魔王の一皿
城の奥。
玉座の間は、
いつも通り静かだった。
高い天井。
長い影。
魔王は
そこに座っている。
動かない。
だが――
存在が重い。
ミナが
小さく言う。
「……全部、ここに集まっとる」
⸻
◆集中の極点
城の歪みは
ほぼ整った。
流れも、
差も、
分散も戻った。
だが、
最後の一点。
魔王に
すべてが集まっている。
⸻
◆動かない理由
魔王は
多くを背負っている。
決定。
責任。
均衡。
だから
動かない。
動けば
崩れる。
⸻
◆料理の選択
アリアが
静かに言う。
「……最も単純にします」
ミナが
頷く。
「……余計なん
いらんな」
⸻
◆最小の料理
材料は
三つだけ。
水。
豆。
少量の塩。
それだけ。
⸻
◆火加減
火は
強くない。
弱すぎない。
揺れを持たせる。
止めない。
⸻
◆何も足さない
途中で
足さない。
引かない。
ただ
見守る。
ルナが
静かに混ぜる。
⸻
◆一皿
完成した料理は
極めて単純。
飾りもない。
匂いも
強くない。
⸻
◆差し出す
三人は
魔王の前に
皿を置く。
何も言わない。
魔王が
一口食べる。
⸻
◆沈黙
長い沈黙。
誰も
動かない。
やがて
魔王が言う。
「……軽い」
⸻
◆重さの正体
アリアが
静かに答える。
「……重さは
足されたものです」
「……本来は
もっと軽い」
⸻
◆背負いすぎ
ミナが
笑う。
「……抱えすぎや」
「ちょっと
抜け」
⸻
◆分けるという選択
魔王は
しばらく考える。
そして
ゆっくり言う。
「……分けるか」
⸻
◆決断
命令が下る。
一部の決定を
下へ渡す。
役割を
分ける。
⸻
◆変化
玉座の間の空気が
変わる。
重さが
少し抜ける。
ルナが
小さく言う。
「……軽い……」
⸻
◆料理の意味
アリアが
静かに言う。
「……整えるとは
すべてを抱えることではありません」
「……持てる形にすることです」
⸻
◆まかない部の役割
ミナが
肩を回す。
「……これで一通りやな」
ルナが
微笑む。
「……終わり……?」
⸻
◆新しい始まり
魔王が
三人を見る。
「……いや」
「ここからだ」
⸻
◆次へ
調理場の火が
静かに揺れる。
城は整った。
だが
世界は広い。
そして――
まかない部は
まだ終わらない。




