表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

報連相

 駐車場の中央。

 ゴブ太郎はそのボロボロの身体を引き摺りながら、それでも懸命にホブゴブリンへと立ち向かっていた。


「ゴブぅっ!!」


 振り下ろすナイフは既に半分折れている。

 片方の腕からは血が流れ、ダランと垂れ下がって動かない。

 足はもうフラフラで、立ってるのさえやっとのはずだ。


 でも――それでもゴブ太郎は諦めない。

 必死に食らいつている。


「ゴブ……!」

「ほぶほぶっ!」


 ドゴっ!


 だが、ホブゴブリンには届かない。

 頑張りも虚しく、まともに一撃を食らい吹き飛ばされるゴブ太郎。


「ほぉぶ、ほぶほぶぅっ!」


 勝ち誇った声を上げ、巨体を震わせて笑う。

 盛り上がった大胸筋と血痕が浮き出てピクピクしている鉄のような腕を誇示するように、余裕のポーズを取ってみせる。


「げぶっ、ご、ゴブっ……!」


 ゴブ太郎は血を吐きながらも、まだ戦う意思を失わない。

 ヨロヨロと起き上がりホブゴブリンを睨みつける。


「ほぶ、ごぶりん」


 その笑みはさらに歪む。

 ホブはトドメを刺さんと拳を振り上げ――





「ごぶぅ……!」




 ――鋭い声が場を裂いた。


 振り返るホブ。

 その視線の先に現れたのは――ゴブ太郎の姉、ゴブリンの王女。


「……ごぶごぶ」

「……ほぶぅ?」


 ホブゴブリンが姉ゴブの言葉を聞き、姉ゴブの隣に視線を向ける。


 その先にいるのは――1人の人間の♂。

 そう、俺だ!


 姉ゴブにケツを押されて前に出る俺。

 ホブゴブリンが一歩、また一歩と笑みを浮かべながら近づいてくる。


 てか、こいつ近くで見ると筋肉ヤベェ!

 圧迫感すごっ!

 身長も俺よりちょい低いくらいか?

 でも鍛えられた筋肉のせいで横幅がヤベェ!

 肩に重機背負ってんのかい!


 そんなホブは俺の前に立ち、ジロッと上から下まで俺を見る。


 よし、ここだ!


「た、助けてくんろぉぉお! 無理! 怖ぇって! マジで無理無理! 死ぬってマジで!」


 ここ一番の情けない声をあげて足がガクガクしている俺を見て、ホブはニヤリと口角を吊り上げる。

 ……打ち合わせ通り、どうやら姉ゴブが「この人間は妹のお気に入りだ」と説明したらしい。


「ほぶ……?」

「……ごぶ」


 ドン!


 ホブの笑みに、姉ゴブは俺を思いっきり後ろから蹴り飛ばす。

 強めに尻を蹴られ、その勢いで前のめりになって倒れる。 


「ぐぉぶぁっ!? ちょ、お前痛ったいな!」

「ご、ごぶ……!」


 おい、演技だっつってんだろ!

 打ち合わせにない本気蹴りすんなよ!

 お前ら姉妹は揃いも揃って、俺の尻に厳しいんだよ!!

 何嬉しそうに笑ってんだよ!

 ゴブリンみたいな声出たじゃねぇか!

 ……あれ? 演技だよね?

 仲間になったよね?

 大丈夫そ? 


 ヒーヒー言いながら四つん這いなり、情けない声をわざと上げて油断を誘う。

 アワアワと情けない声を上げ必死に助けを乞う俺を見て、ボブと姉ゴブは二人して声を出して大笑い。


 え、姉ゴブ、マジで仲間だよね?

 めっちゃ笑うじゃん。

 雇用した魔物が裏切るってありえんの?


「おい、待て、お前! まさか、マジで裏切――ぐぁぇっ!?」


 衝撃が腹に走る。

 胃袋が逆流するような衝撃で、地面をのたうち回る。


 なんだ、息ができ、っ、痛、…、!

 こいつ、腹を……っ!?


「げぼっ、がっ、はぁっ、はぁっ!」


 クソがっ! いってぇぇぇぇぇ!! マジで死ぬ! しぬしぬしぬしぬ! 息できねぇっ! 


「こいつ、マジ、ふざけんなよ!」

「ゴ、ゴブゥゥゥっ!!」


 涙目で叫ぶ俺を見て、今にも飛びかからんとゴブ太郎が激怒。


 ……お前、俺がやられてそんな怒ってくれんの?

 なんか、嬉しいけど……ごめん、ちょっと引くわ。

 

 しかし、ホブは余裕の笑みを崩さず、俺を片手で吊り上げる。


「おい、首! 痛ぇって! おい! 離せコラ! ぐぼぉあ!?」


 こいつ、また俺の腹を!

 マジで痛ぇ!

 お腹、穴空いてねぇ!?

 内臓が口と尻から飛び出るかと思ったぞ!

 腹にジャ〇プ入れてなかったらマジで死んでた!


「ほぉぶ! ほぶほぶ、ごっぶぅ?」

「ゴブ……っ!」


 何言ってるか分からんが、俺が人質みたいになってるのだけは分かる。

 ゴブ太郎が躊躇する。

 俺を痛めつけるホブ。

 呻き声を上げる俺。


「ぐはっ、ぐっ……ゴブ太郎! 大丈夫だ! ナイフ捨てんな! ぐぉぶっ!?」

「ゴブ……っ」


 俺の叫びもむなしく、ゴブ太郎は奥歯を噛みしめてナイフをこちらへ投げ捨てる


「ゴブ、太郎……」

「ゴブぅ……ゴォブっ!?」


 ドゴぉっ!


 ゴブ太郎に向けて『鉄腕』が振るわれる。

 ゴブ太郎は必死にガードを取るが、その腕ごと叩き伏せられて地面に転がる。


 俺は地面に放り出され、ホブはゆっくりとゴブ太郎へ近づいていく。

 ホブはニチャアと笑い、盛り上がる股間を隆起させて見せつける。


 おい、マジか! めっちゃデケェ! 

 じゃない、こいつ妹に興奮するとか変態か!?


 その時。



「ごぶ」



 一声。



 なんだと振り返ったホブの顔めがけ――、





 ――姉ゴブが、渡しといたゴキジェ〇トを噴射!


「ほぶぅぁ!? ほぶぅぁぁあ!?」


 目を押さえ、悲鳴をあげるホブ。


「今だぁぁぁッ!!」


 俺は立ち上がり、隠し持っていたゴ〇ジェットを解放! 二刀流だ!


「ざまぁぁぁ! 油断してっからだボケぇ! ゴブだろうがホブだろうが、お前ら所詮虫けらだろうがぁぁ!! お前らはゴキブリと同じだ! どうだ、ゴキジ〇ットの味は! ほらほら、たーんと喰らうかいい! フハハハ!」

「ほぶぁぁぁぁあっ!?」 


 顔面直撃!

 噴射! 噴射!! 追いゴキ〇ェットォ!!

 良い子は顔に向けて噴射しちゃ駄目だぞ☆


 ……油でテッカテカになった筋肉が妙に映えて腹立つな、コイツ!


「よし、ゴブ太郎! 姉ゴブ! チャンスだ!」

「……ゴブ」

「ごぶ……」


 ゴブ太郎と姉ゴブが抗議するような目をしてこちらを見てくる。

 なんだよお前ら、雇用主に文句でもあるんか?

 俺虫嫌いなんだよ。

 それに元はと言えば、ゴブ太郎の独断専行が悪ぃんだぞ!

 それに姉ゴブ、お前も蹴り強いんだよ!

 文句言う前に、まず俺に謝れよ!


 何か言いたげな二人を無視して、落ちてるナイフを拾ってゴブ太郎に渡す。


「ゴブ太郎、そいつの膝を狙え!」

「ゴブ?」

「たしか『鋼の肉体』だっけ? それでナイフが通らないんだろ? でも、鑑定の弱点には膝って書いてあっただろ! 他よりはダメージあるはずだ!」

「っ! ゴブ!」

「よし、試してみるか!」


目を潰されてもなんとか立ち上がろうと必死なホブ。

その無防備な膝へ、シュートっ!


ゴン!


「ほぶゃぁぁ!?」

「いってぇ!? 硬ぇなコイツ! でもダメージは通ったぞ、この野郎! ほら、もう一発!」


ゴツン!


「ごぶぁぁ?!」

「フハハ! さっきのお返しだバァカ! ……あ、なんか楽しいこれ。足、超痛いけど。もっかいやろ」


ガツン!


「ほぶぶぶぶ!?」


ホブゴブリンは膝を蹴られた痛みでのたうち回る。

まるでさっきの俺みたいで、心がスーッとなる。


「……ごぶ」

「ゴブ……」


横にいる二人のゴブリンがこっちをジト目で見てくる。

だから、何見てんだよお前ら。

こっちは遊びじゃねぇんだぞ。


「よ、よし! 俺はちょっと武器取ってくる! 姉ゴブはそのまま目を潰せ! ゴブ太郎はナイフで行けそうなら頑張れ! 二人とも無理すんなよ!」

「……ごぶ!」

「ゴブ!」


 まったく、ちゃんと鑑定弱点書いてあっただろうが。

 しっかり報連相しないから有益な情報見落とすんだよ!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ