メニュー試作、試食、そして胃袋の悲鳴
「ソラくん、次の試食、お願いします!」
「えっ、まだ来るの!? もう六品目なんですけど!?」
「次は“熔岩魚の蒸し焼き・辛味草ソース”だよ。ちょっと辛めだけど、胃に優しいって噂」
「“辛め”と“優しい”って両立すんの!?」
そう。
今は魔王城“新メニュー開発”の試作会、真っ最中である。
調理:リド(料理ガチ勢)
火力調整:ミナ(力の暴力)
味見:俺(胃袋)
試作された料理の数、現在9品目突破。
しかも全部が魔法と魔物の素材を使った未知のフルコース。
普通の胃袋なら、今ごろ白目をむいて天井とお友達になっている。
「ソラ、さすがにヤバかったら言って。一時撤退していいから」
「撤退とかあるのこの試食会……!? てかそれ軍事用語!!」
「魔王様、味の判断早いから、味見係が倒れたら即“保留”にしてくれるよ」
「安心できるようでできないシステム!!」
そんな中、リドが静かに一皿を出してきた。
「これが……我が集大成、“火竜の皮下脂肪を巻いた赤根菜パイ”です」
「言い方が不安しかない!!!」
パイは、一見ただのミートパイ。
しかし、近づくと熱気で前髪が浮いた。
「これ……ほんとに食っていいの……?」
「魔法で表面冷ましてあるから、噛んだ瞬間だけ火傷します」
「ダメじゃねぇか!!!」
でも、食った。
理由は単純。
うまかったから。
中は甘辛い野菜のうまみ、外の皮はパリパリ、
そして一瞬の激熱が口内を焼き……かけたが、
魔王様がすかさず氷の水を差し出してくれた。
「はい、口直し。味はどうだった?」
「……めちゃくちゃうまかったです……でも命かける系の味でした……」
「採用、っと」
「するんだ!? このメニュー、採用するんだ!?」
その場にいた全員の胃袋が限界を迎えたそのとき、
魔王様が静かに言った。
「全部、明日の昼に出すから。よろしくね、みんな」
「…………」
「…………」
「…………胃袋って、どこで強化できるんでしょうか……」




