表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
319/383

盾になった期限

その町は、

一見すると整っていた。


通りは掃かれ、

掲示板の紙は新しい。

人の流れも、

止まってはいない。


だが、

硬い。


ミナが

足を踏み入れた瞬間に言った。


「……ここ、

 息、

 詰まっとる」


ルナが

地面を見て頷く。


「……止まってない……

 でも……

 休んでない……」



◆期限という盾


町の中央では、

倉庫前で

言い争いが起きていた。


「……まだ出せない。

 期限は

 明後日だ」


「昨日も

 同じことを

 言っただろう!」


掲示板には、

確かに書かれている。


「整える期間:五日間」


だが、

戻す手順も、

例外も、

貼られていない。


期限だけが、

盾のように使われている。



◆守っているのか、隠しているのか


町の管理役の男は、

淡々としていた。


「通達通りです」


それ以上、

説明しない。


アリアは

すぐに反論しなかった。


代わりに、

周囲を見る。


待たされているのは、

商人だけではない。


荷を運ぶ者、

それを使う者、

町の中の人間だ。



◆場を戻す


ミナが

一歩前に出た。


「……今日は、

 何を

 “戻す日”

 や?」


管理役の男が

怪訝な顔をする。


「……戻す?」


ソラはいない。

だが、

ミナの声は

場を切り替える力を持っていた。


「期限だけ

 守っとるなら、

 戻す話も

 あるはずや」


ざわめきが

起きる。



◆言葉の欠けた場所


ルナが

小さく言う。


「……戻る道……

 書いてない……」


それは、

責めではない。


事実だった。


アリアが

穏やかに続ける。


「……整える、

 は

 止め続ける

 ことではありません」


「今日は、

 何を

 どれだけ

 戻せますか」



◆空白が答える


管理役の男は、

すぐに答えられなかった。


帳面を開く。

閉じる。


「……決めていません」


その瞬間、

空気が変わる。


怒りではない。


納得だ。


「じゃあ、

 今から

 決めよう」


誰かが

そう言った。



◆小さな復帰


その場で、

決められたのは

ごく小さなこと。


「今日は、

 この荷だけ

 出す」


「残りは、

 明日」


期限は

変わらない。


だが、

戻り始めた。


ルナが

小さく息を吐く。


「……地面……

 今……

 楽……」



◆盾を下ろす


管理役の男は、

最後に言った。


「……期限を

 守るのに

 必死でした」


それは、

言い訳ではない。


正直な告白だった。


アリアは

それを受け止めた。


「……期限は、

 守るための

 ものです」


「隠れるための

 ものではありません」


男は

深く頭を下げた。



◆言葉が場に戻る


掲示板の紙が

その日のうちに

書き換えられた。


「整える期間:五日間

 本日より一部復帰」


完璧ではない。


だが、

動いている。


ミナが

小さく笑う。


「……盾、

 降ろせたな」



◆風の様子


風は、

町の上を

低く巡っていた。


煽らない。

背中を押さない。


ただ、

流れを

邪魔しない。


ルナが

そっと言う。


「……風……

 今……

 見守ってる……」



◆次へ


アリアは

町を出る前に

一度だけ振り返った。


(……言葉は、

 場に戻せば

 役目を思い出す)


奪い返す必要は

なかった。


使い直せばよかった。


それが、

今回の答えだった。



通達は、

生き物だ。


場に合わなければ、

歪む。


だが、

場に戻せば、

また息をする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ