風の壁、立ちはだかる
記憶喰らいを撃退した草原を後にし、
一行は峠道へと足を進めた。
空は高く澄み、
遠くには魔王城がかすかに見える。
しかし――
歩みを進めるほどに、
空気は重く、風は冷たくなっていった。
ルナが震えながら言う。
「……なんだか……
風が刺すように冷たい……」
ミナが辺りを見渡し、顔をしかめた。
「いやな揺れ方してる……
これは普通の風やない……」
ソラも頷く。
「なんや、風そのものが“怒っとる”みたいやな」
アリアは風の肩に手を置く。
「大丈夫?
しんどくない?」
風は胸の光を震わせながらも頷いた。
しかし、その光にはかすかな警戒があった。
ミルガ(灰風)が警告する。
「前方に……何かいる。
風が跳ね返されている。
自然ではない。」
リイナ(紅葉)が目を細めた。
「これは……外側からの大規模干渉……」
カール(蒼術)は即座に結論を出した。
「“風障壁”だ。
黒風勢力が、道を塞いでいる。」
⸻
◆峠に現れた“巨大な風障壁”
一行が峠を登りきった瞬間、
目の前に現れたのは――
巨大な、透明の壁。
しかし、壁というより“風の渦そのもの”。
空間をねじり、
風を巻き込み、
峠道を完全に塞いでいた。
触れたら最後、
体は切り裂かれ、記憶を吸われるとわかるほどの
殺意が漂っている。
アリアが小さく息を呑む。
「……これが……風障壁……?」
ソラが声を荒げる。
「どないして突破すんねん、これ!?
触るだけで終わりやんけ!!」
ミナは腕を組み、呆れた声を出す。
「殺意に満ちた風を壁にするとか……
ほんま趣味悪いで……黒風の連中」
ルナは震えながら風を抱きしめた。
「風……怖がってる……
これ……あなたを狙ってるんだね……」
風は胸の光をかすかに脈打たせた。
その揺れは――“危険”と告げていた。
⸻
◆風障壁の目的と仕組み
カール(蒼術)が壁に手をかざし、
気流を読み取る。
「これは……
“主の塔”から落ちた記憶を追うための壁だ。
正確には――
新しき風を捕らえる檻の入口。」
アリアの背筋が凍る。
「風を……閉じ込めるために……?」
リイナ(紅葉)が頷く。
「ええ。
この障壁は“記憶の気配”に反応する。
だから風が近づけば自動で閉じる。」
ミルガ(灰風)が言い放つ。
「つまり突破すれば、
向こう側に黒風勢力の本陣があるということだ。」
ソラは刀を握り直した。
「好都合やんか。ぶった切って突き進んだる!」
カールが慌てて止める。
「無謀すぎる!
風障壁は“押して割れる風”ではない!
“解いて流す風”だ!」
ミナがため息をつく。
「そらそうやわな……
あんな渦巻きを殴っても勝てへんわ……」
⸻
◆突破の方法 ― “三つの風を合わせる”
リイナが前へ出る。
「方法はあります。
ただし――
ここにいる全員の力を合わせなければ
絶対に開かない。」
アリアが身構える。
「どうすればいいの?」
リイナは風障壁を指さし、説明する。
「この壁は“三つの風”を同時に流せばほどける。
主の風、
記憶の風、
そして“人の風(心)”。」
「三つ同時……?」
「そんな芸当できるんかいな……?」
リイナは静かに続ける。
「新しき風が“記憶の風”を担う。
レヴが“主の風”を呼び込む。
まかない部が“人の風”を吹かせる。」
ミルガが言う。
「できない相談ではないな」
カールも頷く。
「やるしかない」
⸻
◆協力戦開始
リイナが声を上げた。
「――配置につけ!
三つの風を揃える!!」
◆レヴは風の背後に立ち、
掌に青白い風の紋章を浮かべる。
「主の塔へ繋がる風よ――
一時だけ、この地に降りよ。」
◆アリア・ソラ・ミナ・ルナは
風の前に立ち、“心の風”を作り出す。
アリアは風に囁く。
「あなたは一人じゃない。
一緒に突破しよう」
ソラは息を吐く。
「うちらの風を信じろ!」
ミナは胸に手を置く。
「心は風になる。
せやから力貸して!」
ルナは震えながらも笑む。
「あなたの道を……前に進ませたい……」
◆風は胸の光を強く灯し、
“記憶の風”を呼び起こす。
ぽぅ……っ
⸻
◆三つの風が重なる
リイナが羽根を掲げる。
「……来るわよ!!
三つの風――重なり始める!!」
風の光が高さを増し、
レヴの主風が降り、
まかない部の心の風が吹き寄せる。
風障壁が震え始めた。
ソラが叫ぶ。
「いけるで!!
壁が揺れとる!!」
ミナも続く。
「いま! 一気に押し込むで!!」
ルナが泣きそうな声で叫ぶ。
「風――がんばって!!」
風が光を最大に輝かせ――
⸻
◆突破 ― 風の門が開く
ドォォォォン!!!
風障壁が裂けた。
渦がほどけ、
峠の奥に“風の門”が開く。
アリアが息を呑む。
「……開いた……!
進める……!!」
ミルガが即座に指示を出す。
「全員、突破しろ!
黒風の反撃が来る前に!!」
ソラが叫ぶ。
「行くで!!
風、ついてこい!!」
風は大きく光を揺らし、
一行は裂けた風の門へと走り抜けた。
黒風勢力の本陣へ――
そして、主の揺らぎの核心へ。
物語は、さらに深い領域へ入っていく。




