんですか? ほら、その、色々気遣うでしょ?」
「え、あ、肩ですか? まぁ、……凝り、ますね。あの、正直、無理……してます」
ダメだ。
その"無理してます"って言い方、ズルい。
俯きながら色気のある声で囁くとか……エロい。
単純に、エロい。
「ですよね! 分かります分かります! 凝るよね、やっぱり! それに、生活にも支障ありそうだし」
「……そう、そうなんです。特に、他の人は気になるみたいで。私は普通にしてるつもりなんですけど……」
「でしょうね! 俺も気になりますもん! というか、もはやそこしか見てませんし!」
止まらない。
セクハラが止まらない!
耐えろ、耐えるんだ!
これ以上はいけない!
「え……望月さんも、やっぱり……。嫌ですよね、こんな根暗で役立たずな重たい女なんて」
「いえ! 俺は大好きです!」
はい、大好きです!
大事なことだから口と頭で2回言います!
「だい……え? えぇ……!? あの、それって……」
「いやもう、驚きですよ。どうして今まで隠してたんですか!? これほどのポテンシャル、国家レベルの財産ですよ!? あ、性格の話ですけど!」
特別天然記念物、認定!
いや、何言ってんだ!
くそっ! まさか俺が脂肪の塊一つ、いや二つでこんな取り乱してしまうとは……!
自分が情けない!
はっ!?
違う、これはスキルだな!
きっとこの子、『魅了』とか持ってるんだ!
ジョブは『サキュバス』だ、間違いない!
「こ、国家……? あの、そんな大げさな……。その……恥ずかしいです、やっぱり」
「恥ずかしがる必要なんてない! むしろ誇ってください! 胸を、胸をもっと張って! 重たい? 結構! なら、俺が支えます! いや、支えてもいいですか!?」
あぁその“恥ずかしいです”の言い方やめろ、やめてくれ。
声が柔らかくて、語尾に色気が乗ってる。
耳が喜んでる。
あれ、美鈴さんはサキュバスって言った?
サキュバスは魔物……なら、雇用できる!?
「いやぁ、こんな素晴らしいモノをお持ちだなんて、最初から言ってくれればいいのに! 良ければ、もっとお話したいです!」
言葉の勢いが止まらねぇ!
何を堂々とボディサポート宣言してんだ!
いやでも支えたい、全力で支えたい。
理性の声が小さくなってきてる、やばい。
「あ、あの、すみません! あの、あの、恥ずかしいので、そのくらいに……。でも、その、そんなに私の性格を褒めてもらって、えと、ありがとう、ございます……」
「いえ、こちらこそありがとうございます!
俺、おっぱい大好きなんで!」
「え? おっぱい……?」
「え? あ……」
――はい死亡。
社会的に、俺は今この瞬間、消滅した。
理性、戦死。
本能、暴走。
でも後悔は、してない。
ありがとうございます。




