昼食開戦! 試作メニュー、実戦投入
昼――
魔王城・迎賓食堂。銀製のカトラリーと魔法光を使った照明、
正面には魔王様が着席し、長テーブルの両側に食通・関係者が並ぶ。
その中には──
「え、あの人……また来てる!? 第四王子!?!?」
「うん、ライアス王子。今回は“料理監査としての正式な視察”だって」
「前は非公式って言ってたのに……魔王様の飯、そんなに刺さったの!?」
「刺さって靴下脱げたレベルで感動したらしいよ」
「わかるけど!!!」
今日は新メニューの本番投入日。
出すのは、昨日の“試作地獄”を経て決定した6品。
調理:リドとルナ
火力:ミナ(泡立て器持参)
盛り付け:俺(気づけば固定)
演出:魔王様(ほぼ趣味)
「ソラくん、これ盛り付けお願い。焦げ目がこっちに来るようにして」
「了解です! あっ、でもこれなんか……異物……?」
盛り付け中、皿に小さな光る粒を発見した。
「これ、魔法鉱粉だ。熱封じの補助魔法に混ざることがあるんだけど……」
「わざと?」
「ううん、混入ミス。これ下げるよ」
「……こういう時、ちゃんと対応するんだね」
「うん。“魔王城の厨房は清潔で誠実”って噂、外に広めたいから」
誰も怒らず、慌てず、即修正。
リドが別皿を用意、ルナが味見、ミナが火力調整し直す。
それぞれの得意を活かすチームワーク。
俺は少し、うれしくなった。
そして、料理が運ばれ、全席に並ぶ。
王子がスプーンを持ち上げ、ひとくち……。
「…………」
沈黙。
視線が魔王様に集まる。
魔王様はにこりと笑って言った。
「お口に合いませんでしたか?」
「……いや。うまい。うまいが……うまいがッ……!」
「?」
「このソース……私の祖国のレシピより完成度が高い……!悔しい……!」
まさかの、美味しすぎて悔しがる王子爆誕。
「というわけで、魔王様。講習制度、お願いします」
「講習?」
「定期的に、この厨房の技術を……我が王国の調理兵にも教えてほしい……」
「ふふ。相談しておきます」
また、勝ってしまったようだ。食で。




