表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
70/259

忍び寄る外部の影

夜。

 港町の沖合に、不気味な灯がちらちらと揺れていた。

 それは漁火ではない。

 船影――数隻の武装した船が、静かに港を囲もうとしていた。


 


「……来たな」

 倉庫の屋上で見張りをしていたグレイルが低く呟いた。

 隣に立つソラも緊張に息を呑む。


 


 船に掲げられていたのは、見知らぬ紋章の旗。

 この町のものでも、魔王城のものでもない。

 ――密談を交わしていた外部の勢力、その本体だった。



町のざわめき


 港の広場では、すでに噂が走っていた。


「武装船が沖にいるらしい!」

「交易じゃない、襲撃だ!」

「旗を……旗を狙っているんだ!」


 


 人々の顔は恐怖に青ざめる。

 二つの旗を巡って分かれかけていた心が、今度は一斉に揺さぶられた。



まかない部とグレイル


 広場の中央、大鍋の前。

 まかない部とグレイルが並び立つ。


 


「外の連中は、旗を利用するつもりだ」

 ソラが声を張る。


「城の旗も港の旗も関係ねぇ!」

 グレイルが続ける。

「この町を食い物にさせてたまるか!」


 


 対立していた二人の声が重なり、群衆の視線が一点に集まった。



脅威の正体


 そのとき、港に巨大な音が響いた。

 外の船から投げ込まれた火矢が、波止場の倉庫を燃やし始めたのだ。


 炎が夜を赤く照らし、悲鳴が上がる。


 


「……示威か」

 ルナが冷たい声で呟く。

「本気でこの町を飲み込むつもりね」



決意


 混乱の中、ソラは杓文字を握りしめた。

 鍋を守るため、町を守るため――。


「グレイル。旗が二つでも、今は一緒に戦おう」


 


 グレイルは一瞬黙り込み、やがて頷いた。

「……旗を守るのは、俺の役目だ。

 けど今夜は――お前らと同じ旗を掲げる」


 


 炎の光に照らされ、二人の影が並んで立った。

 港町を飲み込もうとする外部の脅威に、共に立ち向かう覚悟がそこにあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ