表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
352/397

壊す者の手

壊され続けた町を離れ、

三人は森の縁へと向かった。


気配は、

そこにあった。


夜になると現れ、

町を壊す存在。


ミナが

低く言う。


「……おるな」



◆潜む者


木の陰。


かすかな動き。


人影が

いくつもある。


完全な兵ではない。


だが

ただの盗人でもない。


ルナが

小さく言う。


「……痩せてる……」



◆壊す理由


アリアは

隠れずに歩く。


そのまま

声をかける。


「……出てきてください」


しばらくの沈黙。


やがて

数人が現れる。


荒れた服。

痩せた体。


一人が

言う。


「……あんたら、

 あの町の奴か」



◆告白


彼らは

元は同じ町の人間だった。


だが

飢えが来た。


食料が足りない。


争いが起きた。


追い出された。


ミナが

舌打ちする。


「……それで壊しとったんか」



◆壊す行為の意味


男が

低く言う。


「……作らせたら

 こっちに回ってこない」


「だから

 壊す」


単純な理屈。


だが

重い。



◆料理での対話


アリアは

静かに言う。


「……では、

 一緒に食べましょう」


男たちは

警戒する。


「……罠か」


ミナが

笑う。


「……罠で飯作るか」



◆最小の料理


火は使わない。


壊されない形。


穀物を分ける。


水を少し。


その場で

混ぜる。


ルナが

一つ差し出す。



◆境界の一口


男は

しばらく見つめる。


やがて

口に入れる。


噛む。


飲み込む。


何も起きない。


ただの

食べ物。



◆分けるという形


アリアが

言う。


「……これは

 分ける料理です」


「……集めず、

 残さず、

 奪えません」


ミナが

続ける。


「……誰のもんでもない」



◆壊す意味の消失


男たちは

顔を見合わせる。


壊す理由が

薄れる。


奪う対象がない。


争う余地がない。



◆初めての共有


村の側からも

数人が来る。


緊張が走る。


だが

同じ形の料理。


同じやり方。


同じ一口。


言葉は少ない。


だが

争いは起きない。



◆壊す手の変化


男が

小さく言う。


「……これなら

 壊さなくていい」


ルナが

微笑む。


「……一緒……」



◆まかない部の理解


ミナが

腕を組む。


「……壊す理由、

 なくしたな」


アリアは

静かに言う。


「……整えるとは

 争う余地を消すことです」



◆夜の森


その夜。


壊す者たちは

町へ向かわなかった。


代わりに

森の縁で

静かに食べている。


村の者も

同じ場所で。


距離はある。


だが

分断はない。



◆次へ


三人は

その様子を見て、

静かに歩き出す。


壊す者と

壊される者。


その境界は

少し消えた。


だが次は――

壊すのでも、

争うのでもない。


何も起きない世界。


すべてが止まった場所へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ